140話〜驚きと嫉妬
その頃ユウは、途中で仲間になったダリアとその手下と共にノエルの元へ向かっていた。
ユウとダリアは、迫りくる敵を倒しながら前へ前へと進む。ダリアの手下は、二人を守りながら迫りくる敵を倒していく。
そして、南側の祭壇まであと少しの所まで来ていた。
(もう少しでノエルの元、へ? ……って!? まさか、あれ……だけど、なんでこの世界に)
だが、ガインの手にしている大剣のような銃をみて驚き立ち止まる。
「いきなりどうし、た……って。あれは、いったいっ!?」
ダリアもその武器をみて驚き後退りした。
「あのアニメ【サイバーリロード〜聖なる領域〜】に出てきた最強武器に似ている。……だけど、なんで……ハッ!? って、まさかっ!」
(もしかして、リュ……ううん、タツキさんがあの武器を。確か過去にも別のアバターで召喚されてる。
同じ世界に召喚され、尚且つあのアニメをみてたとしたらあり得るけど。今それを確認するにも……遠すぎるしなぁ)
そう思いながら北側の祭壇付近にいるタツキに視線を向ける。
「ユウ様。ガインが持っている武器がなんなのか、もしかして知っているんですか?」
「……様、って。……まぁいいか。ああ、だけど知ってる武器に、似ているってだけなんだけどな」
「なるほど。でもあのガインが、なぜそんな武器を」
それを聞きユウは、少し考えたあと話し出した。
「もしかして、あの武器を持っているヤツのこと知っているのか?」
「はい。あの者の名はエルフのガイン・グローゼ、同じエルフのバルム・ヴェルグの手下です」
「手下ってことは、そのバルムもこの城に……」
そう言いながらバルムを探し辺りを見回してみる。
「バルムなら、あそこよ」
ダリアは南側の祭壇から少し離れた左側を指差した。
その言葉を聞きユウはダリアが指差す方に視線を向ける。
それと同時に、バルムと戦っているハクリュウの姿が視界に入り、ピクッと顔を引きつらせた。
(ハクリュウが、ここに……。ってことは、勿論勇者として召喚されてるよな。俺は魔王として……この差っていったい……。
確かにあのギルドはアイツに譲った。……だとしても、この差が納得いかない!)
ダリアはユウの様子が一変したため、どうしたのかと心配し問いかける。
「ユウ様、どうしました? あの場所に何か、」
「あっ、いや、たいしたことじゃない。ただあそこに、知ってるヤツがいた。……それだけだ」
「それならいいんですが、怒っているようにみえたので何かあったのかと」
そう言われユウは、平常心を取り戻した。
「ダリア、俺そんな表情してたのか?」
「ええ、驚きました。ユウ様でも、そのような顔をするのかと」
「そうか、そうだよな。ここは……」
ユウはそう言われ、気持ちを更に落ち着かせるために深呼吸をする。
(ここはゲームの世界じゃない。思っていることが、顔に出たとしても不思議じゃないんだよな。そうなると、気をつけなきゃ。
だけど、流石に表情を隠すとなると……ん? そうか! 確かプリセットにマスクバージョンがあったはず)
そう思いメニュー画面を開き、プリセットから【ビーストマスター:黒龍マスクバージョン】を選んだ。
するとビーストマスター専用装備、黒龍の鞭、黒龍のフル軽装備、龍の印が刻まれた黒いマスクへと一瞬で着替えた。
それをみていたダリアは目を輝かせる。
「これは凄い。全ての異世界の者は、このように一瞬にして着替えることができるのか?」
「す、全てじゃない。これは憶測だけど、多分……この世界に召喚された者のみ、使える能力だと思う」
(……流石に、ゲームがどうとか言っても分からないだろうし。それに説明すると長くなるしなぁ)
ユウはそう思いそのように言った。
「それよりも……。俺の知ってる武器と同じ性能なら……この城が、吹っ飛ぶ」
「待て、それは本当なのですか? だとしたら、」
「ああ、このままじゃ……クッ、ダリア急ぐぞっ!」
そう言ったあとユウは、ノエルの元へと急ぎ向かう。
そしてダリアは、そのあとを追ったのだった。
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