102話〜チビ悪魔降臨‥後編

 タツキはこのチビ悪魔をどう処理するか悩みながら、今のプリセットから更に軽装備に着替えた。


 そしてタツキはシャナ達が睨み合ってる中、ディアナの様子を見るため側に近づいていった。


(まさかとは思うが、あれだけの騒音に付け加え皆の声を聞いても反応していない。って事は、今の魔法が寝ぼけて放ったものだとしたら、何とか起こさないと恐らくあのチビ悪魔は消えないかもしれない。いや、それだけじゃない。また寝ぼけて面倒臭い魔法なんか使われたら厄介だ!)


 タツキはディアナの前に来るとしゃがみ顔を覗き込んだ。


「なるほど。やっぱり眠っているのか。」


 シャナはタツキに気付き警戒しながら話し掛けた。


「貴方は誰なのですか?それにさっきと服装が変わっているようですが。」


「俺の名はタツキ・ドラゴナイト。それより、この黒魔石の腕輪をこのデューマンの女のポケットから退けた方が良さそうだな。」


「それは、どういう事なのですか?それに何故その腕輪の名を知っているのですか?」


「さあな。その事を今話すと長くなる。それよりも、このチビ悪魔を何とかしねぇとな。それには恐らくこのデューマンの女を起こさないと、このチビ悪魔を消すのは困難かもしれねぇ。」


「分かりました。ですが、貴方は味方なのですか?」


「ああ、一応味方だ。それにお前がシャナだよな?」


「そうですが?何故私の名前を知っているのですか?」


「それはな。お前の母親のユリーナさんに頼まれたからだ。お前に手紙を渡してくれとな。」


「手紙を?」


「だが、今は渡してる暇はない。このチビ悪魔とこの女をどうにかしないとな。」


「そうですね。そういう事なら、貴方を信じる事にします。でも、どうやって起こすのですか?」


「なるほどねぇ。その腕輪のせいでこのデューマンの女は眠りについた。って事はこの腕輪をこの女から遠ざければいいって事よね。」


「ああ、そうだな。それにこの黒魔石の腕輪は手に持ってない方がいい。悪いが俺の倉庫に保管しておく。その方が安全だと思うからな。」


「タツキ。貴方はいったい?それに倉庫とは……確かノエル様もそんな事を言っていた様な気がします。まさかとは思いますが、貴方は異世界の者なのではないのですか?」


「……シャナ嬢!まさかあり得ない。いや、仮にそうだとして誰が召喚したというのですか。」


「確かにおかしい。シェルズ城で召喚したのはクレイ。そしてオルドパルスが異世界の魔王として召喚した者の名は確か……ユウという名前だったはず。それに今は生贄の祭壇にいる。」


「……はぁ、それを今説明しなきゃいけねぇのか?てか、その前にこのチビ悪魔を消すのが先じゃねぇのか。」


「さあねぇ。私はこの黒薔薇のせいで動けないし。もし動けるようになったとしても、私達には関係ないしね。」


「ああ、そういう事だ。ミスティ今何とか助ける待っていろ。」


 ドルマニールがそう言うとタツキは呆れた顔になり、


「まぁいい。お前達を俺がどうにかしないと、この状況を変える事は出来ねぇみてぇだな。」


 そう言うとタツキは自分の倉庫……いや、プリセットの装備の空きに腕輪を保管した後、剣を持ち構えた。


 それを見たドルマニールは体勢を変え、持っていた6枚のトリックカードを仕舞い、タツキを見ると身構えた。


 辺りには未だ数十匹のチビ悪魔がふわふわと飛び回っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る