第20話 晴れの結婚披露宴の後で…封印された話 (後編)

 …という訳で森緒家の一団は上野アメ横の真ん中でしばらくの間ガックリとうなだれていましたが、やがてフミが顔を上げて言いました。

「…とにかく、アメ横なんかで茫然としてたってしょうが無いよ!大きな通りに出ればみんなで入れるお店があるかも知れないから、とにかくここから表通りに移動しよう !! 」

 膝の痛みをこらえて今度はフミが先頭になり、一団はまたよろよろと歩き出しました。


 アメ横から左手の路地を抜けて京成上野駅の方に出ると、大通りの向こう側に中華料理のお店が見えました。

 店舗の入り口脇には、「大小御宴会承ります」と立て看板が出ています。

「お父さん!もうあの店でいいよ!御宴会OKって看板も出てるし、あそこにしよう !! 」

 フミは安堵の表情を浮かべながらそう言って、通りを渡るとずんずんとお店の中に入って行きました。


「…それでは、お席はお二階でございます!」

 ぞろぞろとみんなで店内に入ると、間もなく店員さんに案内されて私たちは宴席場への階段を上がります。

「いや~!お店が見つかって良かったねぇ!」

「私はもうてっきり良く知らない東京の街中でみんな迷子になったのかと思ったよ~!」

 フミと私の後ろを安堵の言葉を口にしながら叔父さん叔母さんたちが続きます。

 ところが !! …

「あれっ !? 森緒さん方もこちらだったんですか?」

 宴席場の一角には先客がいて、しかもそれは何と新婦マキ側親族一行の方々だったのです !!

 フミと私は目玉が飛び出そうになるほどビックリしましたが、声をかけてきたマキの叔父さんに不自然な笑顔を返しながら、

「えっ !?…えぇまぁ!」

 と曖昧に言いました。…私はフミに小声で、

「マズイよ!このまま二階に上がると、俺たちが何のあても無くさまよった果てにここに来たのがバレちゃうぜ !! 」

 と言うと、フミも大きく頷きながら、店員さんに、

「悪いけど、二階以外に席を用意出来ないかしら…」

 とこっそり頼んだのでした。


 結局私たちはお店に無理を言って地下一階にこじんまりとした席を作ってもらい、マキ側の方々には

「すみません、私たちの宴席は地下一階だったみたいなので、下に失礼します!皆さんご機嫌よう、それでは!」

 と挨拶して逃げるように階段を降りて行ったのでした。


「はぁぁぁ…!ビックリしたぁ !! 」

 フミと私は地下の席に着くと思わずため息をつき、お茶を頂いて飲みました。

 とりあえずこちらも二次会は開始となり、サダジと叔父さんらはお酒を飲んでさっさとご機嫌よろしく盛り上がり、やれやれと思っていると、途中で二階のマキの親族の方から何と高級吟醸酒の差し入れを頂いてサダジは単純に大喜びしたのでした。

 そして笑顔で差し入れ酒を旨そうに飲むサダジの隣で麻婆豆腐を不機嫌そうに食べるフミのこめかみには、しっかりとピキピキマークが浮かび上がっていたのでした…。



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