121話〜回収と脱出{☆}

 時は数分前にさかのぼり。ここは、名もなき城の中庭から離れた場所に位置する、クロノアにより破壊された部屋。


 その部屋の片隅には、エマ・リアスが縄でしばられ横たわっていた。


 そして、何故かそこにライロス・エッジの姿があった。



 そうライロスは、オルドパルスの指示のもと、エマとシグマに儀式が中止になったことを伝えるため、ここに来ていたのだ。



「エマ。お前がこれほどまでの傷を負うとはな。流石は異世界の勇者といったところか」


 そう言いながらライロスは、エマの身体に巻きつけられている縄をほどいた。


 そしてライロスは、エマに回復用のポーションを飲ませた。


 するとエマは、『ん、ん〜……』と、うなされながら徐々に目をあけていった。


 ライロスは心配そうにエマの様子をみていた。


 そして目覚めたエマは、目の前にライロスの顔があり驚きとび起きた。


「うわ〜ライロスに襲われる〜!?たすけて〜アリスティアさまぁ〜」


 エマはパニックになり大声で叫んだ。


 ライロスは、その様子をみて頭を抱え、ため息をついた。


「おい、落ちつけ!俺がお前なんかを、襲うわけないだろうが!!」


 そう言いライロスはエマを殴った。


 するとエマは、殴られたところをさすりながら、


「イタタタタァ……。ごめんなさい。そうですよね。そもそも、仕事一筋のライロスにかぎって、あり得ないことでしたわ」


 エマはライロスをみながら、意地悪気味で言った。


「あのなぁ。はぁ、まぁいい。それより、シグマはどこにいる?」


 ライロスにそう聞かれ、エマはキョロキョロと見渡してみた。


「……そういえば、私があのクロノアっていう女と戦っていた時に、シグマはユリナっていう女と戦ってたわ」


「そうか。そうなると、どこかの部屋か通路にいるかもしれないな」


 ライロスは考えていた。シグマなら、どこを戦闘場所にえらぶかを……。


「ライロス。シグマがあの状況で、考えながら行動していたともおもえないわ」


「……確かにな。そうなるとエマ。この部屋にくる時、通った道筋は覚えているか?」


 そうライロスに聞かれエマは、少し考えた後、うんっと頷いた。


「それなら、大丈夫そうだな」


 ライロスはそう言うと部屋の扉へと歩きだした。エマは、まだ完全に回復していない為、よろけながらライロスのあとを追った。




 その後ライロスとエマは、ひたすら歩きながらシグマを探していた。


 するとライロスとエマは、痺れ薬が充満している部屋で、動けなくなっているシグマをみつけた。


 それをみたライロスは、シグマに駆けより薬を飲ませ介抱した。


 そしてライロスはシグマが目覚めると、オルドパルスからの伝言を2人に伝えた。



 そうオルドパルスは、ライロスにもう一つ命じていた。エマとシグマをみつけ次第、この城を出ろと指示を出していたのだ。



 ライロスがそのことを伝えると、それに対しシグマとエマはなっとくできず反論した。


「おい!ライロス。なんで俺たちだけが、この城をでなきゃならない!」


「そうよ。なっとくいかないわ!オルドパルス様は、なにを考えているというの?」


「2人とも落ちつけ。そもそもこの儀式そのものが。あの結界の城の連中の企てだった」


 ライロスはそう言い悔しい気持ちになったが、グッと堪え更に話しはじめた。


「オルドパルス様は、土壇場になりそれに気づいた。その為ユウ様の呪縛を解き、儀式を中止しようとしている」


「だが、俺たちがこの城をでたとして、オルドパルス様はどうなる?」


「シグマ。それならユウ様がいる。それにかえって俺たちがいれば足手まといになりかねない」


 ライロスはそう言いながら中庭の方をみた。


「それもそうね。ライロスの言う通り。私もこの場は、オルドパルス様のことを、ユウ様に任せるべきだとおもうわ」


「……分かった。そういう事なら仕方がない」


 シグマはあまりなっとく出来なかったが、しぶしぶ首を縦に振った。


 そして、その後ライロス達は、後ろ髪を引かれながらもその場をはなれ城を脱出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る