第125話

その時にわからなくても、後後に気づくことは多い、山上はいつも見あげて知らないように、高層ビルの得体のなさは実態がまるでつかめない、職場の上司と部下は兄弟か、いやむしろ親子か、どちらにしろ見えないところはある、だからそっとしておけばいいのに。


蠅と言えばそれまで、ひどい言い訳だ、うるさいの当て字は、週末に加速する、赤い靴で踊る情緒ではない、見えない人参をあてにうろつく、歌手が言っていた、ステージ上の力の入れ時を、一定は機械が得るのみ、人間になると、常に全力は暇において、余分だ。


晩秋に頭の動きは枯れている、フォローしている記憶はあるのに、意味を考えずにフォロワーの中のボタンを押す、変えられないデンマーク語基準に従って、削除されたアイコンにため息をついて謝る、そもそも少ない人数という好意の表れなのに、もう取り消せない。


消したインスタグラムに疲弊して、仮眠する、平日の疲れは休日の朝だけではとりきれない、ホットコーヒーにしみじみする季節だ、だいぶ角は削られただろうか、余分を省いていくのは体力がないから、自然の流れは筋肉よりも神経を使うことに長けて、そのままいつか朽ち果てる。


前半は絡め捕られた動きにまとわりつき、後半は乾いて曇りなく光る、そんな昨日は磁器に過去を照らす、何度もその場所であったように、甘く見ていた対象が波瀾のように部屋を取り巻いている、写真では作品を見通すことはできない、手に取って目で得て見て、人物史を知ることができる。


忘れ物が少ないたちではないとはいえ、水筒の運びは週に一度場所を得ない、SDカードもある、一昨日は西条柿をイスに置き忘れた、他にもあったはず、ところがより昔に目を向けると、長靴も消えたことがあった、年末に向かう慌ただしさを借りているかもしれない、基本は忘れっぽい性格だ。


穴埋めは施工される、忘れ物ゆえに、実生活を材料に表現する旨を誓うと、いやみとぼやきで創出される、会社で働く誰かにわかってもらえるだろうか、ラジオが言っていた、ペースの奪い合いが職場環境だと、ならいらない、人の上に立つよりも、マイペースの端がいい。


朝に四カ所間違えるのは、頭を邪魔する思念が沸いていたからだろう、ストレスを溜め込んでいるに違いない、そこでガス抜きさせるのは上手な手腕だ、とはいえそうはしない、言い方が辛いとしても、甘く注意すれば笑いに済まされる、緩んだ仕事場だからそうするべきかもしれないとはいえ、癖は困る。


文章を書くことは体力を要する、一日の肉体労働よりも疲労は濃く体を横倒しにする、たんに眼精の疲れかもしれないが、頭脳を働かせるカロリーは散歩よりも減るか、運動ほど心持ちの良い動きはない、二連休で心身は濁り、一日の力仕事で内臓は循環を取り戻す、偏ることはできない。


あきらめきった生活環境とはいえ、他人が旅行しているのを知ると、やはり羨ましくなる、ところが以前のように憤る妬みを覚えることはなく、分野の違いをわきまえて、現在に集中する活動が説得をつける、目的はどこにあるのか、いずれも考えつつ、本分を崩さず。


地方の規模はずいぶん物足りない、だからこそ選択肢は狭まる、迷うことは少ないとしても、新味を得るのにやはり足りない、都から引っ越してきて今になり、都会へ力を試したい意気に駆られる、とはいえ今はグローバルの時代だ、ここからでも発信できる。


球団の激動劇の数年後は、電車にまつわるストーリーだ、いつかクラシック音楽も舞台化されるだろうか、出身地の歴史は今もあまり知らないとはいえ、よその土地の方が過去を知っている、世界的に有名な都市というより、我が街の感慨だろう。


鬱陶しい誘いに考えが乱れる、きっと酒のせいとはいえ、振り返るきっかけになる、驕りは常に気をつけなければならない、何様を常に問い続けなければならない、比較よりも直視を、表現を捉えて何を得るか、気分や好みに左右されないように。


飲むよりも読みたい、読書の予定に熱燗が入るのは、どうもしっくりこない、節約が頭にあるから、一杯二杯飲むくらいなら、コースで存分に味わいたい、なぜなら量は増えるのだから、迷いはそのまま今日の働きの終わりに決める、来週も外食なのに、そんな食べてどうするのだと、端に置きつつ。


ケチるのは何の為か、目的に合わせて注ぐ為だ、なのにどうして空いた予定に顔を出さない、なぜわざわざ家にこもるのだ、こんな時こそ使わなければ、水なる時と共に、すれば酒が流れて、料理に一巻きして、快活に生命を見つめられる、そのおかげで、朝にも新しい動きが生まれたのだ。


へこみそうな眼窩はあらたな目玉を生やしそう、唾を飲み込んで寝違えた首は、痛みの物質を脳に流し込む、魔女の一撃にならない、比較にならない、生を眺望する、首の向きを維持したまま台車を動かす、油断ならないもう一発を避ける為に。


まったくもって半休を活かせていない、そう思いながら仮眠したが、夕方に気分は安らいでいる、目を落ち着ければ事は滞りなく済ませており、もう一歩の作業とはいかなかったものの、家の中はわりと整理されて、排水溝も通りよくなった。


雨が数分降った午後は、さんさんと夕陽が焼けていた、この時刻に家にいることがほぼないせいか、エレベーター待ちの地球の生まれる光景に目が開かれるみたいだ、風は吹くがそら寒くなく、ダッフルコートで首までボタンを閉じているけれど、背中は丸まらない。


平日から離れれば定型の文句から逃れられるか、変化を常に縛りつけたい、かと言って無理すれば嘘となり、大言壮語の虫の息に破壊もされない、あとすこしの自由を得られるなら、平凡な愚痴もピュアに固定できるのに、最近は類語を調べない、言い訳の言葉使いだ。


休日らしい動きを午前は過ごせなかった、太陽が眩しい秋日和も家の中で、目のかすみとひざの痛みを相手に文字を追う、昨晩の星空は自然を憧憬させた、数週間前も山の清らかさを、根源はどこにあるのか、たまには気ままに森を歩みたい。

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