97話〜事後報告

 ここはシェルズ城の地下に作られた部屋。アルフレッドは魔法陣に映し出された名もなき城の様子を見ていた。


 するとリリアスとニックが階段を降りアルフレッドの側まできた。


「アルフレッド様、申し訳ありません。何者かが城に侵入したらしく、見廻りの警備兵は刺され、リリアス様は眠らされセレスティナとリムティナが連れ去られました」


「ニック、まさか……あり得ん!この数十分の間に誰が侵入したと言うのだ!」


「お兄様。私が侵入者に気付いた時には、既に眠気に襲われ……ですが、不思議なのです。何故、侵入者は私を刺さず眠らせたのか?」


「ともかくリリアス。無事で何よりだ。他に何か気付いた事は無かったか?」


「そうですね。私の聞き違いかもしれませんが、男性の微かな声で『すまない。出来れば無抵抗な女には手をかけたくない……』と、言っていた様に聞こえました」


「……それが、聞き違いでないとしたら、随分と紳士的な男の様だな。だが、いったい何者が……」


「アルフレッド様。これはあくまで私の推測に過ぎませんが、この城の造りを把握している者の仕業ではないかと。それに、内部の犯行にしては急過ぎる」


「ニック、何故そう思う?」


「それは、内部の犯行であれば、儀式の始まる前に何らかの手を使い既に準備をしているはず。まるで何処かで監視していて、儀式が始まったと同時に動き出し、私とアルフレッド様の目を盗み犯行に及んだとしか思えません。それと気になった事があるのですが」


「うむ、なるほどな。それでニック、気になった事とはなんだ?」


「もし、私の推測通り外部の者の犯行だとしても、腑に落ちない点があります。その侵入者は迷わずセレスティナとリムティナを監禁していた部屋に辿り付いていた。まるでこの城の造りを把握していたかの様に」


「なるほどな。確かに妙だな。この世界の者でこの城の内部に詳しい者は一部の者のみ。それに、ニックとリリアスの話を聞く限り、その手口を見ても鮮やか過ぎる。相当の能力を持つ者でなければこうも気付かれず犯行に及ぶのは不可能だろう」


「それで、思った事なのですが。何者かが新たに祭壇を何処かに作り、異世界の者を召喚したのではないかと。それか、元々隠された祭壇は存在していて、その祭壇の存在を知っていた何者かが異世界の者を召喚したとも考えられます」


「確かに、それはあり得ない事はない。だがもし、仮にその異世界の者がこの城に侵入して犯行に及んだとしても、この城の事を把握している者でないとならないはずだ」


「そうなのです。そう考えるとどうも納得がゆかず。ただ、一つ思った事があるのですが。これは確認してからの方がいいと思いましたので。この城の内部の構造などは昔から変わっていないのですか?」


「ああ、変わってないはずだ。200年前に異世界の者に至る所を破壊されたが、そのまま復元したと聞いている」


「そうなりますと……私の予想が正しければ、この城に侵入した異世界の者は、200年前に召喚された者の可能性も考えられます。ですが、仮にそうだとして200年前に召喚された者が、再びこの世界に召喚されるという事があり得るのでしょうか?」


「うむ、確かにな。ただ、異世界の者がどの様にしてこの世界に召喚されてくるのか分からん。祖先が残した書物に書いてあるかもしれないが」


「アルフレッド様。後でその事が記載されている書物を探したいのですが」


「そうだな。だが、今は分かっているな」


「はい。勿論でございます。セレスティナがいないのであれば、儀式が行えませんので、あの城にいる者達は始末し、再びこの計画を新たな方法で実行しようと思います」


「ニック。うむ、後の処理は任せた。では、リリアスと部屋に戻っているとしよう」


「承知しました」


 ニックがそう言うと、アルフレッドとリリアスは階段を上り部屋へと向かった。


 ニックはそれを確認すると魔法陣に向かい通信用の巻物を広げた。


 そして、名もなき城にいるドルマニール、ミスティ、ゲネス、キース、クルフに急遽儀式が出来なくなった事を言い、その後どう行動するかを指示した。

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