その6

 それからの4日間は特に何もなかった。この日は猪人間に襲われないように日にちをずらして補給を行ったが、その甲斐もあって、襲撃されずに済んだ。

 これに気を良くしたルコ達はまた4日後に補給を行おうとしたが、今度は見つかってしまった。単なる偶然だと思うが、数は30匹になっていて、またリベンジを期しての襲撃だろうと考えられた。

 今回の猪人間も攻め方を変えてきた。最初から隊を3つに分けて、ルコ達がいる通りとその東西に一本ずつずらした通りを南下してきた。ただし、正面の敵は射程圏内に入る前に立ち止まっていた。左右の部隊が回り込むのを待っているようだった。

「瑠璃、恵那、狙える?」

 ルコは立ち止まっている敵にチャンスを見出したようだった。

「妾にはちょっと距離がありすぎますね」

 瑠璃はそう言うと、断念した。

 恵那は銃を構えて照準を一旦定めてから、

「うん、行けるよ」

とルコたちの方を見て軽くあっさりと言った。

「なら、お願い」

 ルコがそう言うと、恵那は返事をする前に1射目を放った。

 弾は見事に命中し、1匹の猪人間が倒れた。距離は約450mだった。

「やっぱり、行けたわ」

 恵那はそう言うと、2射目を放った。

 ほとんどの猪人間が異変に気付いて逃げ出したが、逃げ遅れた一匹の猪人間に今度も命中して倒す事ができた。

 ただ前方の猪人間達は不意を衝かれて2匹が倒されたが、次に銃撃される前にルコ達との距離を広げて恵那の狙撃範囲を脱していた。

 恵那は射程外に出た猪人間をそれ以上は狙撃しなかった。無駄だったからだ。だが、これで確実に敵の距離を稼げた事になった。

「恵那、正面はお願いするわ。瑠璃、私達は回り込んでくる敵に備えるわ」

 ルコはそう言うと踵を返し、瑠璃と共に前部区画を出ていこうとしていた。

「え?ルコ一人でやるんじゃないの?」

 恵那は去りゆく二人に意外そうな顔をしてそう聞いた。恵那にとってはルコは完全にこのグループのエース扱いになっていた。

「20は一人じゃ無理よ」

 ルコはそう言い残すと瑠璃と共に前部区画を出ていった。

 ただ、出て行ったのはいいが、ルコと瑠璃が後部区画に着く前に決着がついてしまった。

「猪人間が全員後退していきます」

 マリー・ベルがそう意外な報告してきたのだった。

 ルコと瑠璃は途中の作業区画でびっくりしてお互い顔を見わせてから、周辺地図と拡大映像で猪人間達が撤退していく様子が分かった。

 何らかの作戦かと思われたが、猪人間達は一直線に北上をしていくと、そのまま都市外へと去っていき、更に探知範囲外へと消えていった。

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