101話〜チビ悪魔降臨‥前編
カルテットとドルマニールはお互い牽制し合っていた。
だが、カルテットはシャナとディアナに攻撃が当たるのを恐れ、トラップ魔法を違う方に仕掛けドルマニールを威嚇しながら誘導していた。
「カルテット。どういうつもりだ?」
「何の事だ?」
「ミスティ達から少しずつだが、遠ざかっているように思える」
「ドルマニール。このままお前とまともに戦えばシャナ嬢やディアナに危害が及ぶと思ってな」
「フッ、なるほど。お前らしいな。自分の心配よりも人の心配するとはな。だが、それは俺を、トラップ魔法を仕掛けた場所へと誘導しているんじゃないのか」
「さあな。だが、お前こそ俺が行こうとしている方を避け元の場所に俺を誘導しようとしてるよな」
「さあ、何の事かは知らないが」
そう言いながらお互い睨み合っていた。
ミスティは黒薔薇のつるに囲まれ動けば猛毒の棘が飛んでくるため動けずにいた。
シャナは黒薔薇にミスティのみ攻撃するように指示を出していた。
そして、シャナはミスティを睨み付けながら側まできて、ディアナをミスティから少し遠ざけた。
ディアナはまだ寝ていた。だが、シャナがミスティに気を取られている間、ディアナは急に仰向けになり右手を前に翳した。
タツキはディアナのその行動に気付いた。
「ん?あのデューマンの女は何をしてるんだ?てか、目を覚ましたのか……。いや、そうは見えない。だとすればこの行動はいったい?他の連中は気付いてねぇみてぇだが。あの女は何をしようとしてるか分からねぇ。てことは、こっちを警戒して見てた方が良さそうだな」
そう言いながらタツキはディアナの行動を監視していた。
一方ディアナは寝ぼけていた。そして、寝ながら右手を上に翳し、ブツブツと呪文らしき言葉を発していた。
するとグレイ色の魔法陣が大きく描かれたと思うと、ディアナが涙を浮かべながら何か呟き始めた。
「……チビ悪魔が1匹、チビ悪魔が二匹、チビ悪魔が三匹………」
と、ディアナが言うと魔法陣からチビ悪魔が1匹、二匹と後から後から出てきた。
シャナ達がそれに気付いた時には既にチビ悪魔が数十匹以上溢れでていた。
「……えっと、これはいったい?まさかこれはディアナの魔法?でも、何故チビ悪魔?それに見る限りディアナは寝ている様に見えるのですが」
「このチビ悪魔は?あのデューマンの女の仕業なの?」
「これは何だ?ミスティの方で何が起きている」
「……チビ悪魔か。確か昔聞いた事があったが。レギオンの魔の惨劇と同じチビ悪魔、って事は、まさかこのディアナという女は黒悪魔のディアナなのか?」
「なるほど。じゃこのまま放っておけばレギオンの惨劇の様にこの城全体をチビ悪魔で覆い尽くされかねないな」
「ああ、そうだな。危害は加えないが、目障りで迷惑な生き物だ!」
そう言いながらカルテット達はディアナの方を見ていた。
そしてタツキはディアナが召喚したチビ悪魔を見て一瞬何が起きたのか分からず『……』となったが直ぐに我に返り、
「な、何でチビ悪魔!?てか、これはどういう事なんだ?それに、これは流石にチビ悪魔を出し過ぎだ。それに今俺のところにきたチビ悪魔を触ってみたが。……可愛いだけで何の危害を加える訳じゃねぇみたいだが。ただ、流石にこの数は不味いだろう」
タツキはそう言いながらこの状況でシャナ達がどう動くか様子をみた。
だが、シャナ達はこの状況をどう動いていいか分からず悩んでいた。
「アイツら何やってるんだ?まさか、この状況をどうしたらいいか分からねぇって事は、流石にねぇよな?てか、俺もどう動けばいいかなんだがな」
タツキはそう言いディアナと更に溢れ出ているチビ悪魔を見ながらどう動くか考えていた。
(ん〜、考えてても仕方ねぇか。とりあえず、このチビ悪魔をどうにかしねぇとな)
そう考えながらタツキはメニュー画面を開きプリセットをみた。
(この場合。俺が今覚えている職で対応するとなると……。これしかねぇか。今なっている忍者の職じゃ、これをどうにか出来る自信はねぇしな)
タツキは今現在の職の忍者から、ソードマスターの職へと変え、聖龍の軽装の兜、鎧、盾、長剣を装備した。
そしてタツキはその場で剣を構え頭上に掲げると、
《聖龍剣 聖光渦斬!!》
聖なる光が刃に降り注ぎ覆うと、剣を右斜め上に構えた。そして斜めに大きく振り下ろすと、ディアナの真上で溢れ出ているチビ悪魔目掛け、光の斬魔が放たれた。
するとその光の斬魔は聖龍に姿を変え、激しい光を発し渦を作り出しながら、ディアナの真上のチビ悪魔を打ち消していった。
だが、一度だけでは打ち消す事は出来ず、タツキは更に同じ技を2回放ち、溢れ出てきていたチビ悪魔と魔法陣を打ち消した。
シャナ達は目の前で何が起きたのか分からずにいたが、聖龍の斬魔が放たれた方を見てみると、そこに金色の
しかし、魔法陣は消えてチビ悪魔は出てこなくなったが、召喚されたチビ悪魔は消えてはいなかった。
(とりあえず大元は打ち消せた。だが、まだ召喚されたチビ悪魔が残っている。……てか、あのデューマンの女あの体勢のまま何をしてるんだ?まさか寝てる訳じゃねぇよな)
「いったいあの人は誰なのでしょうか?」
「おい!あの男はお前達の仲間じゃないのか?」
ミスティがそう聞くとシャナは首を横に振り、
「いえ、知りません。ですが、見た感じだと私達の仲間なのかもしれませんね」
「シャナ嬢。それよりこのチビ悪魔をどうにかして消さなければ、危害を加える訳じゃないが、目の前を行ったり来たりしていてうっとおしくて集中できん」
「……カルテット。このチビ悪魔を片付けないとお前と戦う事も出来そうにない。だが俺にとっては好都合だがな」
「そうだな。だが、ここはお互い休戦しこれをなんとかしないか?」
「いや俺はお前らと協力するつもりはない。それにこんなチビ悪魔なんかどうでもいい。ミスティ今の内ならこいつらは動きが取りにくいはずだ。俺がその黒薔薇を解除する」
ドルマニールはそう言うとトリックカードを両手に3枚ずつ持ち構えた。
ミスティは軽く頷き即逃げられる体勢をとった。
カルテットはドルマニールの動きを警戒し、シャナはミスティが動いたらいつでも黒薔薇で攻撃できるように身構えた。
そして、辺りには無造作にチビ悪魔が飛び交っていた。
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