第127話

寝溜めが目を瞑った朗読劇を夢にさせなかった、語りが組み合わさって生まれる物の運びは、音楽に回帰される、これでこれから疑うことはなくなった、一個の実例が今後を重ねさせる、身内贔屓を廃した、おもねりなき感慨だ。


気づけばクリスマスが忍び寄っている、パン屋の広場で休めばマーケットが売られている、店内で買うよりここで選んだ方が良かったのでは、何を節約してサンドイッチをチョイスしたのか、まだ今は昼だ、空は少し曇り出した、けれど寒さに震えるほどの陽気でもない。


停滞するつぶやきは、進歩なき言葉の戯れだ、前にも後にも進むことはない、夜中にふとよぎる消滅の不安は、いまだ人間らしい弱さが潜んでいることに気づかされる、あれほど居丈高に圧力をかけているのに、それでも今日は数えられない人として働き、耳を潰したくなる。


負荷をエネルギーに転回させることを忘れないように、ひどい発言が浮き草のように漂っていても、許しと笑みをどこで手に入れよう、あまりに水のない外気に取り巻かれながら、不安でしかたない声は倒れた者に繰り返し問いただす、たかが仕事だ、待てばいいのに。


声にならないぼやきが抜け落ちる、カシマシの歌詞がくだらねえとレッテルを張っている、月に語らなくても疎外感はうずくまる、この空気に自由があるのだと、両方を得られない、傍若無人を懐に入れたいなら、後ろ指をイメージに従わせなければならない。


ひとめくりずつページを進めて、ここで何冊読んだだろうか、仕事をしないという評価と引き替えに、四十は重ねたか、約五年の間に、見逃せない量だろう、他人からの目など水に浮かぶ油の汚れと一緒だ、光の加減で色は変わる、それでも定まらない、それに比べて書物は重く濃く、分厚い。


速さよりは、だるさで正確に事をなす、それから早くなればしめたものだ、昨夜の独演会は残像して、逐一と分量を肉で味わう、本物と魂はどこにあるのか、偽りを嫌いながら自分がそうしていないか、本音を中心に見定めなければならない。


すぐ金の話を持ち出す、ガス料金が上がっただけで不調のように口にする、閉じこめておくことはできやしない、我が性格の必定といえども、なんと甲斐のない優しさか、面倒に悩むよりも直ちに手を出しておく、ゆるがせのない貧しさは、一挙に爆発することはない。


忙しい時期の中心にいるはずが、盛りを越した年末の静けさに包まれている、仕事のない者は溜息だけを煩く働かせて、休むことを知らずに暇に痛めつけられている、息も白いじっとできない冬の寒さがきつく、体温も気分も凍てついている、どうやら誰も静かにできないらしい。


いい気になってつっぱるか、人付き合いの変遷は好きにどうぞ、いつまでもつかわからない聞き知りは、人の話をきくだけで好かれると勘違いしている、よけいに喋るよりはずいぶんとましか、語るのはあくまで文章だけに、口に出して誰かに話すのは、そもそもあまり得意ではない。


寒さにとける、まやかしの朝の気温だ、昨夜の天井近くの席に暖気が浮遊していたのに反して、今は冷気が地上に底流している、暗鬱な曇り空に膝から食べられて、手袋を出した意味を今夜に考える、本能も納得のかんばしりだ。


任期満了はまだ先ながら、一度きりの人生における一期間が音楽に対する肥やしを与えてくれた、成長した楽団よりも自分の耳は上達したと思えるほど、色色なレパートリーを音に表してくれた、あと一年よりも残っているとはいえ、バトンにそつはなく、そこに達するまでのシンフォニーを楽しもう。


工場へ作りに行くパーティーは、ずいぶん昔の光景をかぶらせる、この人材に見せておく為だ、それはどの時を想定してか、卑しい心は陰口を吹き出しに考える、きっと車内は楽しい話し合いになるはず、そんな昔を経て、まったく違った向きへ来てしまった。


また足下を気にする季節となった、甲に貼られた熱源は外気に吹かれて今は冷えている、耳は脳に突き刺す寒色に染まっている、とれてしまいそうだ、いよいよ来週はクリスマスか、仕事の忙しさは二週間早くしまっている、パンが売れなくなった理由もあるとはいえ、冷え込みは強くせわしない。


バナナ半本カキ一個、納豆一パックに牛肉と牛蒡の煮込み、さらにいりこに大豆とピーナッツを食べれば、開場前の体力はつぶやきを欲しがる、週末の疲れは暇な一週にすり減らず、はやくも年末帰省の楽しみが盛んに騒いでいる。


じいさんとばあさんは、等価でがに股になる、勘の悪さは身悶えして目を開く、それより先に口も開く、頭脳に関しては言及しないが、高機能に可愛らしさはない、ミスとボケがあってこそ愛嬌はにじみ出る、なによりまずかわいがられるように、なんて言葉はあいがんだ。


路面電車待ちの十分間を、ATMの部屋で待機する、特別警戒実施中の張り紙のある銀行の一区画は、こうして文章を書く今も監視されているだろうか、たとえ尋ねられてもかまわない、別段悪さするわけでもなく、冬の寒風にさらされるよりも、誤解の方がはるかにましだ。


雪と太陽が西風に交互する、吐息は排気ガスも白く透き通る空気に、北の空は淡く、東から雲がやってくる、凍える寒さは厳冬のようだ、もう年を越しような大気に足は根も張らず、そわそわと首を振りながらじたばたさせて、口を閉じる。


あきらめることが救いの処方となる、今夜の遅刻について朝に考える、全部得ようと思うなら悔しいが、特別に加えた比較をあてるなら、得なコンサートに違いない、それでも予定が早く終わって、うまく間に合えばと願いもする、もしそれが叶ったら、一つの事象を好意的に手にしたことになるだろう。


喉が少しいがらっぽかったら、まず黙ろう、すると背後から何度も聴いた、そして毎年必ず現れる歌が流れる、固定された録音のはずが、どうしてこうも再描写されるのか、成長はどこまでも続きそうで、そんな感慨を中心に周囲では、何事もない仕事が音を散発させている。

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