その5
それからの1週間はまた特に何もなかった。だが、ルコは更に今後の事を考えて更に悶々とした日々を過ごしていた。そのために、またいくつか研究論文を読んでみたが、やはり専門知識が乏しいため、前の週と比べて読もうとした数は激減していた。そして、他の研究所を目指しても無駄ではないかと感情が大きくなっていった。
この1週間、遙華の方は更に順調に回復しているとの事だった。だが、段々ベットで安静にしているのが辛く、ウズウズしている状態だった。
そんな雰囲気の中、この日も朝食後、補給のために倉庫に来ていた。そして、先週と同じく、倉庫から直接搬入しようとしていた。そして、今まさに搬入を開始しようと後部ドアを開けた時に再び、
「北、12時方向に猪人間を確認。距離約3km、数20体。最短接触時間は約4分です」
とマリー・ベルが急報を入れてきた。不思議な事に前回と全く同じタイミングだった。ただ数は前回より増えていて、明らかに前回のリベンジを期しての事だと容易に予想がついた。
ルコ達は前回と同じように寝室区画に遙華を残し、それ以外の三人は前部区画に集まって迎撃しようとしていた。たが、リベンジを期しての再戦だったので猪人間達は前回と同じ動きはしなかった。ちゃんと学習効果があるようだった。
猪人間達は最初真っ直ぐ向かってきたが、こちらの射程圏に入る前に二手に分かれて、それぞれ東西の一本向こう側の道へと入っていった。ルコ達を挟撃する気でいるのは明らかだった。
この動きに対して、待ち構えて銃撃しようとしていた瑠璃と恵那は唖然とした。
「その十字路を右折。分かれた一隊を攻撃」
ただルコの方は猪人間達の行動にいち早く反応して各個撃破の指示を出した。
「はい、承りました」
マリー・ベルはそう言うと車を動かし、右折した。
「前は二人に任せるわ」
ルコはそう言うと前部区画から後部区画へと走った。
戦闘は瑠璃と恵那の前部区画から始まった。右折後、次の十字路を左折し、急進した車は瑠璃と恵那のの有利な距離を保ちつつ戦闘を続けた。
ただ最初翻弄されていた敵はすぐに立て直してきて互角に持ち込んでいった。そして、戦況が一転したのは猪人間の別働隊が車の後部に取り付いた時だった。
後部への攻撃が始まり、開いている後部の狹間から石槍を突き立てながら銃撃の邪魔と車内部の人間への攻撃が始まった。これにより猪人間達の優勢が確定したかに見えた。
しかし、この状況を待っていたかのようにルコのゼロ距離射撃が始まり、後ろの部隊の猪人間達は一気に薙ぎ倒されて壊滅し、逃げ去っていった。
前の部隊は後ろの部隊の撤退を知り、逃げようとした瞬間に、これまで守勢に徹していた瑠璃と恵那が一気に反撃に出て、こちらも壊滅して敗走した。
この日の戦いもルコ達の圧勝に終わり、一人あたり7人程度の敵だと、ただ撃退するだけではなく、壊滅まで追い込む事が出来るようになっていた。
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