第116話
コンクールに出ない自分に緊張感はない、ソーセージの挟まれたパンを食べながら、場内から漏れる管楽器を耳にする、まだ客の揃わない厳粛な雰囲気に、強い西日が射す、柱に同化して自分は、咀嚼しながら本番を待つ。
昼過ぎのモーツァルトから聴けばよかったと、八席の管楽器に考える、やはり弦楽器の扱いも知りたい、まだ始まっていないというのに、その気になった品定め精神が登場する、しかしもちろん、細かさを知る感性はないから、それを得る為の学習として、ストラヴィンスキーだけでは足りないと思う。
休日の熱射にまいりそうになる、半そで半ずぼん姿は、浮かれたサッカーシャツで街へ出歩く、夏のアロハに意気をあげるように、アマゾネスなグリーンで自然をてりつかせる、課題はほどほど予定も少なく、今日は昼酒を許してしまいたくなるほど、休暇にじゃれた気分だ。
切れたギアワイヤーの修理は放っておく、元の機能にこだわって取り戻すよりも、二桁が二段に分かれた動作を使いこなして、あとは筋肉に細かさを調整してもらう、繊細は高度な組織を保ち、ものぐさはあきらめという柔軟性で妥協の自転車を漕ぐ、なにせ、暑くて店へ行く気がしない。
意識できない呼吸の乱れが盆休み明けの朝に生じれば、昔の仕事を思い出す、距離でも時間でも空けば信頼を失うらしく、一斉にかかってくる物量に対応できるかと想像をめぐらす、思い返せばいつも暑さに忍耐は光景を宿らせていた、部活も同じ、生きるつらさが身に染みた。
観念よりも概念へ、物に宿る定義や膨らみを移管させる、多用しそうな言葉ながら、数年間思い出すことがなかったようだ、若い時分の言葉使いだとしても精神の基本は変わっておらず、成熟に近づいたとしても、雄弁するリズムは同じものだった。
高度に発展した苦虫が三日目に微笑む、体は動くストレスがゆとりを光らせている、元気は操作を間違えるとアクティブに襲いかかる、それより、腰を柔らかく働かない蟻でいるなら、たぶん圧迫せずに済むだろう。
トマトを噛み潰すように汁をとばす、香り良い汗は三日後に悪臭を放つ、それがどんなに清らかな踊りの後の放散であっても、見た目のイメージをいつまでも固着させる、第一印象にずっと寄りすがり、なかなか相手を嫌えないように。
低温庫で耳鳴りがする、いよいよ湿気と別れたような晩を過ぎれば、得意の自律神経が狂う、特に右耳に、そういえば脳外科へ駆け込んだのもこんな頃だ、皮膚は痒くなるものの、水気は鼻も頭も潤す、乾いて殺伐とするか、寂しい秋ももうすこし。
面倒臭いの一言が解答を最後にした、おそらく生きる上で最も無責任な態度は、自己の中で終結する最上の状態だ、昨日の人形は神に匹敵する存在が描かれ、一日誰とも話さない心境が夢でみていた、同じとは言わないが、超然とした選ばれし者の忘我に近いものがある。
肉体疲労は予想をはるかに、へばらせる、未分明のいらだちは体内の不純物に依拠している、一ケースの間違いに不意をつかれると、容赦ない悪罵が脳内に分泌される、連休の微笑みは何だったのか、今は畜生に成り下がっている。
働く服装はまるで兵士のようだと言えば、世間に合わないだろうか、弱さは強き者になびくよりも、拠り所のなさがスポンジの骨抜きにさせるのだろう、全員が同じではいられないとはいえ、性格を他人に求めてもしかたない、だからできることは、相手を認めて、つながりを消すことだ。
早い朝の目覚めは珍しく、昼前の仮眠に取り戻される、数年ぶりの夢は明瞭に残り、それまでのソーシャルメディアを材料に一幕ものの物語がギャラリーを徘徊させる、頭の働きは回復して昼ごはんを食べる、気だるい夢想の夏の半日だ。
うどん屋さんに赤ん坊は担がれる、ごまかねぎにせき込んだばかりだから、喉につっかえないよう気をつけてと、金券ショップで落語を委託して、空腹を満たしながら考える、欲張ると下手な目に合うが、小麦粉を例に他人の子に失敗をときかねない。
数日前から朝の予定を考えていた休日の午前は、運動とお喋りが働いただけでなく、少なくない進みを着けた、これから二本合わせて約四時間半の映画世界へ、目と頭は重くなるかもしれないが、その効能は昨日味わったから、期待が持てる。
彼女たちは骨のない会話をしている、技能や仕事は優れているとはいえ、話す内容は漆喰をはがすくらいしか動きがない、世間と周囲の物語は、ただ噂を巡らす為に存在された雲のようだ、ただし白さはとうに消えて、たいていはどんよりした曇りだから、とても気は晴れやしない。
目に余る疲弊感は、休日後にくだりさかる、半分の降水確率に曇りときどき雨なら、心身が右往左往して当然だ、便も朝から三度する、映画が何度も詩をうたったなら、その余波も得られた気はしたものの、とてもとても。
あとの時間は読書に費やされる、暇と体力は相性がよい、両手をしかと組んで勉学と享楽に勤しむ、知識と同時に感覚も働き、存在と成長は目に浮かべて促進を描写する、そんな昼の午後は、休日のあとだから。
息の根を止める殺菌効果が朝日に貫かれている、わずかな水漏れが一晩を過ぎて雑巾を集合させた、湿気の日ならわんさか盛り上がったことだろう、秋の風を感じた夜明けは数日前だけ、虫の音も加わっているが、かまれたかゆみが目覚めにかかれる、残暑らしい光だ。
悲鳴を与える、薄曇りの暑熱に、字はきれいに書けと言うけれど、雑になれたらもう戻らない、丁寧に記す概念が消えてしまった、体は心を表すというが、こうも汚いと笑いがとまらない、だからこそ、すくいようがないのか。
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