第17話 召喚魔法再び (カスミ視点)
「なるほど、そんなことがあったのね。
さっき抱きついてきたときのバカ力は、『往年の力』っていうスキルのせいなのか……」
藍音ちゃんは納得したようにつぶやく。
「それで、藍音ちゃん。
藍音ちゃんのテレポートで何とか生徒を連れて戻れないかしら……」
私は期待を込めて藍音ちゃんを見つめる。
「さすがに異世界だとどうかしら……
今までの最長到達距離は1000光年先のローミラール星だし……」
「1000光年も異世界も同じようなものじゃないかしら?」
「それに、目的地がイメージできないとテレポートは無理よ。
ローミラールの時は、どっちの方角かとおおよその距離がわかっていたからクレヤボヤンスで確認してテレポーテーションで行けたけど……
どっちの方向かもわからない、いえ、そもそも方角とか指定できっこない異次元や異世界だとクレヤボヤンスのしようがないわね……」
「そこを何とかするのが藍音ちゃんでしょ。
取りあえずやってみてよ。
そこは中世のフランス王宮風の建物で周りにはかなり大きい街があって、その外は草原なの」
「……
次元を超えて同じ条件を満たす世界と場所は無数にあるように思えるけど……」
「そこを何とか、取りあえず透視して!」
「わかったわよ。でも期待しないでね」
藍音ちゃんは静かに目をつむり集中する。
1分ほどそのまま迷走していたが、静かに目を開け首を横に振った。
「無理ね。
そもそも次元の壁すら認識できないわ。
三次元空間ならどこまででも透視できると思うけど、流石に異世界は見えないようね……」
「そうか……」
しばしの沈黙の後、何かいいアイデアはないものかと二人で頭をひねって知恵を絞り出す。
「ねえ、香澄ちゃん、私をその世界に召喚できないかしら」
藍音ちゃんがポソリと言った。
「ん?
どういうこと?」
「香澄ちゃんはその世界に空間転移で行けるのよね」
「ええ、スッポンポンになっちゃだろうけど行けると思うわ」
「そこで、香澄ちゃんが魔方陣を起動できないのかなぁ」
私は召喚の間を思い浮かべる。
そういえば、あの召喚魔方陣に魔力を注げば召喚魔法が起動するようなことをクルドニウス魔術師長が言っていた。
魔力がたりないと起動しないらしいが、私の魔力なら十分だろう。
けど、選択的に藍音ちゃんを狙って召喚できるだろうか。
私が疑問点を伝えると、藍音ちゃんはしばらく考えていたがぽつりぽつりと自分の見解を話し始める。
「もしかして、同じ魔方陣を使えば、同じ場所に影響を与えることができるかも知れない。
香澄ちゃんが召喚された教室に私がいれば、やれるかも……」
「なるほど……
ダメで元々ね。やってみましょう」
私と藍音ちゃんはまず藍音ちゃんのエリアテレポートで私たちの召喚された教室へと飛ぶ。
夜の教室は、捜査も終わり、人っ子一人いない。
「とりあえず真っ暗ね」
「小さい頃は怖かったけど、職員として働き出せば普通の光景よ」
藍音ちゃんの感想に言葉を返し、作戦を実行に移す。
「それじゃあ、ちょっとここで待っててね」
私は空間転移で魔方陣の部屋へと移動した。
もちろん服は学校の教室に残したままである。
召喚の間も、今は誰もいない。
よかった。全裸でこんな所に現れたんだから、人がいたらどうなっていたか分からない。
私は、クルドニウス魔術師長が立っていたあたりに立ち、静かに集中すると魔方陣の模様へ手をついて、サイコキネシスを発動するような感じで魔力を手に集め、魔方陣へと送ってみる。
すると見る見る魔方陣が白く輝きはじめる。
日本の教室にいる藍音ちゃんを強くイメージする。
すると、魔方陣の向こうに教室と藍音ちゃんが透けて見えてくる。
上手く行きそうだ。
更に魔力を加えると、まもなく魔方陣の中央に藍音ちゃんが私の服をもって立っていた。
藍音ちゃんは無事にこちらの世界へと召喚された。
【次回更新は明日の夕方です】
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