第13話 大山登山リベンジ!

 …中田君は金堂君の友だちで、中学生の頃は2人とも陸上部で中距離走をやっていました。

 その後、私たちは高校で一緒になりましたが、高校卒業後は私だけ実家の商売を親と共に営み、彼らは大学生になりました。

 …21歳の春を過ぎてゴールデンウィークの連休が近付いて来た時、仕事中の私に金堂君から電話が入りました。

「…高校の時登った、あの大山にまた行こうぜ!」

 奴は突然力強くそう言って来たのです。…思い返せば、あの時は奴だけ夜明けの山頂でひとり眠ってしまい、その結果風邪から肺炎になって学校をしばらく休む結果になったのでした。

「…あの、君がひどい目にあった大山に?…リベンジ登山てことか !? 」

 電話口で私が訊くと、奴はキッパリと言いました。

「その通り!…今回は俺たちももう子供じゃないし、ちゃんと道具も準備して行こうぜ!」

「…それは良いけど、メンバーは?」

 私が言うと、

「今回は中田を連れて行こうと思うんだ!…奴は俺とは中学の頃からの友だちだからね、良いかな?」

 金堂君が答えました。

「別にかまわないよ!…じゃあ前回と同じくあと1人加えて四人で行こう!」

 私がそう言って、ここに金堂君のための「大山リベンジ登山プロジェクト」が始動したのでした。


 その後、私の旅行仲間で同級生の池戸君をメンバーに加えて、男たち四人は登山の準備にかかりました。

 前回、5年前の私たちはみんな高校2年生…あの時はほとんど手ぶらのままで夜行登山でしたが、今回はきちんと寝袋やテントを用意して持って行くことにしました。

 また、あの時の金堂君の反省を踏まえて正しく日中に登り、夜は山頂にテントを張ってキャンプする計画となりました。


 そしてスルスルと日にちは過ぎて、いよいよゴールデンウィーク5月頭の出発の朝となり、男たち四人は松戸駅のホームに集結したのです。

「中田で~す!よろしくっ !! 」

 …今回張り切って登場した男は181センチの痩せ型長身、顔も面長で眼鏡をかけた、そう言われると何となく中距離ランナーのようにも見える奴でした。

 一方の池戸君は中背でややふっくらした音楽を友とする男で、当時大学の吹奏楽部ではトランペット奏者をしていました。

 ちなみに言うと血液型は中田君がB型、池戸君はA型、金堂君AB型で私はO型と、キャラが全く別々な四人といったチームになりました。


「…ところでその大山って、高いの?」

 行きの電車の中で中田君が私に訊いてきたので、

「標高1,250メートルくらいだね…」

 と答えると、

「何だ、大したこと無いじゃん!」

 と言ったので、

「と、山をナメて後で倒れてひどい目にあった奴もいたよ ! 」

 と応えると、中田君は笑いながら、

「えぇっ !? そりゃあ何て間抜けな奴なんだ !! …なっ、金堂!」

 と、金堂君を横目に見て言いました。


 …という訳で男たちはじゃれ合いつつも前回同様に新宿駅から小田急線に乗り、さらに伊勢原駅からバスに乗り継ぎ、お昼前にいよいよ大山の麓に到着しました。

 前回は夜中でしたが、今日の大山は青空の下、鮮やかな新緑萌える山容をそびやかし、たくさんの観光客で賑わっていました。

 …そして四人の男たちは顔を上げ、三角に尖った山頂を見つめてその目に闘志を燃やしていたのです。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る