ー 夢歌 -

俺は珍しく寝不足だった。なんでかというと昨日交差点で出会った幽霊となぜか付き合うことになり、女子特有の長いおしゃべりが続きいつもは十時には寝ている俺も、その日は二時近くまで起きていた。


 「せっかく付き合ってるんだからデート行こうよデート!ここ行きたい、ここもいいな…あ、こっちも!」


といった話をしており、もちろん学校にまでついてきた彼女は授業中でも話を続けた。いい迷惑だよな。

 返事を返さないと怒ってくる愛羅に、適当に返事を返していたが、他人から見たらただ一人で話してる奴だったから心がやんでいるかわいそうな奴と噂

になった。

 友達からは「大丈夫か?」と憐みの目で見られ、仲のいい女子や先輩からは「なんかあったらそうだんしてね。」と心配される始末だった。

 そして、女児が寄るたびに「うわき?」と聞いてくる愛羅が重苦しかった。

 まいにちやられると本気で心がやんでしまいそうだったので、愛羅をつれて家の近くの大きな神社に連れて行った。

 長く続く階段を上り、古くなった紅い鳥居をくぐるとようやく大きな社が見えた。

 

 「これはこれは、海理様ではありませんか。」


 そう言って寄ってきたのは、俺の小さいころからの知り合いで唯一の理解者のここの神社の持ち主である方の一人娘の巫女さんだった。

 彼女のきれいな黒髪と綺麗な切れ長の瞳、誰もが認め、有名な美女だった。たぶん彼女が目当てでここに来る人も多かろう。

 

 「後ろの方は?」


 そういわれ愛羅は前に出てきた。


 「いろいろわけあって今うちにいるんだ。ほら、一週間前にあった事故の被害者の…。」


 巫女さんは「ああ、あの事故の…」とつぶやくと、愛羅の前に立ち、「おなまえは?」と優しく聞いた。「片瀬愛羅です」と小さな声で答えると、巫女さんは微笑えんだ。


 「私は櫻木夢葉。よろしくね。」


と言った。


 「あと、夢歌はいる?」


夢葉は「いるわよ。」と答えると、「でてきなさい。」というと近くの木から現れたのは、夢葉に似た巫女姿の女の子だった。


 「こちらは私の双子の妹、櫻木夢歌。七年前に十四歳で病気で死んじゃったの。」


夢歌が「よろしくねー」というと愛羅も「よろしくね。」と答えた。


 「俺も学校があるし、なかなか話せないから昼間はここにいてくれないか?そのかわり休みの日や学校終わったらいくらでも話聞くからさ。」


 それに反応して「うん、わかった!」と答えた。

 そして俺らは家に戻った。またデートの話ばかりだったけど、四十九日が終わるまで付き合ってやろうという気持ちになれた。


 そんな光景を外から見ている黒い影があった。

 「死亡者リスト

 片瀬愛羅/カタセアイラ

 南ヶ丘高校一年三組

 死因 交通事故」と書かれた紙を握りしめていた。

 なんとか彼女からサインをもらわなくては業務にならない。

 また日をあらためることにし、闇の中に風の音とともに消えていったのであった。


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僕と君の49日 真城夢歌 @kaguya_hina

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