103話〜多種な職業と能力

 ここは名もなき城の中庭が見える通路。タツキは剣を構え、ドルマニールを警戒しながらカルテットに話し掛けた。


「アンタの名前、確かカルテットっていったよな?」


「ああ、そうだが」


「頼みがある。俺がこの男とやり合ってる間に、そのデューマンの女、あ〜いや、ディアナだったか。すまないが起こして欲しい」


「ああ、タツキ分かった。何とかやってみよう」


 そう言うとカルテットはディアナの方に向かい、それを見たドルマニールはその後を追おうとしていた。


 タツキはドルマニールのその動きを瞬時に察知し遮った。


「おっと、悪いな。お前の相手は俺だ!……そういえば、お前さっきトリックカードを持ってたよな?って事は、職はトリックスターって事か?」


「さあな。だが、それがどうした?」


「いや、ただ同じトリックカードを使う職を知ってたんでな」


「目の前の敵の職を気にするとか、随分と余裕をみせてくれるじゃねぇか」


「あぁ、俺は分からねぇ事を直接相手に聞く主義なんでなぁ」


(なるほど。恐らく俺達の世界でトリックスターに値する職なんだとは思うが。どちらかと言えばマジシャンに近いのか?昔はそれで失敗してる。こっちの世界にはトリックスターという職は昔からない。……そうなると今の職だと対処するのは難しいかもな。俺が今覚えている職でマジシャンに対抗するとなると……)


 そう考えながら何の職にするか考えていた。


(やっぱ忍者しかねぇな。この職なら、いくつかマジシャンに有効なスキルもあるしな。職を変えるにも1度こいつとの間合いを取ってからの方が良さそうだな)


 タツキはそう思いながらドルマニールとの間合いを取った。


「おいおい!何のつもりだ。貴様のその短い剣で、どうやってこの距離で攻撃しようってんだ」


 そう言うとドルマニールは、タツキが何を考えているか分からなかった為、警戒しながら徐々に近づいていった。


「さあ、何でだろううな」


 そう言いタツキはドルマニールの動きを見ながら、急ぎメニュー画面を開き忍者のプリセットを選んだ。


 するとソードマスターから忍者へと職が変わり、装備も先程より軽装備の、黒っぽい紺色の装備一式と一対の刀を腰に差していた。


「フッ、そういう事か。お前は多種の職業を覚えている様だな。そういえばニック様が、異世界の者の中には多くの職を覚えている者もいると言っていたが。なるほど、お前もその1人ってわけか」


「さあ、どうなんだろうな。まぁ、向こうの世界でも、俺の様に多くの職を覚えている奴は数少なかったがな」


「なるほど。だが、気になる事がある。お前を召喚したのは誰だ?」


「さぁ、誰なんだろうな。誰が召喚したか。……その事に関して、俺はお前に言うつもりはない!それに、俺を召喚したヤツが、シェルズ城の者や召喚魔法を使える事を知らない者達には知られたくない。と、言ってたしな」


「まぁいい。お前を倒す事が出来れば、自ずと誰が召喚したか分かるだろうからな。さて、時間もない、そろそろ始めるとしようか」


「ああ、そうだな」


(何を焦っている?まぁいい。さて、忍者のスキルで今使えそうなのは、この辺か?これで太刀打ちできねぇとなると、俺でも苦戦するかもしれねぇって事だけだ)


 タツキはドルマニールを警戒しながら、右手を腰に差している刀の柄に添え、腰の重心を落とし身構えた。


(どんなトリックで仕掛けてくる?)


 そしてタツキはドルマニールを見ながら少し考えた後、


(まぁ、ちょっと無謀かもしれねぇが、試しに仕掛けてみて、その後どう動くか見るのも面白いかもしれねぇな)


 タツキはそう思ったあと体勢を変えると、ドルマニール目掛けクナイを投げ付けた。


「フッ、自分から仕掛けて来るとはな!」


 そう言いドルマニールは、後ろに退きクナイを避けると、数本のナイフをタツキ目掛け投げつけた。するとその数本のナイフは直ぐに消えた。


「ナイフが消えた!?」


 タツキはナイフが消え一瞬焦ったが、ナイフが背後に現れそれに気付き振り返った。


 タツキはすかさず龍の刺繍がされている紺色の布を取り出し、自分を覆い隠す様に目の前に翳すと、数本のナイフを弾き飛ばした。


 だが、一瞬気付くのが遅かった為、一本のナイフがタツキの左肩に刺さった。


「痛……。流石はマジシャンだけはある。ナイフが消えそのナイフが背後に現れる。なるほど、随分と面白いトリックじゃねぇか」


 そう言いながらタツキは肩に刺さったナイフを抜いた。


「ああ、そういう事だ。だが、まさかお前から仕掛けてくるとはな。それにあの攻撃を全てではないが防ぐとは……。そうなると、簡単な攻撃じゃない方が良さそうだな」


 そう言うとドルマニールは身構えた。


「ああ、そういう事だ。まぁ、俺はお前に負けるつもりはねぇがな」


 タツキはそう言いながらドルマニールの動きを観察していた。


(さて、他のスキルを使ってくると思うが。……どんな攻撃を仕掛けてくる?まぁ、どんな攻撃でも勝つ。俺は負けるのだけはゴメンだ!)

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