88話〜疑問と警戒
ここは名もなき城。クレイ・マルス達は中庭の入り口付近にいた。
月が妖しげに紅く光を発し、中庭に描かれた魔法陣を真紅に染めあげる。周辺は、生臭い血の臭いと、禍々しい空気に満ち溢れていた。
そして、グロウディスはこの異様な臭いに吐き気を覚え口を塞ぎながら、クレイ達を静止させると入り口付近の通路側の壁から、そっと中庭を覗いてみた。
「ん?何か様子が変だ。」
グロウディスがそう言うと、クレイ達も臭いに耐えられず口を塞ぎながら、そっと中庭を覗いてみた。
「確かに変だね。中央の台座からオルドパルスが魔神の水晶を持ち、魔神の器の男の方に向かってる。確か名前はユウだったかな?」
アキリシアがそう言うと、クレイはユウの方をみて驚き、
「ちょっと待てや!ユウ……そうか、あいつもこの世界に。記憶がなかったから、その名前を聞いても分からんかった。それにあのノエルさんがユウの妹やったとはな。あの2人を何とか助けんと。」
「もしかして、クレイマルス。あのユウとか言う男の事を知っているのか?」
グロウディスがそう聞くと、
「ああ、ユウはどう思っとんのか知らんけど。俺は親友やと思っとるで。」
「なるほどな。ん〜、カプリアも水晶を持って生贄になろうとしてるノエル様の方に向かっている。ん?ちょっと待て!ノエル様の側にいる緑の髪の女性は誰だ?」
テリオスがそう言うと、クレイ達は緑の髪の女性をみた。
「確かに誰だろうね?敵には見えないけど。」
そう言うとアキリシアは首を傾げ考えていた。そしてグロウディス達は、その緑の髪の女性……いや、ミリアを見て不思議に思い確認するため中庭に入り気づかれないように身を隠しながら、ミリアとノエルの方に場所を移動した。
場所は移り、ここは結界の城の地下にある部屋。月明かりが魔法陣を照らし、名もなき城での事を映し出し浮かび上がり、アルフレッドとニックは事の起こるのを待ちながら、その光景を眺め見ていた。
「ニック。あちらではずいぶんと面白い事が起こっているようだな。」
「確かにそのようですね。ただ気になる事があるのですが?」
「気になる事とはなんだ?」
「あの緑の髪の女性の事なのですが、先程までは別の姿をしておりました。ですが、どこからともなく光があの者に降り注ぎ、まるで本来の姿と入れ替わったかのように化けました。」
「うむ。確かに、普通ではあり得ない事が起きた。ニック、何も起きないとは思うが、もしもの時のために今の内に対策を考えておいた方が良いかもしれぬな。」
「はい。では、早速あの2人にそのように伝え指示を出したいと思います。」
ニックは床に描かれた魔法陣に巻物を翳すと、ドルマニールとミスティに思念を送り、緑の髪の
そして、アルフレッドとニックは事を起こすため、魔法陣に映り出されている光景を眺めながら、その時を待っていた。
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