第20話

洗顔から夏休み、髪のセットに春よ来い、思うままに要求した楽曲は分裂したようだ、首筋の寒さに神経の乱れがあって、歌詞の雨が外では、のちほどメーテルランクに取り替えられる、おかげで出勤時間を五分間違えた。


昨日の怒りの分だけ今日は朗らかにいよう、バタバタした一時間が過ぎ、落ち着いたところで雨も止んでおり、シャツでは冷気に感じる、のんびりと、そう思った途端に、むしろ奔騰の方がよく動けるのではないかと、午後を思う。


おばんざい、なんて最近聞くが、なんだろう、前からあるのだろうが、赤蕪の漬け物のお裾分け、ふと、さるぼぼが手足を広げるものの、見た目は仙台牛だ、家にはレモンもデコポンも控えている、二番煎じをしては面目が立たないか。


かぶで暇を潰す、夕方の眠気がやってくるなか、東北の赤いのを追い、中部地方の接点をつける、色と関係も異なるように、品種もどうも同じではない、白く一定する平穏のなかで、蕪泥棒などと思っても、数日でどうやらいなくなってしまいそうだ。


目の前の山は雪にあられ、路面は水浸し、様変わる天気は北の沿岸のよう、きっぱり晴れたと思うと、振りまく雨で、まるで人の心のようだと思っているも、今日の天気はそのままだ、とはいえ今日の天気とは、今日の自分だろう。


今日もあかかぶを喰って、のらくらと、だらだらと昼をやり過ごす、もっとましな動きもあると自分に言われつつも、ゆるめる場もなければ、一本調子になるだろう、誰かが言っていた、自己の意識を忘れることが芸術だなんて、ならこれは、ぼんやり外を見たいから、違うだろうな。


アマゾンから届いた小型スピーカーが前にある、アルファベットのデザインは訴える力があり、視覚からの効果を真に受けている、これはやりすぎた、良いアイデアだと思ってボタンを夜に押し、次の昼に届いて理解する、もう少し静かでいようと。


EとUを見間違える、金額の違いは気付いていたのに、そんなことばかりだろう、失敗は、とろとろ動いてどすっと来る、理由は万でも浮かぶ、事実が重たく載る、たとえ平凡を壊す刺激だとしても。


意識しているから、わざと気にしないと話題にしている、寒気がニュースとたやすく結びつく、もしかして、これがどれだけの不安を生み、杞憂に流されたか、調子は気にすると悪くなる、どっとくる時間もあるが、意識は高くあるから、おかしなものだ。


スマホはなくてもタブレットはある、違いは呼称とサイズだけで、動きはそうかわらない、ガラケは左ポケットのまま、昼ご飯と一緒に味わうが、近頃味気ない、画面を消して目を閉じ、口を動かす、ふと、紙とペンをとり、これからはこうしようと思う悪寒。


後ろ姿ばかり見ている、あみんの歌が眠れずに流れると言っていた、ヤマトナデシコ七変化が下手に浮いている、開花を告げる微笑み返しが今年初めて選曲されて、古くない昔の思い出が告げる、新しいと思っていたのに、もうそんな過去になったなんて。


揺らぎも揺れもない、虚無に濡れている、きっと本の影響だろう、そうだとしてもあまりに元気がない、跳ねるように階段はあがらず、足音は静まるのみ、すっとする中で外の焼き鳥の煙を嗅ぎながら、手ばかりがうるさいか、屋外がいい、たとえ野外でなくても、いきかえる。


うしろのテレビでウィルスを流している、家に帰ってお客さんの話を聞くと、その影響力を教えられる、目当てとしていた店とは違うところへ入ったが、今来た人は咳をする、テレビの影響か、ガラスは湿気に曇り、眼鏡もひどく曇っている。


BGMはMASSIVE ATTACKのようなスネアの音に聞こえ、パイントのギネスの三分目で酔いは回っている、冷静を欠いた推敲にはたして成果はあるのだろうか、お好み焼きで酔っている状態では、ただ目が回っているようだ、一応終えたこと、その余韻がまるでないくらいに。


夜行バスでの定番曲を、酔いの衝動で買ってタイミングよく代替となったスピーカーに流す、様様の思い出が湧くのではなく、ただ一つに純化された情感に募る、落ち着きと安らぎ、朝食前からの余地だ。


滅多にない人との待ち合わせ、前はクレーンのそびえる炎天下だった、予報は暖かいというが朝の繁華街はまだ冷える、アーケード下の胡さんのお参りを見て、そばの悪魔のガン検診を見る、人の流れというほどではない、近くの天麩羅を思い出す。


荷物はしめ縄の下に三つ置かれ、三人家族は賽銭箱に下がったものを一緒に手に取る、さすがに突っ立って手は冷たくなり、そんな温もったものでなくても、他人の温かさが少しでもこちらに伝わってくるようだ。


モーニングは語り、ランチは外れる、色気ないタンシチューについていた味噌汁は、朝と違って薄く、肉も味気ない、残念に落ち込み、少し歩いてテイクアウトのコーヒーを飲む、値段とは何だろうか、眼鏡は曇らない風の中、じっくり見上げる。


店内待ちは知らず、外のベンチの持ち帰りは二つの節約にあり、あまり落ち着けるところではないが、これに落ち着いている、前髪はおろさない、長い裾のコートもいらない、ハイボールの看板を見ながら、飲まないものは飲まないと、原酒を思う。


盲目聾唖の劇に痺れ、サイゼリヤでラムとワインに酔い、自転車置場を間違えた遠回りをすれば、ブラームスの三番に流れる、ぬるさを感じる夜の陽気に、外での文章の到来を間近に感じる、好きなだけ飲み、外気一杯の中で浸れる季節だと。

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