ー 約束 -

 一週間前、この交差点で事故があったらしいんだ。ドライバーの飲酒運転によって十三人が重軽傷、一人が死亡したらしい。死亡したのは、俺の通う高校から車で十分程度の駅に近い高校の一年生の女子生徒だと報道されていた。

 …で、何が言いたいかっていうとその女子生徒らしき人物が事故現場の交差点の電柱の近くで霊となってたたずんでいるんだよね。いつも悲しそうな顔でただたたずんでいる。あのままなら悪霊化しかねないのでここ最近見張っていた。


 俺は伊野尾海理、十六歳。霊感を持っていてたまたま彼女を見かけたことから、きにかけていた。


 話しかけようとしても、こんな人通りのいい道で彼女のことをみえていないみんなからしたら電柱に話しかけてるやばいやつってことになるからなあ俺。


 そこでひらめいた。付箋に言いたいことを書いて連れ出せればいいんだけど、気づくかな…。


 青信号になり、手紙を書いた付箋を電柱に貼り付け、作戦を実行した。

 数十メートル歩いたところだった。後ろを振り向いて確認すると、彼女はおれのあとをついてきていた。さすが俺!あったまいい!!とか思いながら黙って自分の部屋に入った。


 最初に口を開いたのは彼女のほうだった。

 

 「はじめまして、まさか私のことが見えてる人がいるなんて思ってもいませんでした。ありがとうございます。」


そう言って彼女は一礼した。

 目はくりっとしていて、腰まである長い茶髪の髪、白い肌(死んでるなら当たり前か?)…容姿端麗という言葉がこれほどあう人はいるだろうか…。


「俺は伊野尾海理。高一。」


「片瀬愛羅。高校一年です。」


 すると愛羅は「お願いがあります。」と申し出てきた。


 これは成仏への第一歩となるのでは?そうかんがえ「なに?」とやさしめにきいた。


 「私と付き合ってください!」


  …思わずえっ、と声を上げてしまった。初対面のまだあんまり話したことない美女からお付き合いの申し出があるとは夢にも思わなかった。


「わ、わたし今まで付き合ったことなくて、誰かと付き合ってみたいんです…お願いできませんか?四十九日の間だけでいいんです。」


  状況の整理が追い付かなかった。でもこれで彼女が満足して成仏してくれるならそれでもいいと考えた。


「いいよ。」


「ほんと!?やったぁ!」


 彼女の固まった表情は解けて喜びにみちたひょうじょうとなった。

 

「はいよろしくねっ!」


とだされた右手を、あれは握るようにして見せた。透けててつかむことはできないが、それだけでも彼女は満足そうであった。

 彼女を必ず成仏してみせる。


その光景をのぞいていた一人の死神がいたことにも気づきもしないままに。


 

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