139話〜Cランク:ランサー黒龍フル装備

 ここは南側の祭壇から東北東に位置する場所。


 クレイとイワノフは、あと少しで南側の祭壇に辿り着けるはずだった。


 そう、かなりの数のシェルズ城の者に囲まれ行く手を遮られていたのだ。


 イワノフは、斧を振り回し四方八方から迫りくる敵を薙ぎ払い。そしてクレイもまた、あらゆる槍のスキルを駆使し技を発動させ戦っている。


「クソッ、なんなんや。数が多すぎる。大技を出したい。せやけどここでつこたら、恐らくみんなを巻き込みかねへん」


「おいっ! このままだと南側の祭壇に辿り着くのは困難だ。ここは俺がなんとかする。お前は祭壇に向かえ」


「そらええ案かもな。せやけど、一人でこの数をこなすのは無理や思う」


 そう言いながらクレイは、迫りくる敵をかわし腹部を思いっきり蹴り自分から遠ざけた。


「ああ、確かにこの多勢じゃ、こなし切れるか微妙なとこだ。だがお前は、あの祭壇に向かわなければならないんだろ?」


 イワノフはそう言いながら、迫りくる敵を斧で次々と薙ぎ払っていく。


「せやけどそれやと、」


 そう言いかけクレイは、ふとノエルのことが気になり南側の祭壇の方をチラッとみる。


「って、ちょ、おいっ! あれって、なんなんや。……いや、どっかで似たような武器をみた気ぃする。確かアニメやったような。せやけどまさか、」


 それを聞きイワノフは、戦いながら祭壇の方をみた。


「おいおい、なんだあの武器は、あんなの今までみたことないぞ」


「そうなのか? 俺はあれと似た武器をみたことある。もし性能が同じやったらこの城ごと吹っ飛ぶ」


「それはまずいな。それが本当なら、やはりお前が祭壇に向かった方がいい」


 そう話していると敵のナイフがイワノフを襲い慌ててかわそうとする。だがそのナイフは、イワノフの頬をかすめた。


「つう、……油断した」


 そう言うと斧を思いっきり振り回し敵を吹き飛ばす。


「話してる余裕はない。それに、お前だけならここを突破できる。そうなんじゃないのか?」


「……ああ、そうやな。せやけど、気づいとったのか?」


 そう聞かれイワノフは頷いた。


「気づかないわけがないだろう。異世界の者であるお前が、その程度だとは思えなかったからな」


「そうか。せやけど、今本気を出さへん方がええように思える」


「今はそんなことを言ってる場合じゃない。いいから俺に構わず早くいけっ! 邪魔なら少し距離をとる」


 イワノフはそう言うと攻撃をかわしながら斧を振り回し敵との距離をとる。


「悪いな。ほな、ここは任せた。ってことで、俺はその言葉に甘えさせてもらう」


 そう言いながらクレイは即座にメニュー画面を開き、プリセットから【Cランク:ランサー黒龍フル装備】を選んだ。


 すると装備が青から黒に変わり、胸には黒龍の顔がかたどられた紋章のようなものが現れる。そして、黒龍の槍が手元に現れそれを持ち振り回した。


「なるほど、それがお前の最強装備か。それに先程よりもかなり強い気を感じる」


「強い気、か。装備は最強や。せやけど、……いや、やっぱ今は言わへん方がええかもな」


「ほう、まだそれでも本来の能力じゃないってことか」


 クレイはイワノフに見透かされ苦笑する。


 その後クレイは、一気に敵を薙ぎ払い倒しながらこの場を離れ南側の祭壇へと向かった。


(ノエルさん。多分、あんたならいける思う。あのユウの妹なら、この場を切り抜けれるはず。せやけど、やっぱあの武器が気になる。それに、なんかめっちゃ嫌な予感がしてならへん)

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