138話〜過去に残された書物③

 オルドパルスは、頭の整理をしたあと話し始めた。


「以前、我が王から聞いたことなのですが。あの書物は約百年前、まだ国が一つだった頃--」


 そう淡々とオルドパルスが語りタツキとリッツはその話に耳を傾ける。


(なるほどな、そういう事か。百年前に召喚された者の一人が、あの時計塔でたまたまみつけた。

 だが、封印がされてたから解除……って、どうやって解いた? あれは俺にしか分からない暗号のはずだ。それなのに、なんで……。

 まさか俺と同じアニメをみてたヤツなのか。いや、それでも暗号を解くのは無理だろう)


 その話を聞きながらタツキは、そうこう思考を巡らせていた。



 __いや、暗号を解くスキルを持つ職はいくつかある。そう、ノエルのアサシンもその職の中の一つだ。


 実は、タツキが覚えている数ある職の中にもそのスキルはある。


 だが、元々戦闘に関係するスキル以外は、あまり興味がない。


 そのため誰かに教えてもらうか、そのスキルを必要と思った時にやっと気づく。


 そんなわけで今のタツキは、暗号を解くスキルの存在を知らないだけなのである。__



 オルドパルスが話し終えるとタツキは、少し考えたあと口を開いた。


「そういう事か。だが、どうやってあの封印を解いた?」


「そこまでは、申し訳ありませんが分かりかねます」


「そうか。じゃ質問を変える。それがなんでヤツらシェルズ城の者の手に渡ってるんだ?」


 そう問いかけられオルドパルスは、急に俯き黙り込んだ。


(このことを、私の口から話してもいいのでしょうか? いいえ、やはりニャム様にお聞きしてからの方が、)


「なぜ急に黙った? まさか、このことを有耶無耶にするつもりじゃないよなっ!」


 タツキは疑いの目でオルドパルスをみる。


「め、滅相もない。そのようなことは考えておりません。ですが、私の口から言って良いものかと思いましたので」


「その口振りだと、その書物をヤツらに渡したのは、お前より立場が上の者ってわけか」


「はい、そういう事ですので、あの方に直接お聞き頂きたいのですが」


 そう言いオルドパルスは軽く頭を下げた。


「……直接聞けってことは、この城にいるってことだよな」


 タツキはそれを聞き周囲を見渡してみる。


「タツキ、その人が誰だか知ってる。だけど、どうしよう……」


 そう言いながらリッツは、オルドパルスをチラッとみた。


 オルドパルスは、それに気づきリッツの方に視線を向ける。


「私が、あの方の名前を教えるわけにもいきません。ですが、貴方リッツが言う分には問題ないのでは?」


「うん、そうだね。……その人って、グレイルーズの王族のニャル様だよ」


 そう言うとリッツは、南側の祭壇の方を指差した。


「もしかして、アキと一緒にいるヤツか?」


「うん、……でも、ここからだと良くみえないけど。なんでアキ、ニャム様とあんなに親しげにしてるんだろう?」


「確かに、なんでアキが王族と、」


 それを聞いたオルドパルスは、南側の祭壇の方に視線を向ける。


「アキ……。はて、あの方と親しげにできる者。……もしやっ!?」


 アキと聞きオルドパルスは、アキリシアのことが頭に浮かび驚きよろけた。そして、南側の祭壇の方をジーっとみつめる。


「良くみえませんが背格好、雰囲気などアキリシア様に似ています。ですがそうだとして、なぜ? 確かにあの方は、いつも城を抜け出し旅をしていましたが」


「えっ!? アキが、アキリシア様。それって本当なの?」


「……。もしかして、アキは王族なのか?」


 タツキがそう問いかけるとオルドパルスとリッツは思いっきり頷いた。


「アキリシア様は、グレイルーズ国の第一王女であらせられます」


「じゃあアキは、お姫様ってことか。だが、全然そうみえねぇ」


 タツキはそう言うとアキリシアの方をみる。


「確かにみえない。……それはそうとタツキ、ニャム様にあの書物のこと聞くの?」


「そうだなぁ。聞きたいが、今はそれどころじゃない。それよりも、あの能力って完成してるのか?」


「あっ! そうだった。確か、まだ完成してなかったはずじゃ」


 それを聞いたタツキの顔は、一瞬のうちに青ざめた。


(まだ完成してない、って……。おいおい、それなのに能力を会得。正気か? 何を考えている。

 もしまだちゃんと実験をしてないなら、尚更どうなるか分からない……)

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