125話〜北側の祭壇〜それぞれが動きだす〜{☆}

 ここは、名もなき城の中庭。そして、その北側にある祭壇付近。


 タツキはユウを説得し魔王になる儀式を阻止すると、オルドパルスをまじえ話をしていた。


 そしてユウは、ふとノエルのことが気になり南側の祭壇へと視線をむける。


(そういえば、ノエルは無事なのか?……!?)


 するとユウの視線のさきには、ノエル達が数十名の者たちに囲まれ戦っている姿があった。


「うわぁ〜!!おい。ちょ、と、待てって。ノエルがぁ〜!?」


 ユウはノエルのもとへ駆け出そうとした。


「待てユウ!急にどうしたんだ?」


 それをみたタツキは右手でユウの腕をつかんだ。だが振り払われそうになりタツキは、もう片方の手でユウの肩をつかむ。


 そしてすかさずタツキは、全体重をユウの身体に掛けのしかかり押し倒す。


 するとタツキは、そのままの体勢で南側の祭壇へと顔をむけた。


(確かノエルって叫んでたよな。まさかユウの恋人なのか?)


「ユウ。もしかして、あそこにお前の好きな人がいるのか?」


「イタ、痛いって!ハァ〜。ええ。あそこには……大好きな、俺の妹がい、ます」


 ユウはタツキに押さえ込まれ動けずジタバタしながら、自分が言ったことに対し恥ずかしくなり顔を赤らめた。


「い、妹!?ってお前。……なるほど、そうか。あの祭壇のところにお前の妹がなぁ。ってことは……」


「タツキさん。なるほどって……。もしかして、なにか企んでませんか?」


「さあなぁ。だが、まさかお前がシスコンだったとはな」


 タツキはユウを解放すると、不敵な笑みを浮かべる。


「シ、シスコン!?って。ただ俺は……妹が心配なだけで。あっ、それよりタツキさんこそ……例の彼女に告白したんですか?」


 ユウは意地悪ぎみに言った。


「……そ、それはぁ。まぁそうだなぁ。あっ、そうだ!こんな話をしてる場合じゃない。急いでお前の妹を助けなきゃな」


 タツキはそう言いごまかす。


「タツキさん。その様子だと……まだみたいですね」


 そうこう話をしていると、リッツが血相を変えタツキ達のもとへと駆けつけた。


「うわ〜タツキ。ちょ、ちょっと待って!ハァハァハァ。いったいこれってどういう事?2人はどういう関係なの?」


 リッツがいきなり現れ意味不明なことを言ったため、タツキはなにがなんだか分からず。


「リッツ、落ちつけ!てか、いきなりどうしたんだ?それにユウは友達だ」


「友達?ああ、そっかぁ。あっ、ごめんなさい。さっきタツキが、この男の人を押し倒してるのがみえたから勘違いしました」


 リッツは恥ずかしくなり、タツキから目をそらした。


(まさかこのリッツって人、タツキさんのことが好きなのか?

 だけどそうだとして、タツキさんのあの様子をみる限り、この人の気持ちに気づいている気配はない。でも、これどうするつもりなんだ?

 ……プップッ。てか、もしそうなら、チョーウケる!)


 ユウは下を向き笑いを堪えている。


 するとオルドパルスはリッツをみて首を傾げた。


「これはどういう事なのですか?何故シェルズ城の者が、タツキ様としたしげに話をされているのだ。それにお前は確か、ニックの配下の者だったはず」


「あーそれは……えっと。タツキ、どうしよう」


 リッツはどう答えていいか分からなくなり、助けてとばかりにタツキへと視線を送る。


「あっ、そうだった。本当は、リッツのことはあとで話すつもりだったが。……」


 そう言いタツキはリッツのことを2人に説明した。


「なるほど。タツキ様は2年前に召喚され。その後2人は知りあい。リッツはタツキ様の指示で、シェルズ城に潜入していた。という事ですね」


「ああ。そうなる」


「ですが。誰がどこでタツキ様を召喚したのですか?」


 そう言われタツキはどう答えたらいいか迷った。


「そうだな。おそらく言っても問題ないだろう。それに俺を召喚したヤツも、この城にきているしな」


 タツキはグロウディスがいる南東の方をむく。


「そっかあの人も、ここに来てるんだぁ」


 リッツも南東に目をやる。


 そしてユウとオルドパルスも、2人につられ南東の方角をみた。


「確かあれは、ニックの配下の者でキース・エフド。それと、ヒューマンの男が一人います。うむ。ですが、ここからでは顔がよくみえませんね」


「キースはどこにいても目立つから、流石に分かるよなぁ」


「あのヒューマンの方は、いったい誰なのですか?」


 そう聞かれタツキは、名前を言っても大丈夫かと考えたあと口を開いた。


「あの男はグロウディス・アバロン。そして2年前、この城より東の高台の丘にある特別に作られた祭壇で、俺はアイツに召喚された」


「今なんと言われた?グロウディス……」


 そう言うとオルドパルスは、グロウディスに視線をむけ。


「まさかあの光速の剣士の異名持ち、ホワイトガーデンの守護騎士とうたわれた。あの方が聖騎士グロウディス・アバロンなのですか?」


「グロウディスって、そんなにすごいヤツだったのか?」


「はい。コロシアムでの噂を、幾度も聞きおよんでおりました。ですが、まさかこの城に居られるとは」


 オルドパルスは少し間をおきさらに話しだす。


「ですが。あの方は確か剣士だったはずでは?どうやって召喚したのですか?」


「俺はアイツのことを、全て知ってるわけじゃない。だが、グロウディスの家系が召喚魔導師だという事は知っている。あとのことは本人に聞いてくれ」


「なるほど。ですが魔導師の家系に生まれた者が、剣士になるなど普通では考えられません」


 オルドパルスはそう言いながら考えている。


「確かに、僕は魔導師の家系に生まれたから魔導師になれた。だから剣士系の血筋じゃないと、剣士になるのは無理なんだ」


「そうなんだな。だがグロウディスは剣士になった」


「うむ。これはあとで、本人に聞いた方がはやいかもしれませんね」


 そう言いオルドパルスは、タツキの方へ顔をむけた。


「まぁそれは、あとでも大丈夫だろう。さてとユウ。これから、どうする?」


「どうするって。もちろん俺は、ノエルを助ける!」


「そうか。そうなるとユウは妹のところに向かう。俺は……そうだなぁ。とりあえず様子をみて、状況しだいで動くことにする」


 タツキがそう言うとリッツは、どうしていいか分からず。


「タツキ。僕はどうすればいいかな?」


「リッツ。お前はオルドパルスの側を離れるな」


「うん、分かった。そうするね」


 リッツはウンっと首を縦に振りオルドパルスの側まできた。


「じゃ、そういう事で。俺はノエルのとこにいく」


 ユウは、タツキ達がみえるぐらいの高さに軽く右手をあげると、ノエルがいる南側の祭壇へと駆けだす。


 そしてタツキ達3人はこの場に待機し様子をみることした。


(さてと、俺はこの場の戦況をみて動くとするか。……)

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