第4話 深まる謎

邸に戻るとクリスが慌ててでてきた。


「今傷の手当てを」


「いや、これ返り血」


「では湯浴みをされては」


「俺で汚れてしまったから彼女からしてくれ」


終始圧倒されつつも、クリスはてきぱきとこなした。


「私が湯浴みしてる時に襲うつもりですか?」


「そんな隙などなくとも君は倒せる」


「じゃなんで送り届けたんですか?」


「さぁな?」


「はぐらかさいで下さい」


ノアの手を引き入浴場に連れてきた。


「ノアの髪が血で固まってしまいます」


「俺は後で」


服のままノアを湯船に押し倒した。


「言うこと聞いて早く入ってバカ!」


「…」


ノアが湯浴みを終えて戻ってくる頃には、すでに食事の準備が終わりテーブルに並べられていた。


邸には男物の服はないはずなのに、クリスが機転をきかせたのか高級品が用意されていた。


新品でないところをみると、誰かから譲り受けたのだろうか?


「まだ血ついてる?」


「ぇっいやついてない」


「ん」


ノアが席についたので、私も座った。


綺麗にフォークとナイフを使って食べる姿は、とても戦場の鬼神には思えない。


「クリス、ありがとう美味しかった」


綺麗に口元をナプキンで拭った。


「滅相もございません」


クリスがお辞儀をし、終わった食器を片付けて行った。


「そろそろ帰る」


「え」


「ん?帰って欲しいじゃないのか?」


意地悪く微笑みながら、小首をかしげる。


「別に」


「次の共同戦もくるつもりだな」


「行きますよ」


「部屋に閉じ込めてしまいたくなる」


じりっと詰め寄られても逃げるつもりはない。


「リリアナ」


視線を外さずにノアを睨んだ。


「ノアは何がしたいのです?どうしてこうも私にちょっかい出してくるんです?」


「さぁな…わからない?」


「わからなっっ」


すっと口づけで口を塞がれる。


「またそんな誤魔化しでっはぁっはぁっ騙されない」


「そんなに見つめられるとスイッチが入る」


「はぁ!?どんなスイッチっっ」


優しく耳朶を弄り首筋を唇が這う。


「そーやって嫌がりながらも俺を意識してるのが瞳を見ればわかる」


「ちょっ、変態!!」


「リリアナ、まぁ元より記憶なんて戻っても俺との記憶は1ヶ月もない」


「そう…なの?」


「ん」


記憶が戻ろうが戻らないが彼には意味がないことなんだろう。


ただの変態で、ちょっかいをだしてくるだけなんだろうか。


「私が殺されたら」


「君を殺すのは俺だ。俺以外が君を汚すのは許さない」


「変態ね!これが本心か」


「はは」


私を抱き抱えながら、寝室のドアを開けた。


「え、なんで寝室知って…」


1ヶ月だけの関係なはずなのにどこまで進んでいたのだろう。


そーいえばこの服、妙にしっくりしすぎている。


「ノア、この服もしかして」


「俺の服だが?」


「クリスの名前はいつ知りました?」


「3ヶ月前かな、昔の君に邸に呼ばれた時かな」


「…」


「他には?何が聞きたい?」


ベッドの上におろし服を脱がせる。


「ノア…私…私は」


「まだ生娘、安心しなよ」


「紛らわしいわ!」


軽くパンチをかわされて、シーツに沈められる。


「このベッドは君を埋めるのに最適だな」


「次からは硬いベッドにかえます」


「硬いベッドなら君がよく見える」


「変態っっ」


「褒め言葉」


ノアの髪が額をくすぐる。


「ノア、いい加減に」


額、頬にキスをし彼は離れた。


「一生寝てればいいのに。そしたら俺が全部お世話してあげるのに」


「余計なお世話です!帰れ!外道!」


ノアは手をヒラヒラさせ部屋を出ていった。


でも、なぜかその背を追ってしまう。


途中、廊下でクリスに悲鳴をあげられ行く手を阻まれてしまう。


ノアに脱がされかけたシャツの第三ボタンまでが全開だった。


これは不覚。


「きゃー!お嬢様!なんて格好ででてくるんですか!騎士でも淑女たるものはしたないですよ」


その後、私はくどくどとお説教を受けたのだった。


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