120話〜誘導と約束{☆}

 タツキは、ユウに問い詰められ、どう答えたらいいか考えていた。


 片やユウは、なぜタツキがこんなに悩んでいるのか、疑問に思っていた。


「……何でそんなになやむ必要があるんだ?……まぁ、別にいいや!言えないんじゃ仕方ないし。……じゃ、名前だけでも教えてくれないかな?」


「名前か……そうだなぁ。別にそのくらいならいいだろう。俺の名は、タツキ・ドラゴナイトだ」


 そうタツキが言うとユウは、“ん?”っと思い考え始めた。


「タツキ……」


(ん〜タツキ・ドラゴナイト。やっぱり知らない名前だけど。この名前のセンスって……。

 それにこの声と雰囲気だけど。やっぱりどこかで会ってるよな?

 タツキ……。ん?でもまさか!名前の一部は……で、確かにあの人の名前になる。それに、サブキャラなら分からなくてもおかしくない。

 だけど、ここが前にあの人の召喚された世界だとして、また別の姿で召喚されるって事があるのか?

 ……まぁ、考えてても時間がもったいないし。何か言えない理由があるのかもしれないしな。そうなると、それとなく聞いてみるか。

 それに、あの事を言えば、もしかしたら口をすべらすかも。あの人なら……)


 ユウは、そう思いタツキの方に視線を向けると、わざとらしく話し出した。


「……そうだ!元の世界だと、いま何日なのかなぁ?の2期、途中まで観たけど。あ〜あ、録画予約するの忘れてたから観れないなぁ」


 そう言いながらユウはタツキをチラッとみた。



 ……因みにユウは、いつも前もって全話分の録画をしている為、予約してないわけもなく、明らかに嘘をついていた。



 タツキは、ユウが急にアニメの話をし始めた為、不思議に思った。


(ユウは急に何で、うち魔の話を持ち出してきた?……まさか!俺が誰だか気づいたのか?

 それともそれを確認するために……。だとすれば、それを上手く利用できれば……)


 そう考えるとタツキは、ユウを見ながら話し出した。


「そうか。その様子だと、俺が誰か気づいたみたいだな。だがユウ。お前が、好きなアニメの録画を、忘れるなんて珍しい。まぁ、俺も忘れたけどな」


「……なるほどねぇ。だけどまさか。サブキャラを作ってたとは思わなかったよ。それと、俺がアニメの録画してないわけないだろう」


「だよな。それでユウ。さっきも話したと思うが。ここで魔王になる儀式をするのはやめろ!」


 そう言いタツキは真剣な表情でユウをみた。


 だがユウはなぜか不敵な笑みをみせ意外な言葉を発した。


「そっか。まさかこんなかたちで、再会するとは思ってなかった」


 ユウは一呼吸おき、


「どうしよう。色々聞きたい事もあるし。そうだなぁ……この儀式をやめてもいいけど。ただし、この条件をのんでくれたらね」


「条件?」


「うん。……タツキが本当にあの人なのか確認したい。なので、俺と戦ってくれなせんか?」


 そう言いユウはタツキを真顔でみた。


「ユウ。俺は構わない。だが今、この場じゃないとだめか?」


「んー……はぁ。本当はそう思ったけど。……今の言葉きいて間違いないって確信しちゃったし。まぁいっかぁ。じゃ後でお手合わせお願いします」


 ユウはそう言いタツキに頭を下げた。


「ああ。ここがかたづいて、時間がある時にな」


 そう言うとタツキは笑みを浮かべ、ユウの肩をポンっと軽く叩いた。


 そして、その場にいたオルドパルスは、その状況を理解できずにいた。




 一方リッツも、その様子を物陰から見ていたが、何がなんだか分からず、理解不能になっていた。


(えっと。タツキは、何の儀式をやめさせたのか分からないけど。

 まぁ、とりあえず何とかなったみたいだし大丈夫だね。あっ!そうだった。そろそろタツキと合流しないと)


 リッツはそう思いながらタツキの方に視線を向けた。


(……でもタツキ。やけに楽しそうに話をしているなぁ。僕が入る隙がないくらいに……)


 そして、リッツはうらやましそうに、タツキとユウをしばらく見ていた。

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