その2

「ルコ様、次をお願いしますわ」

 瑠璃はおっとりした口調でルコに迫っていたのじゃ。


「じゃあ、次はブラ……」

 ルコはそう言って、さっきの白い布と同じ刺繍があしらわれた白い複雑な作りをしたものを手に取ったじゃ。


 何とも奇妙奇天烈なものじゃな?紐みないなものもあるのじゃが、何とも表現しがたいものなのじゃ。


 ルコは紐を腕に通して、肩に掛けたのじゃ。そして、布を胸に当て後ろ手で留め金を留めようとしたのじゃが、1回ではうまく行かず、4回目で漸く留まったのじゃ。


 なんじゃか、付け方が複雑な様な感じじゃな……。


 そして、その後、違和感があったようで、布の中に手を入れて胸をずらして調整していたのじゃ。


 ルコは何にやら摩訶不思議な事をしているようじゃな。


「ぶぅらというものはこれかな?」

 恵那は下とお揃いの上の白い布を高々とお持ち上げたのじゃ。


「なんか、うまくいきませんわ」

 瑠璃の方は早速ぶぅらを付けようとしていたのじゃが、留め金がうまく留められないでいたのじゃ。


 その光景がなんとも悩ましいのじゃが、とてもかわいい様子だったのじゃ。

 なんじゃか、ルコがボーッと瑠璃を見ていたのじゃ。


「ルコ様、お手伝いできますか?」

 瑠璃は困った顔をしてルコに助けを求めてきたのじゃ。


「確かにこれはちょっと大変ね」

 瑠璃の隣で恵那もホック留めに悪戦苦闘していたのじゃ。そして、

「ルコ、あたしも手伝って……」

と甘えるように言ってきたのじゃ。


「お願いしますね」

 瑠璃はそう言うとルコに背中を見せたのじゃ。すると、ルコは瑠璃の留め金を留めたのじゃ。


 ルコは他のものの手伝いをしているのじゃ。

 実はとても優しいやつなのかもしれんのじゃ。


 吾はちょっとルコの事を見直したのじゃ。

 最初は一番でかいし、一番余分な脂肪が付いていたので、吾の一番の敵じゃと思っていたのじゃが……。


「ルコ様、これからどうするのですか?なんかものすごい違和感があるのですが」

 瑠璃はルコの方に振り向いてちょっと困った顔をして言ったのじゃ。


「ええっと、カップの位置を調整してみて」

 ルコは変な言葉を言いながら赤くなっていたのじゃ。


「か……なんですの?」

 瑠璃は更に困った顔をしたのじゃ。

 吾もルコの言葉がよく分からない事があるのでそれはよく分かるのじゃ。


「ええっと、ほらブラのカップをこうやって合わせて……」

 ルコは自分のぶぅらの位置を合わせるところを見せようとしたのじゃが、

「ごめんなさい、分かりませんのでお願いします」

と言って瑠璃は前を向いたのじゃ。


 確かに何をやっているのか、分からんのじゃ。


 何故かルコは躊躇していたのじゃが、瑠璃が、

「どうしたのですか?」

とおっとりした口調で促したのじゃ。

「え、はいはい」

 ルコは無駄に大きな声を上げた後、瑠璃を後ろから抱きしめるような形で震える手を瑠璃の胸元に伸ばしたのじゃ。

 そして、ゆっくりと瑠璃の布の中に指を滑り込ませて布を引っ張ったのじゃ。


「きゃっ」

 瑠璃は小さく悲鳴をあげると、自分の胸を抑えようとして、ルコの手に当たったのじゃ。


「ごめんなさい」

 ルコの方は慌てて手を引っ込めたのじゃ。


「妾の方こそ、ごめんなさい。ちょっとびっくりしただけですわ」

 瑠璃はルコの方を振り向きながら顔を赤らめていたのじゃ。そして、大きく深呼吸をすると、

「もう大丈夫ですわ」

と言って、両手を上に上げたのじゃ。


 それを見たルコは再び瑠璃の胸の前に手を回し、ゆっくりとできるだけ優しく布の中に手を滑り込ませたのじゃ。

 瑠璃はビクッとしながら声を我慢している様子だったのじゃ。


「こんなものかな?」

 ルコはそう言うと、ゆっくりと布の中から手を引き抜こうとした時に、

「ひゃん」

と瑠璃は思わず可愛い声を上げたのじゃ。そして、胸を両手で抑えて前屈み気味になり、顔を真赤にしたのじゃ。


「こめんなさい」

 ルコはその場に固まってしまったのじゃ。


「だ、大丈夫ですわ」

 瑠璃は大きく首を振りながらそう言ったのじゃ。


 なんか、こう……やらしい光景じゃな、これは。

 吾は何だか新たな扉を開いたような感じじゃったのじゃ。


「今度はあたしね」

 恵那は2人の気まずい雰囲気にお構いなしに、そう言ってルコに背中を見せて、両手を上げたのじゃ。


 ルコは恵菜の布を引っ張ると、留め金を留めたのじゃ。


「ありがとう」

 恵菜はそう言うと、自分の手をブラに入れて自分で微調整したのじゃ。そして、

「ううん、こんな感じなのね!」

と満足気に言ったのじゃ。


 また、他のやつの手伝いをしておる。

 やっぱり、ルコは優しいやつなのじゃな。

 瑠璃と恵那も幸せそうな顔をしているし……。


 しっかし、吾のはどれじゃ?


「吾の着替えの中に、そのぉ、ぶぅらというものがないぞ」

 吾はルコに聞いてみたのじゃ。


「そうなの?」

 ルコはそう言うと、心配そうな顔で吾のそばに歩み寄ってきたのじゃ。


 やっぱり、ルコ、いいやつなのじゃ!


 吾の着替えの1番上には間違いなく白くて中央に小さな結び目がついている白い布が載っかていたのじゃ。下とお揃いのものだったのじゃ。


「これなんだけど」

 ルコはそう言いながらその白い布を手にとって吾に渡してきたのじゃ。他の3人のものと明らかに形が異なるのじゃ。


「え?これなのか?主らと形が違うのじゃ」

 吾はびっくりしてそう言ったのじゃ。


 なんか、吾、騙されているのじゃろうか?


「それは各自の体型に合ったお召し物を用意させて頂いたからです」

 まりぃはまた無機質な声でそう告げたのじゃ。


「何ぃ?吾が幼児体型とでも言うのか!吾はこの中では1番年上なのじゃぞ!」

 吾はまた失礼な事を言われて怒ったのじゃ!


 まりぃは一々失礼なやつじゃ!


「まあまあ、成長は人それぞれなんだから。それに、遙華のぶぅらも可愛いじゃないの」

 恵那は吾をなだめるようにそう言ったのじゃ。


 かわいいじゃと?

 確かに、これはこれでかわいいのじゃ!


「どうやって付けるのじゃ?」

 吾は恵那の取り成しで気を取り直したのじゃ。そして、ルコに聞いてみたのじゃ。


 まあ、かわいいので許すとするのじゃ。


「えっと、上から被ればいいのよ」

 ルコはそう言うと白い布を吾に渡してきたのじゃ。


 吾はそれを受け取ったのじゃ。すると、ちょっとうれしくなったのじゃ。そして、頭からそれを被って胸の所までひっぱって装着したのじゃ。


「どう?」

 ルコは心配そうにそう聞いてきたのじゃ。


「うーん、悪くはないのじゃが……」

 吾は体を捻りながら自分の様子を確かめようとしたのじゃが、どうと言われてもなのじゃ。


 まあ、自分の姿が見えないから仕方がないのじゃ。


「とっても可愛いわよ」

 恵那は素直に吾にそう言ってきたのじゃ。隣での瑠璃も大きく頷いて同意していたのじゃ。


 吾、かわいい?


「えっと、あそこに鏡があるから映してみてみたら?」

 ルコは振り返りながら鏡と言ったものを指差したのじゃ。


「鏡?」

 吾はルコの言った事にびっくりしたのじゃ。そして、3人の中を通り抜けて、鏡の前に立ったのじゃ。


「え!凄いのじゃ、この鏡!すごくきれいに映っているのじゃ!」

 吾は驚きの声を上げたのじゃ。


 これには本当にびっくりしたのじゃ。

 なんか凄いものをまた見たのじゃ!


 ルコは吾の言葉にそっちなのという顔をして驚いていたようなのじゃ。


「どれどれ」

 興味を持った恵那はそう言うと吾の後ろに立ち、瑠璃もそれに続いたのじゃ。


「本当だ!この姿見、すごいわね。こんなにはっきり映るのは初めてだわ!」

 恵那は感動の声を上げたのじゃ。


「そうですね。妾の国でもこんな姿見はありませんわ」

 瑠璃も相変わらずおっとりとした口調だが喜んでいたのじゃ。


「確かに、吾、可愛いのじゃ!」

 吾は吾で色々なポーズを取りながら満足したのじゃ。


 吾のかわいさが引き立つ道具なのじゃ!

 それにしても素直に吾を褒める三人はいいやつなのじゃ!

 こやつらは頼もしい味方なのじゃ!


「今度はあたしに代わって」

 恵那にそう言われたので、吾は鏡の前から退き、恵那に場所を替わってやったのじゃ。


「ああ、なんか、これ凄いわね」

 恵那もポーズをいろいろ取りながら嬉しそうに言ったのじゃ。


「でも、何か艶めかしいかも……ですわ」

 瑠璃は恵那の後ろでそうボソッと言ったのじゃ。


「ええ、そうかな?でも、ちょっと色っぽいかもね」

 恵那は瑠璃の言葉を褒め言葉として受け取り、ちょっと照れていたのじゃ。


「代わって下さいませ」

 瑠璃は恵那にそう言うと、今度は瑠璃と恵那が入れ替わり、瑠璃の全身が鏡に映し出されたのじゃ。


「ふーん、改めて見るとあなたってとても綺麗な体をしているのね」

 恵那は鏡の瑠璃を見ながら感心していたのじゃ。


「あら、ありがとうございますわ」

 瑠璃は嬉しそうにお礼を言って、


「しかし、凄いですわね。こんな鏡見た事がありませんわ」

と鏡に感心していたのじゃ。


 うんうん、二人の気持ちはよく分かるのじゃ。


 この後、万事こんな感じで進んでいくのじゃが、この着替えで吾等四人はとても仲良くなったのじゃ。

 めでたしめでたしなのじゃ。

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