89話〜結界の城と黒宝石の腕輪

 ここは名もなき城。中庭が見える通路にアリスティア達はいた。


 ディアナは未だ眠りについたまま起きる気配はなかった。


 アリスティアとシャナはディアナに付き添いながらカルテットの話に耳を傾けていた。


 カルテットはシャナとイワノフにユリーナからの伝言を伝えた。


「……じゃ、奴らは俺たちの目を欺き事を起こす為の準備を着々と進めていたと言うのか。でも誰が?」


「イワノフ。誰なのかは、分からない。でも、誰かがあの城の者達の手引きをしているとしか思えない。そうでなければ、城の周辺に結界が張られた状態では、あちら側からこちらには干渉する事は不可能なはずだ。結界の力が弱まったと言うなら話は別だけどな。」


「カルテット。俺は今まで城を見張っていたが、結界が弱まっていたようには感じなかった。」


「あのぉ。カルテットにイワノフ、先程からあの城がとか、結界が張られているとか、弱まったとか弱まっていないとか、何の話をしているのですか?」


「シャナ嬢は、まだ奥様からあの城の事は聞いていないのですね。」


「カルテット。多分お母様からその話は聞いていないと思います。」


「なるほど。まだ奥様は話す時期では無いと思い、シャナ嬢にはお話になられていなかったのですね。」


「イワノフ。いったいどういう事なの?」


「先程から、何を話している?まさかとは思うが、結界が張られている城とは、かつてシェルズ城と言われていた城の事か?」


 アリスティアがそう言うとイワノフとカルテットは驚いた。


 イワノフはアリスティアを見ながら、


「何故お前が城の名前を知っている?それに、お前はいったい何者だ?」


「私はアリスティア。デスクラウン王に仕える者。その城の事は王から直に聞いていた。」


「なるほど。お前があの黒魔のアリスティアか。だが、何故ここにお前がいる?」


「私がここにいてはおかしいのか?」


「いや、王直属の参謀とまで言われたお前がなんでここにいるのか気になっただけだ。」


「私がここにいる訳は……。」


 アリスティアはラウズハープ城内で何が起きていたのか、自分が王の命令で白き英雄と黒き覇王が強いのかを確かめに行き、その後城に戻りデスクラウンに2人の事を伝えると、シャナが遺跡の祭壇へ灰色の守護者を召喚する為に向かった事。


 そして、シャナが遺跡の祭壇に向かった後、デスクラウンが部屋から出てこなくなり、アリスティアは王の身に何が起き城や国で何が起きているのか心配になり調べている内に革命派の存在を知り、革命派のリーダーから国々で何が起きているのかを聞いた事。


 その後、シャナが召喚した灰色の守護者であるノエルがオルドパルスに捕まり、この城で魔神の生贄となろうとしている事。


 そして、自分はシャナと白き英雄のハクリュウ達と共にノエルと魔神の器になろうとしているユウを助ける為、この城にきた事を話した。


「なるほどな。だいたい今の状況を把握した。さっきのクロノアが黒き覇王として、灰色の守護者がシャナ嬢が召喚したノエル。それで白き英雄は中庭にいるって事か。」


「イワノフ。ここに眠っているデューマンの女性がそのクロノアとか言う異世界の者を召喚したのか?」


「カルテット。さっきの話の様子だとそうみたいだな。」


「クロノアか。でも、まさかな。名前が似ているだけなんだよな?黒龍の悪魔に。」


「俺も名前が似ているだけだと思うんだが。シャナ嬢、クロノアにはフルネームがあるのですか?」


「ええ、確かクロノア・マリース・ノギアだったと思います。」


 そう言うとイワノフとカルテットは驚いた。


「ま、まさか!?名前の全てが一致しないとしても、マリースの名前を取り除けば、黒龍の悪魔クロノア・ノギアと同じ名前。そして、クロノアを召喚した召喚魔導師が急に眠りについた。」


「イワノフ。まさか、このデューマンが倒れ眠りについた事とそのクロノアと何か関係があるのか?」


 カルテットがそう言うと、イワノフはディアナの服のポケットが微かに黒く光を発している事に気づきポケットの中を見ると、黒い宝石が真ん中に埋め込まれている腕輪が入っていた。


「これはいったい。何故急に腕輪が光出したんだ?」


 イワノフがそう言うと、アリスティア達も黒く光る腕輪を見ていた。

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