113話〜現状把握と不安{☆}

 その頃ハウベルトとラシェルは、魔神の水晶が置かれていた祭壇付近で待機していた。


「いったい何が起きているというのでしょうか?」


「ラシェル様。ここから状況を見る限り、儀式が失敗し本当の敵が現れたという事でしょう」


 そう言いハウベルトは辺りを見渡すと、テリオスとアリスティアが敵に囲まれているのが見え、


(テリオス王子が……ん?あの敵はまさか!?ゲネスなのか?何でアイツがここにいる)


「ハウベルト。急にどうされたのですか?怒っているように見えますが」


 そう言われハウベルトはラシェルの方に視線を向けた。


「今テリオス王子とアリスティアが戦っている敵は知っているヤツなんですよ。それも数々の罪を犯した重罪人」


「ちょっと待て下さい。もしそうだとしたら、何故、他の国々に知らせが来ていないのでしょうか?」


 そう言われハウベルトは一瞬、言葉に詰まったが、


「それは……申し訳ない。この事は自国の問題ゆえに自分から話すわけには、ただ、王かテリオス王子の許しがあれば別ですが」


「そうなのですね。では後でこの事は話して頂きます」


 ラシェルがそう言いハウベルトは頷きテリオスの方を向くと、


「ラシェル様。テリオス王子にあそこを任せるわけにはいきません」


「テリオス王子の事が、心配という事ですね」


「いえ、その逆です。それに、ここでテリオス王子に暴れられると厄介ですので」


 そう言われラシェルは不思議に思いながら、ハウベルトを見た後テリオスの方へと視線を向けた。


「まさか!あの噂は本当なのですか?」


「はい。普段はあんな感じなのですが。元々、何事にも熱くなるタイプらしく……」


「それでは、テリオス王子のもとに、早く向かわなければなりませんね」


「そうですね。それで、ラシェル様をここに1人おいていくわけにもいきませんので」


 ハウベルトは、何処が安全に移動でき、ラシェルを避難させるのに最適な場所なのかを考えながら、周辺を見回すと、


「ラシェル様は、ハクリュウ様たちの後を追い、ノエル様のもとに向かって下さい」


「ハウベルト、分かりました。そうさせて頂きます」


 そう言うとラシェルはハクリュウ達の後を追い、ハウベルトはテリオスのもとへと向かった。


(間に合えばいいが……)

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