98話〜水晶と呪詛解除

 ここはシェルズ城の地下。ニックは自分の配下の者達に儀式が中止になった事を伝えた後、魔法陣に映し出された名もなき城での状況を確認していた。


「……今の現状では、私の配下の5人とその配下の者達だけで対応するのは難しいかもしれない。そうなると、他の者も数名あの城に向かわせた方がいいかもしれんな」


 そう言うと通信用の巻物を広げ、2人の配下の者に個々に連絡を取り、名もなき城に早急に転移し異世界の者達とその関係者の始末をしろと指示を出した。


 そしてニックは魔法陣に映し出されている光景を眺めていると、オルドパルスとカプリアが生贄の2人の元へと向かっている事に気づいた。


「これは……なるほど、そういう事か。まぁ、今になっては儀式を中断しようが、我々にとっては関係のない事だ。だが、オルドパルスが持つあの水晶には魔神ディスペアーが封印されている。封印され力が弱まっているとしても、元は神なる存在だったと読んだ書物には書いてあったが……。これは、油断は出来んな」


 そう言いながらニックはカプリアの動きも気になりみた。


「ん?何故カプリアは生贄のあの女の元へと向かっている?待てよ。手に持っているあれは水晶……まさかとは思うが、神と通信ができるとされている水晶なのか?もしそうだとすると神にこの儀式の事が知られた事になる。この事をアルフレッド様に早急にご報告せねば」


 そう言うとニックは通信用の巻物を広げアルフレッドにこの事を伝えた。


「アルフレッド様。今魔法陣に映し出された映像にて城の状況を確認しておりました所、カプリアが水晶を持ち生贄の女の所に向かっています」


 “ニック、今水晶と言ったか?まさか神の水晶ではないだろうな”


「それは確認していませんので分かりませんが。オルドパルスも魔神の器となる生贄の男の方に向かっております」


 “そうなると、神の水晶の可能性は高いな”


「どうなさいますか?このままでは……」


 “確かにこのままでは、多くの異世界の者達を生贄に使い、この世界に大いなる厄災を召喚すると言う計画が水の泡となる。……ニック至急書斎にこい!”


 アルフレッドがそう言うとニックはその場を離れ書斎へと向かった。



 場所は移り、ここは名もなき城の中庭。オルドパルスは儀式を中断する為、魔神の水晶を持ち玉座に座り苦しんでいるユウの元へときた。


 ユウはもがき苦しみながら、何故水晶を持ち自分の所にきたのか不思議に思いオルドパルスをみた。


(ハァハァ、なんでオルドパルスが俺の前にいるんだ?)


 オルドパルスはユウを見ると水晶を目の前に出し、


「ユウ様。申し訳ありません。私は貴方様を騙しておりました。ですが、私も奴らに良い様に利用されていた様です」


「ハァハァ……なっ!?」


(いったいオルドパルスは何が言いたいんだ?それに今何が起こっている?今一つ状況が呑み込めない)


 オルドパルスはユウを魔神の器とし生贄にしようとした事、その計画も結界の城の者の策略で、このオルドパルスが作った城の中庭に異世界の者達を集め、魔法陣に誘い込み生贄にしようとしている事、シェルズ城の者達は自分の計画につけ込み騙し利用していた事、そして、それを阻止する為にこの儀式を中断しようとしている事を簡単に話した。


「……儀式を中断する為に魔神ディスペアー様の力を借り、まずは今からユウ様にかけられた呪詛を取り除きたいと思います。呪詛が解けた後、これからどうするのかをディスペアー様とユウ様と私とで話し合いたいと思います」


(ハァハァ、儀式が中断?って事はノエルも俺も助かるって事なのか。でも、さっきのオルドパルスの話だと、結界の城の者達がこの儀式を利用しようとしているって言ってたけど……そうなると、この儀式が中断したとしても油断できないって事だよな。……って、その前に呪詛が解けたら何を話し合うんだろう)


 そう思っていると、オルドパルスはユウの頭上に魔神の水晶を翳した。


「オルドパルス、では始めるとするか」


 そう言うとディスペアーは詠唱を始め、オルドパルスはその後を追い詠唱を唱え始めた。


「聖なる光よ 我が呼び掛けに応えここに集へ 邪なる者を退き浄化せよ」


 《聖光魔法 呪解!!》


 呪文を唱えると神々しい光が水晶に当たった。そして、その光が水晶に当たり貫通すると増強し広がりユウの頭上に降り注ぎ身体全体を包み込んだ。


 ユウはその光に包まれると更に頭を抱え苦しみ出した。


「うあぁぁぁ〜………ちょ、あっ、く、くるし……ってぇぇ!あーーー……!」


 ユウは余りにも苦しくて大声で叫んだ。その後、全身を襲ったその痛みは徐々に治り呪詛は浄化され解除された。


 そして、ユウはしばらく荒い息をしていたが徐々に治り話し出した。


「……ハァハァハァ。……じゅ、呪詛は、解除されたのか?」


「はい、ユウ様。これで解除されました。ですが、まだ終わってはおりません。それ故、これからある儀式を行うかどうか急ぎ話し合いたいと思います」


「この状況で……また儀式って?」


 ユウが聞くとオルドパルスとディスペアーがその事について話し出した。

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