291.ナイトレイド3
「一体どうなっている?状況知らせて!」
「バンカーが次々に攻撃されさらに一部では敵による基地侵入を確認しています!通信不通になっているバンカーも多数!」
敵の攻撃から数分後、CPにいる隊員たちは混乱していた。
しかし、数多くの実戦を経験してきたベレッタだけは冷静に且つ迅速に状況を判断し、確実な指示を部下達に出していっていた。
「一先ず動ける部隊をCP周辺に集めて!各バンカーは放棄」
「了解!」
「バンカーを放棄させたらそのバンカーに敵を引き寄せて爆破させるのよ!」
「りょ、了解!」
各バンカーには万が一敵に乗っ取られたことを想定してTNT爆弾が仕掛けられていて、それをCPから爆破できるようになっている。
「みんなしっかりするのよ!迫撃砲中隊は何やってるの?!」
「迫撃砲中隊は味方への誤射を恐れて現在射撃を中止させている模様!」
「それなら照明弾を上げて敵と味方の位置を割り出させなさい!敵の位置が把握出来たらその頭上に撃ち込ませなさい!中隊長にそう伝えて!」
「了解!……、こちらCP、M(迫撃砲)C(中隊)CP聞こえますか?」
「MCCP!CP!」
応答した中隊長は敵の強襲によってうまく動けずイラついた様子。
「照明弾を打ち上げて敵と味方の位置の確認をお願いします」
「何?よく聞こえないぞ?」
どうやら通信状況が良くないようでこちら側で聞き取る際にも大きな雑音が入り時折聞きづらい状態になっていて、さらにあちら側は爆発音等も合わさって非常に聞き取りづらいのだろう。
「照明弾を打ち上げて敵と味方の位置の確認をお願いします、これは大隊長命令です」
「MCCP、了解、ただ、中隊員のほとんどが小銃で応戦しているから撃てる数は少ないぞ!」
既に敵が迫撃砲陣地近くまで侵入しているらしく、迫撃砲を撃つよりも小銃で応戦することを優先しているようだ。
「CP、MCCP、それでも何発か撃つだけでも違うと思います、すぐに打ち上げてください!」
「MCCP、了解」
通信が終わるとすぐに当りが強烈な光で照らされる。
急に明るくなったこともあって敵は一瞬怯み進撃の速度を緩めた。
それを好機と思った防衛側は驚き戸惑っている敵を狙い撃った。
さらにそこに追い打ちをかけるように81㎜迫撃砲を打ち込む。
「半装填!」
「半装填よし!」
「てっ!」
ガキン!
ボンッ!
「命中!続けて撃て!」
「連隊本部レナ大佐より通信が来ています!」
「つないで」
恐らくこちらの爆発音を聞き状況を知るためかけて来たのだろう。
ベレッタは通信兵から無線機を受け取り耳に当てた。
「(ベレッタ中佐聞こえてますか?)」
「聞こえています大佐殿」
「(そちらの状況は?)」
「敵の激しい攻撃によって死傷者多数出ております、現在は部隊立て直しの為CP周辺に集結させています」
「(了解、それなら城に撤退させましょう)」
「お気遣いありがとうございます、しかし、それでは両陛下の近くに敵兵が……」
「(中佐、気持ちはわかるけれど、ここは一旦引いて立て直しを図りましょう)」
「了解しました、すぐに全部隊を撤退させます……、はぁーー」
重い溜息をつきながら無線機を元の位置に戻したベレッタは一瞬の間を置いた後、再び口を開いた。
「聞いた?今すぐ撤退よ!負傷者を優先的にうしろに下げなさい!」
「「「了解!」」」
こうして敵からの予想外の攻撃と被害を被った第一海兵歩兵大隊は連隊本部のある湯之沢城へと後退を始めた。
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