第3話 金堂君はクリスチャン

 …僕が小学生時代の放課後、2年くらいの間、松戸の珠算学校へ通っていたことがあり、そこで知り合ったのが金堂君でした。

 珠算学校の授業が終わると、僕はそこから歩いて5~6分ほどのところの停留所まで歩いて、バスに乗って帰宅というパターンでしたが、たまたま金堂君の自宅がそのバス停の先にあった関係で、彼と2人で会話しながらその数分の間、帰り道を一緒に歩きました。

 当時…たぶん小学校5年生くらいだったと記憶していますが、金堂君は身体の成長が早い方で背も高かったので初めは中学生かとも思ったくらいだったのですが、話をしたら何と僕と同学年なので驚きました。

 それぞれの小学校の学級のことや友達のたわいない話などしながら帰る…まぁその程度の付き合いだったので特に仲良しという訳でもなく、通う小学校やその後の中学校も違ったので、僕が珠算学校に行かなくなると会うことも無くなりました。


 ところが高校に入学したら偶然彼と同じクラスになって再会したのです。

「森緒君じゃないか~!」

 教室で唐突に金堂君が声をかけて来ました。

「おぉっ !? 金堂君、久しぶりだね!…高校で同じクラスとは奇遇だなぁ」

 驚いた僕が言葉を返すと、

「あ~良かった、高校に親しい友だちが居て!」

 彼は笑顔で言いました。

( …親しい友だち? )

 僕は彼の言葉に若干の認識のズレを感じましたが、敢えて否定するほどの問題でもないかと思ったので曖昧な顔で流しました。


 …それから学校生活が始まると、彼はいろいろと性分を発揮するようになりました。

 金堂君は社交的で好奇心が強く新し物好きで、先生や職員などの大人たちとも如才なく会話が出来る男でした。

 そんな訳で僕たちのクラスの学級委員長にも選ばれたのでした。

 …そして僕ともよく一緒に遊びました。

 彼の性格のミーハーな部分が僕には無いので最初は戸惑いを覚えましたが、逆に自分に無いものを持った男に面白さも感じていたのです。

 僕はどちらかというと田舎好きの子で、高校入学後は週末に一人電車に乗って関東近郊の田舎にふらふら日帰り旅に行くようになりました。

 対して彼は完全な街っ子で、人とお喋りしたり街中の美味しいお店やら話題の商業スポットなどを喜んでチェックしたりするような週末を送っていました。

 そんな高校生活の中のある日、僕は金堂君がいつもシルバーの十字架のネックレスをしていることに気が付きました。

「…あぁコレ?俺ん家みんなクリスチャンだから!」

 …それとなく尋ねたら彼はそう答えました。

 僕にはクリスチャンの生活がどういうものか全く分からないので (何となく日曜日には家族揃って教会でお祈り ? …くらいのイメージ) 、

「ふ~ん…」

 と曖昧に頷くだけでした。

 すると彼は急に、

「そうだ!今度俺ん家に遊びに来なよ!」

 と僕に言って来たのです。

 …突然の彼のお誘いに僕はちょっと戸惑いましたが、

「分かった、ありがとう!…じゃあ近いうちにお邪魔しに行くよ!…」

 と応えたのでした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る