第5話

次の共同戦線もノアは私を一番守る形での考えだった。


「ノア、私は王族ではありません。守られる筋合いはありません」


「一番弱いところを狙ってくる、そこを叩く。君はお姫様というより、囮の餌だよ」


「なら、敵がきたら勝手に動きますよ。それは譲れません」


「好きにすれば」


ノアが軍事用テントから出ていった。


「バルトは今回大活躍な位置ですね」


「リリアナ、まぁそう急ぐことはない。記憶喪失だとしても戦闘の勘は鈍っちゃあいないさ」


「…うん」


バルトもこの案に賛成なのか、ノアに口出ししなかった。


弱く思われているのが悔しい。


私もテントからでて、自分のテントに向かった。


「!」


上着を脱いで寛ぐノアが先に私の部屋を占領していた。


「リリアナ、紅茶淹れた」


「あっどうも…じゃないっっ!なんでいるの!?」


「君が言うこと聞かないから」


「ノアが私をみくびっているからです」


ごくっと紅茶を飲み干す。


少しの苦味がほろ苦い甘味にかわり、身体のこわばりが溶けていく。


ノアの前に座ると、彼の視線が私に向いた。


瞬時殺気をびりっと感じた。


『殺す気?』そう悪態をついてやりたいので、威圧で息ができない。


共同戦線中は、ノアは手を出してこないと私はどこかでたかをくくっていた。


駄目だここでノアを倒さなければ!


金色の瞳に飲み込まれてしまいそうになる。


そして、胸がぎゅっとノアの手に締め付けられたかのようだ。


息ができず暴れる心臓が剣を抜けと騒ぐ。


ズキン!


盛大に音をたてた訳じゃないのに、頭を殴られたような痛みが走った。


「いたっ」


その痛みに反射するがごとく、息を吸い込む。


膝がおれ、後ろ向きに倒れそうになる瞬間をノアの腕が抱き止めた。


「ん、休むか?」


ノアは殺気を終い、私をベッドへ寝かせた。


彼の大きな手が私の横髪を耳にかけた。


「ノア、私で遊ぶのはいい加減に」


「危険な戦場に行くんだ。君も自分で判断して身を守らなきゃね。殺気は感知できるみたいだね」


「殺気についてはバルトにすでに試されてます。ノアはバルト以上の殺気でしたが」


「ほぅあの男も試したのか」







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