122話〜待機と思考と現状と{☆}

 ここは名もなき城の中庭の中央。そして、魔神の水晶を設置するために用意された、祭壇がある場所。


 そこには、今ここで何が起きているのか、未だのみこめずにいるローレンスとマキシムがいた。



 あれからローレンスとマキシムは、ハクリュウ達と南側の祭壇へと向かっていた。


 だが2人は、多人数で行動しない方がいいと思い、中央にある祭壇で待機する事にした。



 ローレンスは、頭を掻きむしりながら、何が起きているのか思考を巡らせていた。


(いったい何が起きてる?ただでさえ、この状況が分からないというのに……。

 いきなり、目の前で魔法陣が現れ大きな音がし光ったと思ったら、こいつらがのびた状態で浮かび上がってきた。

 だがこの光景、以前どこかで見た記憶がある。ん~どこでだ?)


 マキシムもまた今の現状を理解しようと、色々と模索していた。


(異世界の勇者が側にいればレオン王子は大丈夫だろう。ただ、今この城で何が起きている?

 それにいきなり魔法陣と共に現れたこの者たちは……。まさかとは思うが。これをやったのはグロウディス様なのか?

 確か以前、剣士であるはずのあの人が、似たような召喚魔法を使っていた記憶がある)


 マキシムは一呼吸おきグロウディスをみた。


(……あの時、偶然みてしまった。グロウディス様が魔法を使うところを。今まで、剣だけで戦ってきたのは、それを誰にも悟られたくなかったためだと思っていた。

 だが、この状況で召喚魔法を使ったという事は、もうその必要がなくなったためか。もしくは、今の状況が、剣だけでは対処しきれないと判断したからなのか?)


 そう自問自答していると、ローレンスがマキシムに話しかけてきた。


「マキシム。この状況で、俺たちにできる事があると思うか?」


「そうだなぁ。あるとすれば……。奴らの手下どものかたづけと、その辺に転がっている連中の回収ぐらいだろうな」


「やはり、それしかないか。だが、それにしても……。レオン王子はこの後、どうするつもりなんだろうな」


 そう言いローレンスはレオンに視線を向けた。


「ローレンス。確かにそうだな。この計画を持ち掛けてきたあの方もこの城にいる。……」


「ああ。お互い別の方向から、同じ場所へむかっている」


「それにしても、何で、あの方はレオン王子に、こんな面倒なことをさせたのか?」


 マキシムはそう言いながらクレイ達の方をみた。


「それは、ちょっと違うだろ。あの時レオン王子は悩んでた。それを知ったあの方が、結界の城に潜入する方法を提案した」


「ああ。そうかもしれない。ニックを騙し、あの城に潜入した後、アイツに言われるままゲラン様になりすまし、オルドパルスに近づいた」


「……そうだな。しかしまぁ。結果、失敗に終わった。それに奴らの内部の事情も少し分かったしな」


 そう言いローレンスはラシェルがいるであろう方へと視線を向けた。だが、ローレンスは驚き青ざめマキシムをみた。


「マキシム!?ラシェル様が……」


 そう言われマキシムはラシェルがいる方向に顔を向けた。


「なぜラシェル様が、1人で南側の生贄の祭壇に向かっている!?それに奴らの手下が……」


「このままではラシェル様が……」


 ローレンスはラシェルの元へと駆け出し、マキシムもその後を追いかけた。


(ラシェル様!クッ、どうか間に合ってくれ。……)


 マキシムは走りながらそう思っていた。


 そして2人は、急ぎラシェルの元へと向かうのだった。

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