その2

「初めまして、玲奈さん。ルコと申します」

「こちらこそ、初めまして。幌豊ほろとよの総指揮を任されている玲奈です」

 ルコ達は幌豊ほろとよのリーダーである玲奈とビデオチャットをしていた。

 玲奈はスキンヘッドで画面越しにでも簡単に認識できるほど背が高く体格が良かった。ただ、顔を見れば一目瞭然で女性だと分かるにこやかで優しい顔をしていた。年の頃は30代前半といったところか?もっと年がいっているかもしれないが若く見えた。ただ、ルコには何故か仲区ちゅくのリーダーだった寛奈に似ているような感じがした。外見は全く類似点がなかったが。

「村を攻撃なさると聞きましたが、この村でしょうか?」

 ルコは周辺地図の村18を指差しながら聞いた。この村はこの周辺一の大規模なものだった。

「ええ、その通りです」

 玲奈はそう短く答えた。

「周辺のこの5つの村を消滅させたのはあなた方ですか?」

「ええ、その通りです」

「差支えなければ、その方法をお教えください」

「爆弾を使いました」

 玲奈の答えはいずれも短かったが、どれもルコに衝撃を与えるものばかりだった。ただ、爆弾が何かを知らないルコ以外の三人はルコに質問したがったが、ルコは小声で後で説明すると言って、後回しにしてもらった。

「爆弾はあなた方が作ったのですか?」

「ええ、肥料が製造可能でしたので、そこから作りました」

「そうですか……」

 ルコは玲奈とのやり取りでなぜ村が消滅したのかが分かったと共に、不安になった。

「どうやらあなたはそれなりの知識をお持ちですね」

 玲奈の方はルコとのやり取りで満足したような表情を浮かべてから、

「今度は私の方からの質問ですが、金杉レポートを公表したのはあなた達で間違いないですか?」

と逆に質問してきた。

「はい、間違いないですが……」

 ルコは何故そのような事を聞いてくるのかが疑問だった。

「それは素晴らしい。あのレポートにはこちらの研究所にない情報が多数含まれていました」

 玲奈は少しトーンを上げてそう言った。声は女性の声そのものなのだが、何故か豪快な男性の喋り方をしている印象を持った。この辺が寛奈と似ていると感じた要因だろうか?とはいえ、寛奈の喋り方とは全く違うのだが。

「まだ全部読んでいたいのだが、実に素晴らしいものだと思います」

 ルコがちょっと唖然としている事を他所に、玲奈は続けてそう言った。そして、一呼吸置いてから、

「で、あれはどこで手に入れたのですか?」

と質問をしてきた。

知羽しりぱの研究所です」

「素晴らしい!という事は、知羽しりぱから別斗べつとまで移動してきたのですね」

 玲奈の目が輝いていた。

「ええ。ただ、元々の出発地点は織内おるないですが」

「なんと素晴らしい!」

 玲奈は叫ぶようにそう言った。無論、この行為にルコ達4人はびっくりした。

「いや、失礼」

 玲奈はゴホンと咳払いをすると、

「歴戦の勇者とも言えるあなた方に会えて、ちょっと気持ちが高ぶっていまいました」

と冷静に高ぶった訳を話した。

「歴戦の勇者と言われましても、私達はこの世界に来て半年ですよ。それより、あなた方の方が遥かに功績を上げているのでは?」

 ルコは玲奈の意図が分かっていたが、慎重に事を進めようとしていた。とは言え、何を要求されるのかは想像するのは容易だった。

「私なんか、この世界に来て4ヶ月ですし、総指揮を任されていたのはほんの2ヶ月前です」

「はぁ……」

 ルコは玲奈の言い分に答えようがなかった。ただ2ヶ月で村を5つも消滅させたのは驚異的な事だと感じていた。

「そこで、我々はあなた方に要請します。我々と一緒に戦ってはくれませんか?」

 玲奈はルコの予想していた事を頼んできた。ただ、頼み方が単刀直入だったので、印象は悪くなかったが、逆に困ってしまった。誤魔化しようがないからだ。

「攻撃の日を変更する事は可能ですか?」

 ルコははぐらかすような質問をした。まあ、出来れば参加したくないと考えていた。

「いえ、こちらとしても待っている余裕が無いので、3日後と決めております」

 玲奈は断言するようにそう言った。

「分かりました。少しこちらで相談させていただけませんか?」

 ルコは交渉は無駄だと悟り、そう聞いた。

「よろしいでしょう。良い返事をお待ちしております」

「では」

 ルコがそう言うと、玲奈とのビデオチャットが切れた。

「さて、どうしましょう?」

 ルコは溜息混じりに三人に聞いたが、三人も既に結論は一つしかないと考えているようだった。

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