第15話 驚愕 !! 薪調達の真実

 …前回と違って今回の男たちの山頂焚き火は贅沢でした。

 何より中田君の活躍による豊富な薪!…そして私以外のみんなはすでに喫煙者になっていたので、各自がそれぞれマイライターを持っており、前回のような「不良品百円ライターによる不幸な爆発事故」もありませんでした。

 …頭上に星空、眼下には湘南の夜景を眺めながら男たちはリッチな焚き火にあたりました。

「…いや~!良いねぇ、贅沢な焚き火 !! 」

「薪を探し回る苦労が無いってのが嬉しいぜ!」

「…こんなに楽チンなキャンプファイヤーをして寛げるんなら、缶ビールとか持って来れば良かったねぇ!」

 …みんなそれぞれ炎の温もりにあたりながら幸せムードの会話をしていました。

 そんな中、金堂君がさりげなくも当然の質問を口にしました。

「ところで中田さぁ、こんなに良い薪…っていうか板材をどこから見つけて来たんだい?」

 すると中田君はニヤリと笑って、

「フフン!…この焚き木は俺がみんなの幸せのために探し当てて持って来たんだ!感謝しろよな!…まぁ見つけた場所は朝になったら案内するぜ」

 と、ドヤ顔全開で言いました。


 惜しみ無く薪板をつぎ込んで赤く大きく燃える炎は夜の星空を揺らめかせ、それを見上げる男たちの瞳にはスルッと一筋の流れ星が映ったのでした。

 …しかし山頂は当然のことながら全く何も無いところなので、幸せな焚き火に暖まった後は四人に、昼間荷物を背負って登って来たその疲労感がじわじわと襲ってきたのでした。

 …結局ほかにする事も無いので、男たちは焚き火を消してテントに入ると寝袋にくるまりその晩は早めに眠りにつきました。


 …翌朝、山鳥のさえずりで目覚めると、テントの外はすっかり明るくなっていました。

 男たちはのそのそと起きて外に出ると、湘南の空へ上がり始めた太陽に向かって大きく伸びをしました。

 そして爽やかな朝の空気で深呼吸した後、四人で山頂周りを散歩しに行きました。

 …てぷてぷと歩くと、山頂のすぐ脇の一段低い木立ちの中には、大山阿夫利神社の奥社が静寂の緑葉の中にひっそりとたたずんでいました。

 中腹にある阿夫利神社本殿に比べるとこじんまりした古い社ですが、いかにもこの信仰の山を鎮める厳かなオーラが感じられるところでした。

「…俺が昨日板材を調達したのはここだよ!」

 中田君が唐突に神社を指して言いました。

「えっ?」

 他の3人が驚いて辺りを見回しましたが、社の周囲には落ちている木材や板などはありません。

「あっ !? 」

 すると今度は金堂君が突然声を上げました。

 神社の両脇と裏側の三方は木杭に長板を横に打ち付けた柵で囲ってあるのですが、よく見ると右側の柵板が一部欠けています。

「…中田っ !! まさかお前…いくら何でもこれは罰当たり行為なんじゃ…?」

 愕然とする3人に対して中田君は、

「昨夜は山の神様のおかげで暖かい焚き火が出来て良かったぜ!…罰当たり?それなら楽々ぬくぬく喜んだみんなだって同罪じゃん!」

 神も仏もぶっ飛ばして不敵に笑って言い放ったのでした。


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