継続

まりる*まりら

継続

「ねえ、起きてよ。もう朝よ」


 彼女の声がしたような気がする。

 目が覚めた。いつもの朝だ。


「早く朝ごはん食べちゃってね。今日はわたしもでかけるんだから」


 あの頃、彼女はよくそう言った。

 それでもちゃんと朝食を作ってくれていた。それが当たり前だと思っていた。

 朝食。

 と言っても、今は適当に開けた缶詰だったり、味も素っ気もない非常食だったり。


 起きたままの服の上にジャケットを羽織って家を出る。

 アパートを出ると、瓦礫の山。越えて歩く。

 いつもの道。

 遠くにも同じように歩く人影がある。それは近づいてきた。

「やあおはよう」

 声をかけた。同僚だ。

 一緒に歩く。

「それにしても、このままだな……」

「ま、仕方ないだろ」

 辺りはかつて高層ビルが立ち並び、スーツ姿のサラリーマンやOLであふれかえっていた場所だ。

 あの頃は、毎日毎日、無意識に歩いていた道。

「もう、どうしようもないね」

 つぶやいた所で目的地に着いた。と、言っても崩壊して陽の光も明るいコンクリートの屑の山。ぽつりぽつりと社員が出社してくる。

 挨拶を交わす。

 今日もいつものメンバーが集まった。みんな元気そうだ。

 意味のない会社に毎日出社する。

 だって、他にどうしようもないんだ。

 生き残ったのは俺たちだけ。本当に偶然だった。何が起こったのか、今でも誰もわかっていない。

 わかっているのは、俺たち以外、もう誰もいないってことだけ。多分世界中で。

 わかんないけどさ。

 だけど、どうしろって言うんだ。

 何もできやしない。

 だからいつもの通りやるしかないんだ。

 仕方ないよ。

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継続 まりる*まりら @maliru_malira

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