96話〜タツキ・ドラゴナイト

 ここはシェルズ城。ニックはセレスティナを監禁していた部屋に辿り着いた。


 すると、ニックはリリアスが部屋の隅の方で倒れていたのをみつけ駆け寄り生死を確認した。


「……息をしていますので、大丈夫みたいですね。ですが、何故リリアス様を刺さずに眠らせたのでしょうか?」


 ニックが起こすとリリアスは目を擦りながら起きた。


「……ニック何故貴方がここにいるのですか?それに私は……」


 そう言いながら辺りを見渡した。


「リリアス様。ご無事で何よりでございます。ですが、ここで何があったと言うのですか?」


「あっ!ニック。私にもよく分からないのです。背後で何者かの気配を感じたと思った瞬間、急な眠気に襲われいつの間にか寝ていました」


「では、その者の顔は見ていないのですね。だが、いったい何者がこの城に侵入し、見廻りの警備兵を刺しリリアス様を眠らせ、セレスティナとリムティナを連れ去ったと言うのだ?」


「ニック。セレスティナがいないとなると召喚の儀はおこなえないのですよね?」


「ええ、不可能でしょう。ただ、新たに優秀な召喚魔導師をみつけ、日を改めておこなう事は可能ですが。それをやるにも。やはり生贄となる異世界の者が多数必要となり、魔法陣に集めなければなりません」


「そうでしたね」


「リリアス様。ここに来るまでに思った事なのですが。……いや、これはアルフレッド様も加え話した方がいいかもしれません」


 そう言うとリリアスは頷き、ニックとアルフレッドが待つ地下の特別に作られた部屋に向かった。



 場所は移り、ここはバイオレット家の屋敷。タツキとセレスティナとリムティナは訳を話し屋敷の中に入れてもらい客間に案内された。


 そして、タツキとセレスティナとリムティナは、ユリーナと話をしていた。


「私はユリーナ・バイオレットと申します」


「俺は、タツキ・ドラゴナイト。……」


(似てる。バイオレットって事は、やっぱどう見てもアイツの子孫だよな。だとすれば強いはず。そうなると2人はここにいた方が安全かもしれない)


「セレスティナ、リムティナ、無事で何よりです。それと貴方にはなんとお礼を言ったらいいか」


「いいえ、俺はただグロウディスに頼まれセレスティナとリムティナを救出したまでです」


「なるほど。グロウディスが城の役職を捨て何らかの目的で動いていた事は知っていましたが。2人を救出する為だったのですね」


「それで、頼みがあるんだが。俺はこれからグロウディスが待つ辺境の地にある城に向かう。この2人を連れて行く訳にいかない。それで、しばらくここで匿ってかくまってもらえないかと思ったんだが」


「ええ、それは構いませんが。辺境の地にある城に向かうという事は、シェルズ城の者達の儀式を阻止する為に向かうという事ですか?」


「なるほど。流石はアイツの子孫だけはあるという事か」


「タツキ?今なんと言いましたか。アイツの子孫と言いましたよね?」


「あ〜いや、なんでもない。……シェルズ城の奴らの儀式はセレスティナがいなくなった事で阻止されたはず。だが、奴らは間違いなく更に刺客を送ってくるはず。いや、既に待機させてるはずだ。あそこにいる召喚された者達と仲間達だけでも凌げるとは思うが、もしもの場合もある。俺はその加勢に向かおうと思っている」


「そうなのですね。では、頼みたい事があるのですが聞いて頂けますでしょうか?」


「別に構わないが」


「ありがとうございます。今から急ぎ手紙を2通書きますので私の娘のシャナとイワノフと言う男にその手紙を渡して欲しいのですが」


「ああ、分かった」


 ユリーナは急ぎ手紙を書きタツキに渡した。


「この手紙を2人に渡せばいいんだな」


「ええ、お願いします。それと、先程から気になっていたのですが。タツキはこの世界の者ではありませんね」


「……流石だな。ああその通りだ」


「やはり、そうなのですね。では、グロウディスはあの秘境の祭壇で召喚したのですね。正規の祭壇は無断では使えないはずですので」


「そうなるな。じゃ、そろそろ行く事にする」


「あっ、もう一つ気になった事があるのですが。先程から話を聞いていると、まるで私の祖先の事を知っているような発言をされていたように見えましたが。もしやと思いますが貴方は200年前に召喚された者の1人ではないのですか?」


「ん?さぁ、どうなんだろうな。まぁその事は後で落ち着いたら話す」


「分かりました。では、シャナに無理はしないようにとお伝え下さい」


 ユリーナがそう言うとタツキは手を軽くあげ振った。そして、バッグからカードを取り出すとテレポートを使いその場から消えた。


「ユリーナさん。200年前とはどういう事なのですか?それにあの城はいったい?」


「セレスティナ。その事を話した方がいいのでしょうが。2人とも疲れていると思いますので、明日その事を話したいと思います。今日は安心してゆっくり休んで下さいね」


 そう言うとセレスティナとリムティナは頷いた。


 そして、ユリーナはメイドを呼び2人を部屋に案内させた。


 その後ユリーナは自室に向かい200年前の事が書かれた本を開き読んだ。


(……ここに書かれている名前にはタツキという名は記載されていませんね。ですが、間違いなくアイツの子孫と言っていました。だとすると、やはり200年前に召喚されたシュウ・ライオルス、クレイ・ディオン、リュウキの中の誰かだと思うのですが。だとすれば、過去の事とあのシェルズ城の事に詳しいはず。その事を聞きたいけれど、戻ってこない事には聞けませんね)


 そう言うと本を閉じ本棚にしまった。そして、ベッドに横になり眠りについた。

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