23話〜ここに3国の召喚魔導師集う{改}

 ここはブラックレギオンの革命派のアジトの中。あれからハクリュウ達はここに辿りつき、革命派の数名と話をしていた。


 そこには革命派のリーダーであるクレイマルスがいて、グレイルーズで今おきている事を話していた。


「俺はクレイマルス。革命派のリーダーをしてる。そして、いま現在グレイルーズでは異変が起きている」


 そう言いながらその場にいる者たちを見渡し、


「それと、最近わけあって知り合った者が、何者かにさらわれた。その件に大臣が絡んでいるのではと仲間に言われたが、どうも足どりがつかめない」


「俺はハクリュウ。それで聞きたいんだけど、ホワイトガーデン国でも異変が起き、それを解決する為にここに来た」


 ハクリュウはそう言いながらクレイマルスを見て、


「今の話を聞く限りだと、グレイルーズ国でも異変が起きている。それに……」


 そう話していると突然、扉が開き3人が飛び込んできて、その場にいた者すべてが驚き戦闘体勢に入った。


 しかし、革命派の者たちは見慣れた2人だったので、すぐに戦闘体勢を解いた。


 するとハクリュウは1人の女性を見て首を傾げた。


 そしてハウベルトが息を切らせながら、


「はぁはぉ、ごめんごめん。少し慌てていて、急ぎ皆に報告があってきた。って言うか見慣れない者たちもいるようだが?」


「何かあったのか?……その前に、そっちはどうだったんだ。成功したのか?」


「一応、召喚は成功した。このとおり異世界の勇者をちゃんと召喚してきた」


 ディアナはクロノアを指差した。


 そしてクロノアは、ある視線に気づいた。


 そうハクリュウがクロノアを見ていたのだ。


 そして2人は同時に、


「あー!?何で、お前がここに!!」


「えー!?何で、ハクリュウがここにいるのよ!」


「なるほど、2人とも知り合いだったとはな。どういった知り合いなんだ?」


 グロウディスにそう言われ、ハクリュウは少し不機嫌な顔になり、


「知り合いと言うか。こいつは何時も俺に喧嘩ふっかけてくる女で……って言うか、おいクマ!?何で、お前がここにいる?」


「……クマって!あのね。変な所で略すなって、前から言ってるでしょ!!」


「クロノア・マリース・ノギアって名前、すごく言いづらいんだから仕方ないだろう。それにクマみたいに、いきなり襲ってくるしな!!」


 クロノアは我慢をしていたのだが、流石に耐えきれなくなった。


「あっそう。こっちの世界では、少しは大人しくしていようかなって思ってたんだけど。そっちがそのつもりなら、ハクリュウ覚悟は出来てるわよね?」


 そう言われハクリュウは少し後退りして、


「おい!まさかとは思うけど……こんな狭い所で魔法なんて使わないよな!?」


 クロノアはニヤッと笑い、


「私がハクリュウを目の前にして、今まで一度も戦わなかった事はないと思うんだけど」


 そう言うと杖を手に持ち構えた。


 それを見てシエルは慌てて、ハクリュウとクロノアを止める為、割って入った。


「お辞めください!クロノア様。そしてハクリュウ様も。今聞いていましたが、どちらが悪いというわけではないと思います」


 そう言いシエルは、いつものクールな表情のまま、クロノアに視線を向けると、


「それに、何がお二人の間にあったかは知りません。しかし、ハクリュウ様も女性に対し、クマは良くないと思います。せめてマックロの方が良いのでは?」


「……え、えっとねー。ちょ、ちょっと!ハクリュウ。この人、本気で言ってるの?マックロって……」


 そう言いながらクロノアはシエルを睨みつけ、


「ふっふっふっ、わはははは……ってか笑えない!ハクリュウ。頭にきたんだけど。こいつマックロならぬ真っ黒こげにしていいかな?」


 そう言うとハクリュウは慌てて、


「待て!はやまるな!!ここは仕方ない。俺が謝るから。それに、今はこんなことをしている場合じゃないはずだし」


 そう言うとクロノアとシエルは頷き、その場を回避した。



  そのやりとりが終わるのを確認した後、クレイマルスはさっきの話の続きを始めた。


「先程も話したのだが、グレイルーズでも異変は起こっている。そして仲間が拐われた」


「なるほど。その事と、この異変とが関係しているのか?」


「分からない。何で拐われたのかも。仲間の1人が言うには、大臣のオルドパルスが関係しているかもしれないと。だがそうだとし、下手に手が出せない」


「確かにそうですね。大臣ともなると間違いではすみませんですし」


「ん〜、そうなると、その拐われた仲間とはどんな奴なんだ?」


「そうだなぁ。あの子は、俺から見れば異世界から来た天使か女神。とても可愛い女性ですよ!」


「今、異世界からって言ったよね?」


「ああ、もう1人の仲間が異世界から召喚したらしいが、本当に可愛い人です!」


「3人目も、この世界に来てる。そして、その人は女性で可愛い感じ。んー、ほかに特徴はないのか?」


「そうだなぁ〜。あるとすれば、喋り方が独特で、にゃをつけて話していた。後は……あっ!確か、この世界では珍しい職だったはずだ」


「珍しい職って?」


「確か、アサシンとか言っていた気がする」


「見た目が可愛く子供みたいで、にゃをつける特徴的な喋り方で、職がアサシンって……ハクリュウ!何か、アイツの事を思い出したんだけど……」


「やっぱり。クロノアもそう思うか?」


「クレイマルスさん。その拐われた仲間の名前は何て言ってました?」


「名前は確か、ノエルさんと言ってたが。もしかして知り合いなのか?」


 ハクリュウとクロノアの顔色が変わった。


「ちょ、ちょっと待て!ノエルまでもが、この世界に来てるって……どういう事なんだ?」


「その前に、ノエルが捕まるって!どんだけ油断してたのよ。それとも、かなりの相手に捕まったって事なの?」


「ノエルは、ああ見えても油断するような奴じゃない。それに、相手が1人なら強い相手でも何とか勝てる。それだけの装備や防御力はあったはずだしな」


「となると……1人ではなく、多人数だった可能性が高いかも。ノエルは前から、多人数が相手だと負ける事が多かったし」


「確かにそうだな。んー、何とか助けたいけど。俺はノエルが苦手なんだよなぁ。まさか、あいつまでこっちに来てるとはな」


「私も、ノエルは嫌いじゃないけど。苦手というか会いたくなかった」


「クロノア様にも、苦手な人がいたとは……。なぁハウベルト」


「そうだなディアナ。これはもしかしたら、クロノア様のいつもと違う姿が見れるかもしれないな!」



 グロウディスはその話を聞きながら少し考えた後、


「色々と考えてみたのだが。ここは皆の話を整理したいと思う」


 そう言うと皆は頷き、グロウディスは話し始めた。


「この世界の異変についてだが。ホワイトガーデンでは、シエルの話だと国王が予知夢らしきものをみた」


 そう言いながらシエルを見た後、ハウベルトとディアナの方に顔を向け、


「ブラックレギオンでは、城内で異変が起こり、そして仲間同士の言い争いや貴族たちがおかしくなり始めた。国王もまた身体の不調を……」


 グロウディス腕を組み下から覗き込むようにクレイマルスを見ると、


「そうなると、クレイマルス。グレイルーズではどうだったんだ?」


「色々と調べてみた。確かに異変は確実に起こっていた。さっき言った仲間が城に詳しい奴で、色々と聞いたのだが、国王が姿を現さなくなったらしい」


 そう言い、クレイマルスは身振り手振りで話し始めた。


「ある街では、あろう事か町長と支配人がグルになり女性をはずかしめ、挙句の果てに精神的、肉体的にも痛めつけ死にいたらしめるという事が起きていた」


「なんって事だ!そんな事が……」


「ああグロウディス俺もいまだに信じられない」


 クレイマルスはそう言いグロウディスを見た後、その話の続きを再開した。


「これはグレイルーズ国の貴族に使える従者からの情報なんだが。貴族の間では変な遊びが流行っているらしい」


 一呼吸おき、


「その遊びとは、自分の好みの強い女性同士を闘わせ、その様子をみて楽しんでいるという事らしい。その事と関係があるのかは分からないが」


 クレイマルスは唇を震わせ、段々と口調がきつくなり、


「これは、グレイルーズ国内だけではないのかもしれない。強くてステキな女性たちが、各地で突然失踪している」


 クレイマルスは下を向き一点を見つめ、


「俺はノエルさんもそれに巻き込まれたのではないかと思っている」


「確かにおかしい。俺も、街や村を調べて歩いてみた。外見は確かに平和そのものだったが、何かギクシャク感があったように感じた」


 グロウディスは思い出しながら、


「そして、あってはいけない事に遭遇した。それは本来なら見つかれば処罰されてもおかしくない事だ!」


「それはどういう事なのですか?」


「シエル。それは、ある辺境の名もなき土地に奴隷たちがいて、穴を掘らされ、何かの建物を作らされていたりと、重労働をさせられていた」


「ま、まさか!奴隷など信じられません。もしそれが真実ならば、その者を処罰しなければならないのでは?なぜ国はそれに気づけずにいたのでしょうか?」


「これは俺の推測に過ぎない。こんな芸当ができる者。そう考えると、どこかの国の王以外の人物で、それに近い者の仕業と考えられる」


「グロウディス。俺が、さっき城内に詳しい仲間がいるって言ったが、そいつがこんな事を言っていた」


 クレイマルスはグロウディスに視線を向け、


「城内では国王派と大臣派に分かれ、主に貴族や各街や村などのお偉いさんが大臣派につき、国王派には城内の兵士や騎士や、その他の者などがついている」


 その場にいる者たちを見まわすと、


「元々が国王自体もデスクラウンという名前の割には争い事を好まず。どちらかと言えばゲームなどが好きらしい。それにかなりお人好しとも聞いている」


「クレイマルス。今の大臣の様子はどうなんだ?」


 グロウディスはそう言いクレイマルスをみた。


「仲間の話だと、何を考えているか分からないらしい」


「そうか。この一件にその大臣が関わっている可能性は高いな。だが、何のためにこんな事をしようとしてるかだ。そうなると、もう少し調べる必要があるな」


「なぁシエル。俺が召喚された理由って、確か王様の予知夢なんだよな?」


「はい!王みずから私に、そう言いました。それが何か?」


「よく考えて見たんだけど。何で王様は、シエルだけにそれを頼んだのか?」


「その事については、私にもよく分からないのですが。何故か私だけにその事を……」


 そう言いシエルは皆から視線を逸らした。


「そうなのか。……それと前から少し気になってたんだけど」


 ハクリュウは真剣な表情で、


「前に召喚された奴らってどうなったのか?各国の王となったのか?それとも王となる者を支えてきたのか?もう一つは ……」


【1、国同士で起きた争い事は、国王同士で話し合いをすべし。話し合いをしても、解決しない場合は、コロシアム形式にすべし。これはあくまで重要と思われた場合のみ。

 2、各国は、お互い交流を図る為、年何回かの祭りや何らかのイベントをすべし。

 3、国民は、奴隷や差別および、貧困を無くす為、国の政策に力を尽くすべし。

 4、そしてみんな仲良くするべし。】


「…… って言う規則。俺ならこの規則、絶対に無理があって全部は守れない」


 そう言いハクリュウはグロウディスを見ると、


「人と人が仲良くするのは当たり前の事だし、規則で縛られるものでもない。規則は大切だけど、こんな規則だと間違った方向へと進むんじゃないのか?」


 ハクリュウがそう言うと、グロウディスは豪快に笑った後、


「ハクリュウ。お前から見るとそう見えるのか?確かに規則は大切だ!お前の言う通り間違った規則は、おかしな方向に進んで行く」


 そう言うとグロウディスは、各国の城がある方角を順に見た後、


「それと前の3人の異世界の勇者は王となった。その後この国にふさわしい者を王にしたらしいが、その後の足取りは不明らしい」


「ねぇ、ディアナにハウベルト。確か私が召喚された理由って、王様の体調の変化と城内の異変に気が付いたからだったんだよね?」


「ああ。あの日あたしが、いつものように王に会いに行くと、いつになく顔色が悪くなっていた」


 そう言いながら、バブルスロック城がある方を向くと、


「そして前から少しずつ城内の者たちや中の雰囲気もおかしくなってきていた」


 ディアナはグロウディス見た後、ハウベルトに視線を向け、


「それで色々と調べている時にグロウディスと出会い相談し、王直属の魔法騎士団団長である幼馴染のハウベルトに頼み、許可を得てクロノア様を召喚した」


「そうだったよね。それとね。私から見たこの世界なんだけど」


 そう言いながらクロノアはその場にいる者たちを順に見ると、


「確かに、外見は仲良くしてますって感じだけど、それって本当に仲がいいって言えるのかな?」


 クロノアはハクリュウに視線を向け、


「本当に仲がいいって言うのは、どんな事でも言いあえて喧嘩してもまた仲直り出来て分かり合え、その人の嫌な所までうけとめられるぐらいに」


 そう言うとクロノアは微かに笑みを見せ、


「……だから私は全員とは仲良くなれないと思う。でも場合によっては、ある程度なら変わろうとするかもだけどね」


 ハウベルトの方に顔を向けると、


「ハクリュウが言うように、これを規則で縛るのはおかしいし、絶対に無理が出ると思うよ」


「確かに、そうかもしれない。だが、俺たちの判断で規則を変える事など出来ないしな」


「それと先程、城の真上に暗雲が立ち込められ、手前の橋の辺りからも、何らかの闇の結界らしきものが張られていました」


「ディアナ。なるほど、ブラックレギオンでも同じ事が起こっていたと」


「クレイマルス。グレイルーズでも同じ事が起きてる可能性は高いな」


「恐らくは……そう言えば、さっき言った仲間が城の様子を見に行くと言っていたが」


 クレイマルスがそう言った直後。外で、ドカ〜〜〜ン!!と何かが落ちたような激しい音がし、皆は慌てて洞窟の外に出た。




 洞窟の外に出た者たちは、その状況を目を丸くして見ていた。


 そこにはクレイマルスにとっては見慣れた2人が着地に失敗し倒れていた。


 そしてクレイマルスはそれを見て近寄り、


「おいおい、アリスティアにシャナ。何があった?それにしても、良くここが分かったな?」


「あっ!?クレイマルスさん良かった。と言うかアリスティア!どいてくれませんか?重いのですが……」


「あっ!すまない。だがな、こうなったのもシャナが悪いんだろう。召喚獣に乗って、クレイマルスを探すって言ったから、こうなったんじゃないか!」


「結果的には、召喚獣の力で探す事が出来たのも事実では?」


 そう言っていると、ハクリュウとクロノアはアリスティアをみて、


「あっ!?確かお前は、俺を襲った女⁉︎」


「あの時の女!カジノで、金がなくなったんだから返してよね!!」


 そう言ってからクロノアは杖を構えた。


 それをみてアリスティアは、


「すまない!あの時はクロノア、お前の力が知りたかった。それにハクリュウ、お前の力も知りたかっただけだ」


 アリスティアはそう言いながら立ち上がり、


「その上で異世界の者を召喚するかどうか決めようと思っていたからな」


 そう言うとハクリュウは少し不思議そうに、


「ちょっと待てグレイルーズでは、その時はノエルは、まだ召喚してなかったのか?」


「何故、貴様がノエル様の事を知っている?」


「ノエルが召喚されたことは、クレイマルスさんから聞いた」


「それに、ノエルは私とハクリュウと同じ世界から来て知り合いなの」


「なるほど、それで知っていたという訳か」


 そう言うとアリスティアは更に話し始めた。


「話を戻すが、今の国の現状は国の内政が悪化し、城の者たちの様子もおかしくなり、貴族の間では変な遊びが流行っていると聞く」


「グレイルーズでもそんな事がな」


 そうグロウディスが言うとアリスティアは頷き、


「ああ。街や村も見てきたが、やはり以前に比べ貧しい者たちが増えてきていた」


「そうなのですね。ホワイトでもそうなのでしょうか?」


「すまない。流石にホワイトの事は分からない。……それを何とかしたいと思っているが、国の者たちや国王も出来る事なら争わずにすめばと思っている」


「なるほどな」


 そう言いグロウディスは腕を組みながらアリスティアを見ていた。


「そして王は何故か他国の異変も察知していた」


 アリスティアはハクリュウとクロノアを見ると、


「私たちが異世界の者を召喚するかどうか悩んでいた理由は、いま国が抱えている問題に対し、異世界の者を召喚してまでなす事なのかと思案していたからだ」


 そう言い一呼吸すると、


「その事で、恐らくはホワイトとブラックは異世界の者を召喚するかもしれないと予想し、私が2つの国を監視するように命じられたというわけだ」


 ハクリュウとクロノアの順に視線を向け、


「そして襲ったのも実力を知るためだった。本当にすまなかった」


 そして、ハクリュウとクロノアは頷いた後、皆はアジトの中に入って行った。

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