91話〜クレイ・マルスと腕輪
ここは名もなき城の中庭が見える通路。クレイ・マルスは、リュウキ達が召喚された世界だと知りリュウキが言っていた事を思い出し、グロウディス達を睨み付けていた。
そしてクレイは、今は冷静にならないといけないと思いひとまずその気持ちを呑み込み、深呼吸をし気持ちを落ち着かせた。
「クレイマルス。俺も何でその事を知っているのか知りたいんだが。それに、この腕輪の作り方を教えたとはどういう事だ?」
「グロウディス。俺は……その腕輪を見て記憶が完全に戻ったみたいや。」
クレイはそう言うと下を向き頭の中で色々と整理し、グロウディス達を見ると話し出した。
「俺の名前はクレイ・マルス。仲間達からはクレイと呼ばれとった。そして……。」
そうクレイは約2年前。現在結界の城と呼ばれているシェルズ城で何者かにより召喚されていた。
そして、クレイ・マルスの本名は、
そして、数ヶ月シェルズ城の者達と行動を共にしていたが、たまたまニックに用があり探している時に、アルフレッドの部屋から話し声がし、自分の事とこれから行おうとしている事を話していた。
クレイは、アルフレッド達から勇者としてこの世界を救って欲しいと言われその言葉を信じていた。だが、アルフレッド達に騙され利用されていた事を知り、自分はここにいてはいけないと思い城から逃げる決心をした。
いつもドルマニールとミスティと城を出て色々と各地を歩いていたので、その時を狙う事にしそれを実行に移す日が来た。ブラックレギオンの何処かに革命派を名乗る者達のアジトがあるという事が分かり調査の為、2人と共に行く事になった。
そしてブラックレギオンの森までくると、少しここで休憩しようという事になった。クレイは、実行するならば今だと思い、持ってきた自分で調合した睡眠薬が入った苦いお茶をドルマニールとミスティに飲ませ、眠ったのを確認するとその場から逃走した。
そして、クレイは近くの洞窟に逃げ込んだ。だが、そこは革命派のアジトだった。そこでグロウディスと会い事情を話すがその言葉を信用してもらえなかった。
グロウディスはクレイがいきなり革命派のアジトに入って来た事で怪しく思い、ドルマニールとミスティと共に行動をしていた事と結界の城の事を話した事で、余計にその話を信用する事が出来なかった。
「……そして、俺はグロウディスと言い合いになって、押された拍子に岩に頭を思いっきり強打し記憶がなくなった。」
そう言うとグロウディスは申し訳なさそうな顔をし、アキリシア以外の者達は、その話を聞き驚いていた。
(なるほどね。やっぱりそうだったんだ。でも、確かあの城の者には異世界の者を召喚出来ないように術が施されていると聞いてたけど。そうなると、いったい誰が?)
アキリシアはクレイの話を聞きながら考えていた。
「なるほどな。まさか奴らが2年前に既に異世界の者を召喚していたとはな。だが、お前が異世界の者だとしてもだ。何故この腕輪の事やリュウキ達の事を知っている?」
イワノフがそう言うとクレイは下を向き、
「俺とクレイ・ディオンとは従兄弟同士で、リュウキ達とは友人や。さっきも言うたけど、俺がリュウキとシュウに腕輪の作り方を教えたんやから、勿論知っとる。」
「ん〜、いまいち理解できない。イワノフのさっきの話だと、リュウキ達は200年前に召喚されている。なのにおかしくはないか?」
「アリスティア!?今200年前って……ほな、こっちの世界と俺のおった世界とは時間の流れが違うって事か?それともたまたまリュウキ達が召喚されたんが、200年前やったって事なんか?」
クレイは考え込んでしまった。
「異世界の者が、どのようにして召喚されてくるのかは分からんが、そうなのかもな。お前がリュウキ達の事を知っているって事は、同じ時代からここにきた事になるだろう。」
グロウディスがそう言うと、シャナは腕輪の事が気になりクレイに聞いた。
「そうなると、この腕輪の事を知っているのですよね?」
「ああ。よう知っとるで。この腕輪は黒魔石の腕輪ちゅうてな、魔力を最大限にあげる事ができるんや。この腕輪は誰にでも作れるもんやない。物作りのスキルがMAXやなかったら作れん。それに、まさかと思うけど。」
クレイはそう言うと黒魔石の腕輪を持ち調べてみた。
「なるほどな。そんで、あの結界ってのは、いつ張られたんや?」
「あの書物にはリュウキ達が、結界を張ったと書かれていた。」
「そうか、あの城に結界を張る為に、この黒魔石の腕輪を作ったってわけか。それも、この腕輪には黒魔石の周りに龍の飾りが施されとる。って事は、なるほどリュウキか誰か知らんけど、ようこれを考えよったな。」
「クレイ。何が言いたい?」
「アリスティア。この腕輪は魔力を最大限にあげる他に、腕輪に追加強化する事が出来るんや。この腕輪の飾りは黄色の龍で聖龍やから、この聖龍の飾りには、封印の効果があるんや。んで、今の状態は、この儀式に反応して黒く光っとる。結界を張る時にこれを使ったって事は、この腕輪は結界の鍵に間違いないやろな。」
「結界の鍵って?もしそうだとして、ディアナは何で眠りに付いてしまったんだ?」
「テリオス王子。恐らく、ディアナはこの腕輪を持っとったから、この儀式と反応して魔力を消耗したんやろうな。」
「なるほどな。だが、何故黒く光っている?」
「黒く光っとるのは多分、この儀式が、あの城の結界と関係があるからやろ。てか、この儀式をやめさせんと、このままやったらアイツらの思うがままや。」
クレイはそう言うと、様子が気になり中庭の方をみた。アリスティア達はクレイの言っている事が、部分的にしか理解出来なかったが、今はそれ以上聞いても時間に余裕がない為、その事は後でじっくり聞く事にした。
そして、グロウディスがノエルの近くに緑の髪の女性がいる事をアリスティア達に言った。
それを聞いたアリスティア達は、何が中庭で起きているのか気になり、ディアナがまだ起きる様子がなかった為、ここにはシャナとカルテットが残り、その他の者達はノエルの方に向かった。
そしてその様子をドルマニールとミスティは物陰から伺っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます