第38話

午前午後の重さは、まるで週始めの肉体労働のようにとれてしまった、頭と体、使用する機能が毎週交互に入れ替わるように生活している、どちらかに偏れば反作用が起きるらしく、月の満ち欠けとはいわないが、一方にならないのがバランスなのだろう。


へばって寝床につく、毎日、今日は早く眠ろうと口走りつつ、そうならずにいたが、口の開く前に布団に潜り込み、そのまま朝を迎える、作業はたまったままだが、何より優先すべき睡眠がとれたことで、体は重いが、三日後には効果が出るだろう。


時間を気にするくせはなく、予定が組まれている場合は目に調節される、ところが時刻の定まった用件を済ませてしまうと、時は放棄されるのが休日だ、食事の頃合いも気分のままに、するといつもの日本酒店に入ったのが開店前ということもあるわけだ。


もうやるべきことは終わってしまった、これ以上は今は飲まないほうがいい、食べ物だって欲していない、それでも木と若い女性で賑やかな店内に居残りたいのだろう、場所を移して、やっと届いたすべきことへ、それでも空間が足を休ませる。


冷房が心地よいそよ風に感じる、開け放たれた店内は外に遠近感が効果を持つ明るい木木の輝きがあり、前を人人が歩くので、ぼんやりと眺めていたくなる、それでも気が急いてしまうのだから、性情は落ち着くところがない。


ゾンビのように酔って徘徊する、すでに事は済ませて、要以上の成果を得ている、という甘い言い訳を盾にして、覚ますべく歩いて、ミーハーに並んでいたクレープ屋で静かに待つ、前に二人が、今は後ろに七人はいるだろうか、興味に従うまでのことだ。


鏡に反射するのは若さだ、白髪が混じるとはいえ、まだかろうじてとけこめる風貌にあるだろうか、この食べ物に年齢制限があるわけではない、ブルターニュならば万人がリンゴ酒と親しむだろう、チョコとクリーム、スタンダードなどという言葉をはめてしまう。


くらいつくほどの気力が出ないなら、しがみつくことはできるだろうか、原因ばかり探して結果を作ろうとせず、行動をなくして消耗していくばかりだ、だからどんなことでもいいから、向かっていると思えることをしよう、およそ無駄としか信じられないが。


見慣れない漢字表記に吹き出してしまう人名表記だからといって、内容も現今にそぐわないなどと思っていただろう、序文にあるのは批評における精神で、痴人だからこその価値があるらしい、ではと考え、無頓着を消すべく、ここでも肝要な勇気を再度認める。


この暑さならマスクは死に至るだろう、もはや拷問となる湿気と温度だ、体調不良ばかりか、皮膚の弱さは覿面に密閉箇所をかぶれさせる、普段からする習慣はなく、それが許される環境であるから、着け続けることにぞっとしてしまう。


隣人の頭の中を侵すべからず、左手による鏡文字を書いているだけで、どうしてこうもつまらなく叱られなければならないのか、その効果は大いにあり、構想など消しとんでしまう、理解のできない対象には畏怖を、そんな解釈をして、また繰り返そう。


わざわざ歩いて黒毛和牛の店に来るも、今朝に身内に弁じてやまなかった密の並びが店外まで、メニュー表を手にする者者を階上から見下ろし、数秒思案して店を別にする、座ったフランス料理店は静かで、こういう選択を常に行っていると、少しの高さに満足を得るのだろう。


イエスタデイのネオンの裏から通りを眺める、昼寝にはちょうどよい時間か、カフェインで初めて酔いを得るように、一杯の冷酒が頭をとめている、コーヒーの文字は赤く、夜の暗さで輝きを増すのだろうが、シタールがうしろで眠たげに響く。


休日は一日が短距離走の勢いでうまくいく、そんなイメージを優先させているから、パフォーマンスの鈍い間はどうも損をした気分になる、午前か午後か、どちらかに調子があがってくることもあると知っていても、やってくるまでは信じる気になれない。


葦毛のソーセージドッグが平和大通りを歩いている、ヴァイスブルストか、ロングヘアーは何度も見たことはあるが、毛の短いのは初めてだ、子供でも筋肉の浮いた体は遺伝子によりたくましく、あたりを気にしてばかりは、短い足をあげてそこかしこにマーキングしている。


積まされたエンジンを恨むばかりだ、仮に脳の働きがよかったにしても、血流が遅く、濁ったエキスのまわりでは、どんな力を発揮できるだろうか、酔わせるものに頼りきるのは、ジャガイモのエネルギーを得るのと同じだろうか、あまりに無茶を望みすぎている。


過ぎたことをテーブルに肘ついて考える、それが平日の些末ではなく、休日のささやかなロマンならば、頭でする意味もあるだろう、追加のもう一杯は余分だったかもしれない、白いブラウスが二枚去っていく、こうして気取って振る舞い、すべてを取り逃がして消えるのだろう。


何度雨と睨めっこしたか、気分で変えたくなるほどの用事しかないから、他人との待ち合わせに都合をつける煩わしさはなく、足を伸ばして横になれば済んでしまう、窓外に風が強く吹き、傘も立たずにズボンが濡れる、そう思っても外に出る休日の朝だ。


子供向けは好きじゃない、展覧会でも映画でも、それに音楽だってそうだ、と思いながら意外に好んだり、感動もするのだから対象は関係ない、いかに優れているのか、要点を踏まえていれば、理屈抜きに受ける刺激はいくらでもあると、いくつもの古典がひらひらする。


意識が萎んだ時の暇仕事として、紙面にいたずらを仕込んでおこう、おそらく今日も酩酊して、何も浮かばずに息をついてぼっとすることだろう、少しでも働いている、そんな自認を得られる石拾いでも、そこから律動する進行もないことはないから。

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