123話〜協議と策略{☆}

 ここはシェルズ城内にある王の書斎。


 アルフレッドは本を開きホープの事について話をし、ニックとリリアスがその話に耳を傾けていた。


「……アルフレッド様。では神であるホープは、ハーモニーが魔神となり水晶に封印されたため、本来の力が半減しているという事なのですか」


「そのうえ、下界を混乱させたとして、処罰をうけた。そして、神の世界にある知識の館で、書庫の管理をさせられているのですね」


「うむ。そういう事らしい」


 アルフレッドはそう言いながら本を閉じた。


「そうなると、ホープを恐れる必要はないのでは?」


「ニック。確かにそうかもしれぬ。だがあの場には、魔神の水晶がある。それに、その水晶にはディスペアーが封印されている」


「お兄様。では、神であるホープはその力を取り戻すため、ブラックレギオンの大臣であるカプリアを、利用したという事なのですか?」


 リリアスがそう言うとアルフレッドは、少し考えたあと話し出した。


「うむ。そうでもしない限り、力を取り戻す事はできないだろうからな」


「ですが、その事をラミアスが……。いえ、創造神であるアークラウムが許すとも思えませんが?」


「恐らく、許可など得てはいないだろう。この本に書いてあったのだが。ホープは神であっても、自由な思考を持っているとな」


 アルフレッドは、右手を本の上に乗せながら、そう言った。


「それでは、神々の塔の管理神であるラミアスは、その事を知らずに、別に動いているという事なのですか?」


「ニック。それは分からぬ。だが、ホープの方は大丈夫だろう。ただ問題なのは、ラミアスが動き出したかもしれないという事だ」


 アルフレッドに言われニックは頷いた。


「それと、この城に侵入し、セレスティナとリムティナを連れ去った者のことが気になります」


 ニックはそう言い、眉間にシワを寄せ考えていた。


「その事か。ふむ。この城について詳しく、城の者ではないとなると。やはり、200年前に召喚された異世界の者しかいないだろうな」


「ですがお兄様。誰がどこで召喚したのでしょうか?それと、200年前に召喚した者を、再びこの世界に召喚する事が出来るのですか?」


 リリアスはそう言いながらアルフレッドをみた。


「ふむ。……その事についても、調べる必要があるな。だが今は、新たな策を練らねばならない」


「それでは、ドルマニールとミスティに、あの城の様子を聞いてまいります」


 ニックは、アルフレッドとリリアスに一礼をし、その場を後にした。


 そしてアルフレッドとリリアスは、それを確認すると再び話し始めた。




 あれから、数分が経ち。ニックは血相を変え、王の書斎へと戻ってきた。


「……ニック!?いったい何があった?」


 アルフレッドがそう聞くと、ニックは息を切らせながら口を開いた。


「ハァハァ……。た、大変です!ドルマニールとミスティが……」


「もしや、あの2人の身に何かあったのですか?」


「はい。連絡が取れずおかしいと思いましたので、地下の祭壇にいき、あの城の様子を見てきたのですが。2人は奴らに捕まっておりました」


 ニックはそう言うと息を整えた。


「まさか、あの2人がやられるとはな。だが奴らは殺さないだろう。そうなると、口を滑らす前に、始末した方が良さそうだ」


「では、早急にあの2人を……」


「いや待て!今あの2人を殺してしまっては、奴らに気どられる危険がある。それに、何かと都合が悪いしな」


 そう言うとアルフレッドはニックに指示をだした。


「承知いたしました。それでは、この件が片づきしだい、あの2人を」


 ニックはそう言い手はずを整えるため部屋を出ていった。


 そしてリリアスは、その話を聞き懸念を抱いていた。


(このまま、お兄様とニックの言う通りにしていても良いのでしょうか?……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る