292.敵騎馬隊襲来!
敵の攻撃によりやむなく前哨基地を放棄し、後退していた王国第一海兵師団第二海兵旅団第一二一海兵連隊第一海兵大隊(以下第一海兵大隊)は、湯之沢城の裏門から少し離れた位置にある平らな場所に仮設防御陣地を設けていた。
そこには、敵の追撃を受けないように必死に走って逃げて来た上に簡単な陣地も作らねばならなかったので、かなりの疲労が兵士たちを襲い、ほとんどがその場にへたり込んでしまっていた。
後退中敵から追撃を受けるかと思ったが、追ってくる敵兵はおらず被害の拡大は防げたのは不幸中の幸いだろう。
しかし、先ほどの襲撃で2個小隊が全滅という決して軽くない損害を受けていた。
そんな兵達が逃れて今いる場所はこれまでの前哨基地とは違い、今は持っていたスコップで掘り伏せて身を隠すのがやっとなほどの浅い塹壕と掘った土を土嚢に詰めその土嚢を積み重ねたとても簡素なつくりになっている。
これだけでは逃れて来た兵士全員が身を隠すには足りないので、大きな岩の影や廃屋等に身を潜めていた。
ここでようやく休めると思った束の間、そんな彼らに再びの危機が訪れることになる。
その危機は、どこからともなくやって来た馬の足音と雄叫びとともに訪れた。
警戒していた兵達は雄叫びと馬の足音に気付いていた。
気付いた兵士は大声で皆に知らせた。
この兵士が通信機器を使わなかったのは、先ほどの襲撃によってほとんどの通信機がやられていてほとんど使い物にならなくなっていた為、声で直接伝えた方が効率的だろうと思ったからだ。
「何か来たぞ!わっ!」
しかし、それも叶わず突撃してきた敵の騎馬隊に殺されてしまう。
突撃してきた騎馬隊は次々に兵がいる塹壕に突っ込み、馬の走る勢いに任せて兵を突き飛ばすか、持っていたサーベルで切り裂きながら防御陣地の奥へ奥へと進んでいく。
襲ってきたことに皆がようやく気付き始め、散発的に反撃を開始。
敵は手に持ったサーベルや槍のようなもので、次々に海兵隊員を切り刻んでいく。
それでもまだ襲われていることがわかっていない兵達に危機を知らせるため、とある兵は木によじ登り必死に味方の兵に叫ぶ。
「敵襲!敵襲!敵襲!逃げろ!」
その頃湯之沢城内の混成連隊司令部にも緊張が走っていた。
「(M1B(マイクファーストブラボー:第一海兵大隊)、HQ、敵に奇襲されています至急応援を!)」
「HQ、M1B、状況知らせ」
「(M1B、HQ、敵騎馬隊に奇襲を受けている、被害状況不明!)」
「HQ、M1B、了解、至急応援を送るそれまで耐えてくれ」
「(M1B……、すぐ……れ、た……、けて……、ザーー)」
「HQ、M1B!どうした?応答しろ!」
「(……)」
突然電波が悪くなり聞こえが悪くなったかと思いきや、それ以降通信機からは雑音しか聞こえてこなくなった。
恐らく大隊本部に生き残っていた通信機も襲われ壊されたのだろう。
「クソ!」
その悲しい現実と自分の無力さを感じ、男性通信兵は机をこぶしで叩く。
その机を叩く音に気付いたレナは異変を感じ男性通信兵に近づき、彼の様子を伺いながら前のめりに机の上に置いてある通信記録を覗く。
不意に横から覗き込まれた通信兵はこんな状況にもかかわらず、前のめりになり戦闘服から覗く谷間に目がいってしまう。
「どうしたの?」
「ふー、んんっ!第一海兵大隊の防御陣地が敵の奇襲を受けて混乱している模様です」
通信兵は上官に対して失礼な視線を送ってしまったことを反省しつつ、一息ついて報告する。
「状況は?」
「状況は不明、さらに通信も途絶しました」
「何だって?」
「事態は急を要します、すぐに応援部隊を編成して出撃させることを進言いたします」
「いや、駄目よ、それではここの守りが薄くなってしまうわ」
「ですが!」
「それに通信が途絶した今、彼らにこれをつたえる術はないだろう?」
「そ、そうですが……」
「私とて味方を見殺しにはしたくない、それはわかる。けど、今は彼らを信じましょう?」
「彼らとは……」
「今すぐに第四海兵武装偵察連隊第四一大隊第一中隊に迎撃態勢をとるように言ってくれる?」
丁度いま奇襲を受けている第一海兵大隊の仮設防衛陣地の隣には第四海兵武装偵察連隊第四一大隊第一中隊の防衛陣地がある。
レナはそこにいる彼らに状況を伝え、助けに向かわせようというのだ。
「りょ、了解……HQ、FR1C、聞こえますか?」
「(FR1C、HQ、どうぞ)」
通信相手はこの時間ということもあって少し眠そうな声で応答してきた。
「現在第一海兵大隊のキャンプ地が敵の奇襲を受けている、そちらにも敵の部隊が到着する可能性を考慮してすぐに迎撃態勢に移れ、これはレナ大佐の命令である」
「(FR1C、HQ、了解、すぐに迎撃させる、アウト)」
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