4.着方受講

その1

 15日前の出来事なのじゃ。


 暗闇から光を抜けるとそこは別世界だったのじゃ。

 びっくりしたのじゃ。


 吾がびっくりしていると、次に黒髪少女の瑠璃、金髪少女の恵那、そして、黒髪少女のルコが現れて、またびっくりしたのじゃ。


 それに、吾も含めて全員裸じゃないか!


 しっかし、こやつら、何故か吾よりでかいし、何よりも上半身に無駄とも言える脂肪がついておるのじゃ。

 とっても気にらないのじゃ!

 これでは吾一人子供のようなのじゃ!

 しかも、三人は胸の話をし始めたのじゃ!

 ムカつくのじゃ!

 もしかしたら、こやつら全員敵かもしれんのじゃ!


「いつまでも裸でいる訳にいかないのじゃ。風邪をひく前に服を着るのじゃ!」

 吾はいつまでもはしたない格好で話している三人にそう注意したのじゃ。


 服は部屋の隅にある長い台の上に、奇妙な透明の袋の中に入っていたのじゃ。


 取り出してみると、その奇妙さは更に増したのじゃ。

 何なのじゃ、この服は?

 そもそもこれは服なのじゃろうか?


 そうこうしているうちに、ルコから台に置いてある耳飾りを付けるように指示があったのじゃ。


 罠じゃないじゃろうな?


 吾は警戒したのじゃが、瑠璃と恵那は無警戒で耳飾りを付けているのじゃ。


 なんともないようじゃな……。

 ちょっと安心したのじゃ。


 その後、吾はルコの指示通り耳飾りをつけたのじゃ。


 すると、

「皆様、はじめまして。私(わたくし)はAIのマリー・ベルと申します」

と耳飾りから声が聞こえてきた。


「なんじゃ?えい?なんじゃ?」

 これには吾も心底びっくりしてしまったのじゃ。

 瑠璃と恵那も同様に驚いていたのじゃ。


 まあ、無理もないのじゃ。


 しっかし、これは凄いものじゃな!

 吾は興味深く思ったのじゃ。


 そう言えば、ルコだけは先程からほとんど驚いていない気がするのは気のせいじゃろうか?

 まさか、ルコは敵じゃないじゃろうか?


「お召し物をご用意させていただきましたので、まずはお着替えを。着方に関してはルコ様をお手本にして下さい」

 まりぃは吾等四人の置かれた状況を無視して言ったのじゃ。


「えっと、まずはパンツから……」

 ルコは上ずった声でそう言うと、ドギマギしながら白い布を手に取ったのじゃ。


「ぱ?聞き慣れない言葉じゃな」

 吾はそう言いながら服の中を調べ始めたのじゃ。


 しかし、変な言葉を使うやつじゃし、何より何でそんなに急にオドオドして始めたのじゃ?

 あやつ、やっぱり怪しいのじゃ!


「これの事とかしら?」

 瑠璃は白くひらひらが付いている白い布を手に取って、ルコに見せたのじゃ。

 すると、ルコは顔を赤くして黙って頷いたじゃ。


 何故顔を赤くしてるのじゃ?

 でも、あのひらひらはかわいいのじゃ!


「ああ、これの事?でも、ちょっと違うのね」

 恵那は透かし刺繍が入った白い布を手に取ったじゃ。


 あの透かし刺繍が中々のものじゃな。


「そうか、みんなちょっとずつ違うのじゃな」

 吾はそう言うと白い小さな紐飾りの付いた白い布を手に取ったのじゃ。

 確かに他の3人とは少し形が変わっていたのじゃ。


 吾のぱ……は小さな結び目がちょこんとある白い布だったじゃ。

 他の者と違って、吾のはあっさりとしているのじゃな。


 全員がぱ……を手にすると、ルコは更に顔を赤くして、その白いぱ……に足を通して腰まで引き上げて履いたのじゃ。


 なんか不思議な光景じゃな……。


「これって、下に履くものなのね」

 恵那は目の前で白い布を持ってきながら言っていたじゃ。


 その隣で、瑠璃がルコに習ってゆっくりとぱ……に足を通して腰までゆっくりと引き上げて履いたのじゃ。


「ちょっとお尻に引っ掛かるような感じでしたが、そうね、吸い付くような感覚ですわね。それに肌触りがとてもいい気持ち。初めての感覚ですわ」

 瑠璃は結構嬉しそうに言っていたのじゃ。


「どれどれ」

 恵那は嬉しそうな瑠璃を見て、ウキウキしながらぱ……を履いたのじゃ。


 吾はそれにつられるようにぱ……やらを履いたのじゃ。


「成る程、不思議な感覚じゃ」

 皆が言っているように心地よい感覚じゃった。


「ほんと、なんかちょっと履く時にお尻に引っ掛かったけど、なんかいいわね」

 恵那も嬉しそうに言ったのじゃ。


「なんじゃ、吾は別にお尻に引っ掛かったりせんかったけどな」

 吾は不思議がって言ったのじゃ。

 二人の言っている意味が分からんのじゃ。


「それは体型の違いです」

 まりぃが無機質な口調でいらんツッコミを入れてきたのじゃ。

 後で知った事なのじゃが、まりぃは融通が利かないものという事じゃが、今回は単なる事務的な事項だと思ったのじゃろうか?


「体型?」

 吾ははそう繰り返したのじゃ。

 最初はまりぃが何を言っているのかが分からなかったのじゃ。


 その後、吾は他の三人を見回して、

「吾が幼児だというのか!吾は54歳の成人じゃぞ!」

と怒ったのじゃ。


 まりぃというやつはどういうやつなんじゃ?

 吾を愚弄しおって!


「54!」

 他の三人はびっくりして声が合わさった。


 これはどういう事なのじゃ?


「主らはいくつなのじゃ?」

 吾はでかいヤツラに審問したのじゃ。


 どうもおかしいのじゃ!


「え、あたしは49歳よ」

 恵那はそう答えたが、吾も含めた恵那以外の3人がびっくりしたのじゃ。


 これはどういう事なのじゃ?


「妾は15歳になりましたわ」

 瑠璃が続いてそう答えたが、ルコがちょっとホッとした顔をしたのに対し、吾と恵那は先程よりびっくりしたのじゃ。


 これはどういう事なのじゃ?


「私は……17歳です……」

 ルコはちょっと自信なさげに言ったじゃ。


 これにも驚いたが、この自信のなさそうな態度はどういう事なのじゃ?


「遙華様と恵那様は瑠璃様とルコ様よりかなり長命で成長が遅い人類であります。遙華様が幼く見えるのはもともと体の小さい人類であり、恵那様が属する人類より更に成長が遅いからです」

 まりぃはまた無機質な口調で急に口を挟んできたのじゃ。


 まりぃというやつはなんか一々ムカつくのじゃ!

 吾の逆鱗に触れたのじゃ!


「幼いは余計じゃ!」

 吾はそう言うと、機嫌を損ねたのじゃ。

 もうカンカンなのじゃ!


「瑠璃とルコは違うの?」

 恵那はそう聞いたのじゃ。


「瑠璃様とルコ様は所属されている人類の差に大きな差異はありません」

 まりぃはそう答えたのじゃ。

 それを聞いて瑠璃とルコはお互いに顔を見合わせていたのじゃ。


「でも、時代背景というか、社会背景というか、そういうものが違わない?」

 今度はルコが質問をしたのじゃ。


「はい、仰る通りです。御二人は別の世界からこの世界にやってきています」

 まりぃの言葉にルコは得心したような顔になったのじゃ。


 こやつはどういうやつなんじゃ?

 ルコは何やら知っているようじゃな。


「それより早く服を着ようよ。あたし、寒くてしょうがないわ」

 恵那は震えながら言ったのじゃ。


「そうじゃな、いつまでもこの格好というのもなんじゃしな」

 吾も恵那に同意したのじゃ。


 色々気になる事はあっても今は風邪を引かないようにしないといけないのじゃ。

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