第121話

他人のため息を嫌っているのに、コーヒーを飲む前に自分からそれが出る、予報知らずの雨が今朝に降り、上階からは馬鹿笑いが起きる、かすかなひろうだ、秋よりも濃いくもり空で始まり、ささいに気づけない、そんな週の半ばだ。


感情が先立ち、失敗の責任をすべて追求して、ないものを求めてクレームを続ける、人間誰しもミスを犯し、覚えていないことだってあるのだから、それを飲み込まずにくどくどしく責める、馬鹿らしい、態度まで範囲を広げてどうするのだ、普段の行動を見ろ、喋りすぎだろう。


きゅうきゅう、きゅうきゅう、そういう言葉をラジオで知った、会社に帰属しない、最低限に守る者たちか、的中する、全体主義の職場では足並みを田舎のように揃えてくる、アットホームの愛想笑いで、それぞれが違ってこそ社会なのに、逆にする漢字には、それが許されないらしい。


アクチュアリーに頭はひっかかる、なんだったか、頭は働かず明日からの三連休も予定がつかない、何にするか、先の先は考えられて、形式も思い浮かんだ気はしたものの、昼の弁当に消化された、体調のことばかり考えているから、他がどうもままにできない。


二週間ぶりの休日な気がする、朝から課題は残り、単語の引き出しはままならないが、それでも字面で埋めていく、昼のなかばで目玉の使用期限は切れたようだ、それでも今日はまだ時間が残っていて、明日明後日も休みがある、平日の重さはつきまとうが、はいつくばる。


もはや賢さには疑問しか浮かばない、頭の良さと計算高さは別の形容だ、大切な道徳心を失っていても、会社に忠実なしもべの心は守られ、他にけちをつけて牽制する、どうして思うままに他人を心配できないのだろうか、ところがその配慮を欲しがらない自分がいる。


出先に雨が降り出して、ややおももちは暗く、数日前の出勤を思い出す、先の見えない話を悩み、どのように広げていくか思うものの、広がりがない、それでも余白を前にすれば、人は何かを描きたくなる、あきらめを顔料にして、その本能だけを頼りにするか。


できそうになれば期限がくる、恨めしいと思わず、転換点とする、ゆるやかか、いそぎか、そして戻すか、目的なくただ通わせる、それでも形は生まれるらしく、そんなお駄物が予期せぬ効果を生むかもしれない、貧弱な可能性のしがみつきでも、まず楽しまなくては。


バルコニーからの景色につい誘われるものの、外気は冷涼になったせいか、膝下から寒さを感じる、伊達に張った我慢に体調を崩すよりも、早早と中に入って欲を捨てるべきだろう、覗きばかりするよりも作業は捗る、それに考え事をする目線がないなら、内に閉じこもるべきだ。


まったくつまらないまま続けて、どうにか終わりをつけたが、はたしてどうだろうか、狙いがなければアイデアもない、ただ面白そうだと思って始めれば、どこにもそれを見つけられなかった、無駄としか思えない内容に着いた、とはいえ流行についてすこしは描けたか、疑わしい作物だ。


連休明けから無言でいかれられている気がする、気のせい、と思えない経験で体は反応している、連想するのは休み前か、何もしないとどうやら厭われるらしい、焦点は他にも絞れるはずなのに、しかしそれはあくまで想像だ、口に出されなければ知ることはない。


秋は半年先まで暗くさせる、この寒さで生きることは可能だろうか、沈んでいる、この上ない陰鬱な気分で、心に明るさはないが体は元気なようだ、ところが窓を開ける開けないの戦いが起こり、めんどうくさい、ガラスの開閉になぜ思考を奪われないといけないのか、閉めてくれ。


先週の夏の装いから下降して、すでに冬の厚みだ、こんな急変化についていけないと思うものの、山を下りて半年を転換させた旅行を思うと、楽な比べものだ、とはいえただの気温ではない太陽の位置があり、それにどうも、つられているらしい。


待つ他ない、季節の変化に慣れるまで待つしかない、思念は様様に飛び散る、矛盾とは言えない煮え切らない熱さ、右目からしみる、半身は焦がれるように節に痛みを覚える、つばのむ音も偏りだけ、重さがとけない。


断行するきかいなし、くもりなき空の晴れに秋は人恋しさよりも、桜よりも気が狂う不安定な葉色だ、一日ごとに褪色してゆき、水気は去る、枝を伸ばせないとじこもりは、空気に唾を吐く、目が覚めない、すべてはすんでいるのに。


夜の金縛りは船が爆破されたのち、数年ぶりの睡眠状態は夜に固形する、秋を通り越した季節に備え、数日とはいえ早寝に体力を蓄える、思い出す様様な食中毒だ、この冷たさの中で苦しんだ不調を、今年はやけに思い返される。


二度目の読書が始まって六年は経つか、ようやく折り返しの巻を読み終える、訳者のあとがきに思うことは、結局自分は追従でしかなく、描く広さと深さはとても及ばないことだ、扱う主題は異なるとしても、追求する視点はどこにあるのか、まだ挽回できるとはいえ、時間が大きい。


秋祭りにふさわしい陽気は靴を抜いでテーブルに足をのせ、西の風にそよぐだらしなさだ、ただ昼を越せば冷たさがしみり、明暗よりも上下に温度差が伝わる、夕方から祭りだろうか、神楽を観ようと思ったものの、日中の寒暖差を恐れて、今年もパスか。


午前の川辺で消毒する、早朝から二時間を超すパソコンの動作不良は、昨晩から続いてストレスを倍増させた、それも経て今は、鳥の声も太陽も喜ぶ清涼のひとときだ、結局大きな損失ではなく、半分以上作業はこなせた、とても悪い半日ではない。


冬の隙間が忍びこんだような寒気はうせ、蟻もズボンを歩く生命のぶりかえしだ、つい明日以降を考えてしまったが、限りある今日を存分に飲み込むべきだろう、たかが機械の不調子に何を騒ぐ、もっと大きく生きる人間だろう、些末をいつまでもひきずって、めそめそすることなんかない。

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