第21話 麗しの慶子さんと運命のデート その①

 …僕の子供時代を振り返ると、小学生までの期間は、いろんな人たちに愛されて育ち、王子様のように幸せだったと言えますが、中学生以降は挫折を味わうことになりました。

 …何しろそれまでは基本的にずっと周りの女の人にチヤホヤされて来たので、僕はいつの間にか「世の中の女性はみんな自分に優しくしてくれる 」ものと思っていたのです。

 …その後僕は松戸市立第6中学校という地元の学校に普通に進み、入学して間もない頃、クラスメイトの女子とちょっと雑談した時にそれは起こりました。

「えっ?君の家も北松戸駅の方なんだ!…じゃあ今日から僕と一緒に帰ろうよ!」

 僕は何気なく机が近かった一人の女子との会話でそう言いました。

 ところが相手の反応は全く予想外のものでした。

「えぇっ !? ちょっと!…何で私があんたと一緒に帰らなきゃいけないの?」

「!…………!?」

 僕は呆然としました。

 自分では別に変なことを言ったつもりは無いし、どうして彼女がそんな尖ったことを言うのか全く理解出来なかったのです。

 …要するにこのときの僕はまだ全くのコドモ王子で、男子よりも一足早く大人びる思春期の女子の気持ちをまるで分かっていなかったのです。  

 さらに彼女は仲間の女子たちに、

「私、森緒君に今日から一緒に帰ろうぜ!って強引に誘われちゃって…ちょっと困ってるんだ~!」

 などと話し、僕はいつの間にか何だか女子の敵のような胡散臭い男、といった見方をされるようになってしまったのです。


 …という訳で僕は中学生になって突然、理解出来ない挫折を味わい、孤独感にさいなまれたのでした。

 家に帰っても、以前のように母親の店を手伝う住み込みで働いていた家族同然のお姉ちゃんはすでに居なくなっていました。

 …まるで手のひら返しのように、僕は一転して女性に恐怖を感じて悩む男になって行ったのです。

 しかし、もちろんクラスの中には可愛い女の子もいて、後になって人並みに胸がときめいたりといったこともありましたが、結局のところ異性に対する恐怖感を克服出来ず、僕はついに中学でも高校に入ってからも、女子と仲良く交際することも、彼女を作ることも出来ないまま終わったのでした。


 高校を卒業して働くようになると、さすがにこのままじゃいけない、人並みに女性と付き合いたい!と思いました。…そんな気持ちに焦りを覚えてきた時、僕に大きなチャンスが巡って来たのです。

 当時僕の友人K君の彼女だったC子さんから、

「森緒君は付き合ってる人はいないの?…じゃあ私の友だちを紹介してあげるよ!逢ってみたら?」

 という言葉をもらったのでした。

 …そのC子さんの友だちとは、僕と同い年の慶子さんという娘で、松戸市の中ではかなり由緒あるお宅のお嬢さんということでした。

 とにもかくにも、そんな訳で僕はついに生まれて初めて、本格的な異性とのデートをすることになったのです。

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