その3
作戦の滑り出しは非常に上手く行っていた。
村4から出た侵攻部隊と入れ違うように侵攻ルートとは別の道を使ってルコ達は一旦南東方向に進みんだ。
日は完全に落ちていて、当たりは暗かった。ルコ達は暗視装置を使い、都市を抜けて森林地帯に入り、その中をすり抜けるように配置された道路を通り、村4のそばを通り抜けた。その際、村からの攻撃はなく、極めて順調だった。
そこで、東に進路を変え、海岸線近くの道を使って村5のそばを抜けようとしていた。
「センサーに反応、前方に猪人間が存在すると推定されます。数は1」
車載センサーが反応したので、順調に進んでいたのでずっと無言だったマリー・ベルが急に警告を発した。村5まで直線距離で2kmの地点だった。
「なんじゃと?村5の斥候か?」
遙華はマリー・ベルの警告にすぐに反応した。
「マリー・ベル、最大速度!ぶっ飛ばして!」
ルコは叫ぶようにマリー・ベルに命令した。
「はい、承りました」
マリー・ベルはそう言うと車は一気に加速して倍の速度になった。と言っても時速30kmぐらいなのだが。
「どうしたのじゃ?ルコ」
遙華はびっくりして聞いた。恵那と瑠璃も同じ顔をしていた。
「斥候が一人の訳ないわ。見つかった可能性が高いわ」
ルコがそう答えた時、車はトンネルに入った。
「皆様、戦闘準備!敵の備えて」
ルコの言葉を聞いた瑠璃はすぐに反応して立ち上がり、前方の狹間の前に立った。
それに習って、ルコ・遙華・恵那も前方の狹間の前に立った。
左から遙華・瑠璃・ルコ・恵那の順だ。
4人が戦闘状態に入ったと同時にトンネルから抜けた。
「センサーに反応。進路上1km先に多数の猪人間が存在すると推定されます。接触予定時間2分」
マリー・ベルが違う警告をしてきた。トンネルの前に小山があったので、発見が遅れたようだった。
道は真っ直ぐではなく左右にカーブしていたので前方モニターには猪人間の姿を捉える事はできていなかった。周辺地図で確認すると、今の右カーブの次の左カーブの先に猪人間が展開しているようだ。観察してみると、まだ蠢いていて展開が完了していないようだった。
「このまま突破できると思う?」
ルコは地図を見ながらマリー・ベルに聞いた。
「可能性はあまり高くないと推察されます」
マリー・ベルの返答はあまりいいものではなかった。
「強引でも突破するのじゃ!」
遙華は叫ぶようにそう言った。
車は左カーブに差し掛かった。
「やるしかないわね」
恵那は遙華に同調した。そして、遙華と恵那は銃を抜いた。
「1番から4番まで照準表示、狹間を開」
瑠璃はそう指示を出して銃を抜いた。どのみち、戦闘状態には入らざろうを得なかった。
ルコも他の三人に従い、銃を抜いた。
前方展望の画面が上に移り、周辺地図がその横にずれ、1番から4番の狹間からの照準画面に切り替わって、狹間が開いた。
左カーブが続く中、猪人間は中々見えなかった。
ルコは心臓を高鳴らせながら肩で息をしていた。それとは対象的に、他の三人は力を抜いて自然体で構えていた。
ずっと見えてこないと思っていた猪人間が急に照準に入ってきた。
「射撃開始!」
瑠璃はそう指示を出した。
それを合図に四人は一斉に銃撃を開始した。猪人間は固まっていたので次々と弾が当たっていき、倒れていった。それにしてもすごい数で道路を塞いでいた。
「マリー・ベル、急速停止!」
ルコは前の猪人間の数を見て咄嗟にそう判断した。
「はい、承りました」
マリー・ベルはそう言うと同時に急停止した。
四人は急停止の慣性に耐えるために手すりを掴んで踏ん張った。
「どうしたの?ルコ。前みたいに跳ね飛ばせばいいじゃない!」
急に止まったので恵那は驚いて叫んでいた。
「無理よ。数が多すぎて、このまま突っ込んだら車が横転するわ!」
ルコは恵那につられて叫んでいた。
横転の言葉に他の三人は青くなった。
そうしているうちに鈍い反応ながら猪人間がこちらに向かってきた。
「射撃をやめないで!撃ち続けて!」
瑠璃は凛々しい口調で他の三人を叱咤して自分は銃撃を再開させた。
他の三人はその叱咤で銃を慌てて構え直して銃撃を再開させた。
猪人間は無闇矢鱈に突っ込んできたが、味方同士で交錯したり、倒れている仲間に躓いて、躓いた仲間に更に躓くという状態で全く統制が取れていなかった。
「どうなっているんじゃ、こいつら?全く統制が取れていないのじゃ!」
遙華は銃撃しながら呆れながら悲鳴のような声を上げていた。
統制は取れてはいないが、数の力でこちらに迫ってきたからだ。倒しても倒しても切りがない感じだった。
そうこうしているうちに道路からあぶれた猪人間が道路の両側の森に入り、こちらに向かってきていた。それと共に猪人間同士の交錯する回数が激減していき、接近がスムーズになってきた。
「まずいですわね。このままでは半包囲される危険がありますわ」
瑠璃は冷静に状況を分析していた。
瑠璃にそう言われて、ルコは周辺地図に目を向けた。
「中央が薄くなった分、突破できるんじゃない?」
恵那は敵の数に圧倒されながらも奮闘していた。
「道に転がっている猪人間で横転の危険があるわ」
ルコはそう答えて考え込んだ。ただ、指は引き金を引き続けていた。
「なら後退しかないのじゃ」
遙華も悲鳴に似た声を上げなら奮戦していた。
後退しかないのはルコにも分かっていたが、ただ後退して押し込まれ続けたら都市
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