290.ナイトレイド2

 

 それから数時間後、とある海兵小銃小隊が守るバンカー。


「おい、あそこ今動かなかったか?」


「よせ、お前酒飲み過ぎたんじゃないか?俺には見えないぞ?」


「いや確かに……さっきそこに」


 隊員は不安そうにバンカーから外を覗き込むが、周囲はそれを冗談だといって聞かない。


「信じられないなら見てください小隊長!」


 信じてもらえない隊員は少し苛立ち、近くにいた小隊長にヘルメットについた暗視装置で見るように促す。


「わーったよ、たくしょうがないなぁ、どれどれ……、いや……冗談じゃないみたいだぞ」


 促されて外を覗き込んだ小隊長はそれが現実だと知った時、バンカー内は静かに混乱していた。

 それは暗視装置越しに見た外側にはすでに1000人には迫るであろう敵兵が地を這いこちらに近づいてきていたからだ。


 しかもその敵兵の中心には怪しげに動く大きな“物体”も近づいてきていた。


「本隊に知らせろ!」

「CP!CP!こちらブラボー3!敵ッ」


 ドカンッ!


「ど……した!……ブラボー3……応答……ザー」

「クソ!通信機がやられた!応戦しろ!」


 本隊に知らせようとした瞬間バンカーに何かが着弾し、その衝撃で通信機器が不通状態に陥ってしまっていた。


「クソッ!クレイモアだ!クレイモアを起爆しろ!」

「了解!」


 カチッカチッ!

 ドカン!


 クレイモア起爆直後一瞬光り、それに続いて敵兵の悲痛な叫びが聞こえてくる。


「射撃開始!!」


 クレイモアが敵に被害を加えたことを確認した小隊長はすぐに射撃を加えさせた。


「おい!誰かCPに行って報告して来い!」

「自分が行ってきます!」


「頼んだ!」


「……このまま射撃を続ければさすがの敵も攻めるのをやめるだろう」


 小隊長はこの一斉射撃によって敵の歩みが止まるかと思っていた。

 しかし、敵の勢いは弱まるどころか逆に激しさを増してきていた。


「小隊長!あのデカぶつ弾が効きません!」

「何!……、あれはゴーレムだ!銃弾で撃っても埒が明かない!グレネードを撃ち込め!」


「了解!」


 命令を受けた兵士はM320という40㎜弾を発射するグレネードランチャーに弾を込め、ゆっくりとこちらに向かってくるゴーレムに撃った。


 ポンッ!ドカンッ!


 気の抜けた音と共に飛んでいった40㎜グレネード弾はゴーレムに見事直撃した。


「やったか……?」


 直撃したことによって倒したと思い込んだ小隊長はしばらく爆発によって発生した煙が晴れるまで観察していた。

 しばらくして煙が晴れると同時にそこにいたのはほぼ無傷のゴーレムだった。


「いえ、まだ動いています!」

「クソ!」


 ドゴンッ!


「うわっ!今度はなんだ!」

「隊長!隣のバンカーが吹き飛びました!」

「何!?」


 爆発音がした方向を見ると隣のバンカーは既に燃え盛る炎に包まれ、そこはまるで砲撃を受けた後のように大きく地面をへこませていた。

 そして、その周辺には部下達の“一部”が散らばっていた。


「クソッ!やられた!伝令は帰って来たか?」

「……隊長、伝令も先ほどの爆発で負傷した模様」

「こんな時に!いいか!ここをッ……嘘、だろ」


 小隊長が部下を鼓舞しようと声を上げた瞬間、彼の目の前には大きな火球のようなものがこちらに向かってきていた。


「退避ーー!」


 敵の攻撃だと気づいた隊員は周りに避難するよう叫んでいたが、それは叶わなかった。


 ドカンッ!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る