第14話 中田君大活躍!

 …神奈川県丹沢山系の名峰、大山には庶民の信仰も厚い阿夫利神社があり、山裾から続く参道には土産物屋や門前食堂などが並んでいました。

 ゴールデンウィークの連休中とあって今日はたくさんの観光客や参拝客が行き交い、お店はどこも忙しそうな中、テントや寝袋を背負った私たちは参道ではちょっと目立つ存在です。


 人混みの参道を抜けると、大山の中腹まで上がるケーブルカーの駅がありました。

「…もちろんみんなケーブルカーなんか乗らずに登山道を歩いて行くんだよな !? 」

 テントを背負っている中田君が何故か張り切ってそう言いました。

「いや、登山道は中田君に任せて僕らはケーブルカーで先に上がって待ってるよ!…」

 私と池戸君はあっさりそう言ってケーブルカー乗り場にスタスタと向かいます。

「君たちには根性や挑戦という気持ちは無いのかっ !? 」

 さらに中田君が言いましたが、

「無いも~ん !! 」

 即答の私と池戸君でした。


 …結局四人はケーブルカーでカタカタと山の中腹に上がり、観光客の人々とともに下車すると、そこには大山阿夫利神社本殿がありました。

 私たちが登山の無事を祈って参拝すると、

「さぁ、行くぜっみんな !! 」

 なぜだか1人テンションの高い中田君を先頭に、四人は山頂目指して木々の中の登山道を歩き始めました。

 …阿夫利神社までは多くの観光客が訪れていましたが、山頂に向かう登山道にまで足を向ける者は少なくて、新緑の木立ちの中は静かに心地良い風が流れていました。

 …やる気満々ガッツを見せる元陸上部の中田君と、元々根性無しのへよ~ん男私と池戸君の歩速の差を、金堂君が途中休憩などで調整しながら登って、標高1,252メートルの山頂には夕方前に到着しました。

 …前回、夜中に登ったときには山頂は狭い場所だと思っていましたが、今回明るい中で見回すと、丸い丘みたいな予想外に広々した感じがしました。


 下界の湘南エリアの景色を眺めて山頂の風に吹かれ、しばらく休むと男たちは山頂の地にテントを張りました。

「…陽が落ちて夜になるときっとまた寒くなるから、今のうちに焚き火用の薪集めをしておこうぜ!」

 …テント設営が落ち着くと、金堂君がそう言って四人はそれぞれ薪集めに散りました。

 …しかし前回苦労した焚き木集めは今回も同様になかなか火持ちしそうな大きな枝木などはそうそう山頂付近には落ちていないのでした。

 …そうしてみんなが薪集めに苦労する中、突然中田君が、

「薪ってこのくらい有れば足りるのか?」

 と言って、山頂下の木立ちの中から出て来ました。

 見ると、その腕の中に大きな板材を抱えています。

 他の3人が驚きを隠せずにいると、

「これで足りなきゃ、まだ持って来るぜ!」

 中田君の力強い言葉にみんなは思わず称賛の声を上げたのでした。

「スゴイじゃないか、中田君!キミは素晴らしい!キングオブ薪調達王 (イン大山) だ~っ !! 」


 …という訳で歓喜にわく大山山頂を、だんだんと茜色に染めて陽は落ちて行き、男たちはこれからいよいよキャンプファイヤーの夜を迎えようとしていたのでした…。


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