99話〜カルテットとドルマニール

 ここは名もなき城の中庭が見える通路。シャナはディアナを心配そうに見ていた。


 シャナとカルテットは、黒魔石の腕輪がこの儀式に反応しディアナが眠ってしまったのだとクレイに聞き、ここに1人置いて行くのは危険かも知れないと思いここに残ったのだ。


「カルテット。先程から少し気になっているのですが」


「シャナ嬢、どうしたのですか?」


「ディアナを先程から見ているのですが。クレイ達がここを立ち去ってから、ポケットの中の黒魔石の腕輪を見ていたのですが、少し光りが弱くなっているように感じるのです」


 そう言われカルテットはディアナのポケットにある黒魔石の腕輪を手に取りみた。


「……確かに、先程よりは光が弱くなっているように感じますね。でも何故?」


「先程の話では、この腕輪はシェルズ城の結界の鍵かもしれないと言っていました。そしてこの儀式に反応しているのではとも……」


「ですが、光が弱まっている。それもあの者達がここを立ち去ってから……これはあくまで仮説なのですが、あのシェルズ城の結界を解く鍵は1つではなく複数あり、それを先程いた者達の誰かが持っていて、この黒魔石の宝石と共鳴し合っていたとしたら?」


「……カルテット、それはあり得ますね」


 そう話をしていると2人の背後にドルマニールとミスティが姿を現し、


「なるほど、それは面白い事を聞いちゃった」


 シャナとカルテットは、背後で声がし慌てて振り返り身構えると、ミスティとドルマニールをみた。


「あなた達は、誰なのですか?」


「さあ誰なんだろうな。まぁ言えるのは、お前達を倒しそのデューマンの女から黒魔石の腕輪を奪った後、クレイ達に追いつきもう一つの鍵を奪うという事だけ。さっきのミスティの話を聞いて、だいたい誰が持っているか分かったからな」


「やはり、もう一つの鍵が存在するという事か」


 そう言いながらカルテットはドルマニールを見ると、


「……お前?まさか、ドルマニールなのか!」


 そう言われドルマニールはカルテットをみた。


「ん?何で俺の名前を知っている!お前はいったい……」


「流石に昔の事過ぎて、顔を忘れられているようだな。俺の名はカルテット・ロードだ」


「カルテット……ハッ!ま、まさか、雰囲気が変わっていたので気付かなかった。でも何故ここに?確か貴方は魔道機動部隊の隊長を辞め、故郷に帰ったと聞いていたが」



 そう数年前まではカルテットとドルマニールは隊は違えど、同じラウズハープ城に使えていた兵士だった。


 ドルマニールよりカルテットの方が年上だったが、いつもドルマニールの隊の方が成績が優秀だった。


 2人は同じ隊長と言う立場上、城に招かれる事が多くよく顔を合わせ、そのおり城の用が済むとよく街に赴き色々な話をした仲だった。


 だが、カルテットはある作戦の最中、人質の女性を助ける際、大怪我をしてしまい療養の為、隊長の座を退き隊を抜け故郷に帰っていた。


 それ以来会っていなかった為と、髪型や雰囲気が以前と変わっていたので、ドルマニールはカルテットに名前を言われるまで分からなかったのだ。



「ああ、その通りだ。それより、お前こそ何故ここにいる?それに黒魔石の腕輪を狙っているという事は……まさか、シェルズ城に手を貸しているのではないだろうな!」


「だとしたらどうする?」


「何故奴らに加担する?」


「さあな。それは貴方が知る必要がない事。さて、無駄話はこのぐらいにして、さっさとここを片付けないとな」


「そうね。もう一つの鍵を奪わないとね」


 そう言うとドルマニールとミスティは身構えた。


 それを見たカルテットは身構え、シャナはディアナを庇うように杖を持ち身構えた。



 一方タツキはテレポートで名もなき城に来ていた。そして、偶然シャナ達を見つけ、タツキは気配を消し物陰から様子を伺いながら、カルテットとドルマニールの話を聞いていた。


(……なるほど。黒魔石の腕輪を持っている。って事は、あのデューマンの女性はディアスの子孫で間違いねぇって事だよな)


 タツキは中庭の方を見ると、


(さてと、どうする?黒魔石の腕輪をみすみす奴らにくれてやる訳にもいかねぇし。だが、今俺がここで出て行くのもな。少し様子を見てからの方がいいか?)


 タツキはシャナ達の方を向くと、


(虎の獣人ハーフって事は、あの女性がユリーナが言っていたシャナか。そうなるともう1人は仲間って事になるな。ん〜2対2かぁ……フゥ、やっぱここは様子を見て、状況次第では加勢した方がいいだろうな)


 そう思いタツキは様子を伺う事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る