286.ゆっくりゆったり温泉へ!

 

 温泉へとみんなと向かう俺であったが、ふとあることがよぎる。


(完全に貸し切りってことは、まさか……、混浴ができるってこと?それは最高ですなぁ……、グヘヘヘ)


「じゃあ、ワタここでお別れね~」


「え?あ、うん?え?」


 メリアはそんな邪なワタにそういうと、メリア達は“女湯”と書かれた赤い暖簾をくぐって中へと入っていってしまった。


 残念なことに俺の予想に反してまさかの男女別々だったようだ。


「それでは陛下、また後程」


 そういって最後にレナが入っていくと、俺は一人取り残されていた。


(なん、だと、まさかの男女別だと!ノーーッ!)


 とは言えここまできて、じゃあ入りませんということにも行かないので、俺は渋々中に入ことにした。

 更衣室の床は畳が敷かれていて、壁沿いには四角く枠取りされた棚が並んでいる。

 しばらく部屋を見渡していると、俺は入口付近に書かれた案内に目が行った。


「何々、“当旅館は露天風呂のみ男女混同となっています”……、なるほど、そういうことなら問題ない」


 服を脱ぎその棚に入れ込むと、案内を見て少し上機嫌になった俺は、木の引き戸を引き中へと足を進める。


 中に入ると浴室内は灯籠の淡く柔らかい光によって照らされとても幻想的だ。


 真ん中に大きなツボのようなものが置かれていて、そこから温泉がとめどなく湧き出てきており、あふれたお湯がツボの側面をつたって床にジャバジャバと音を立てながら流れている。

 その周りに木で出来た手桶と椅子、桶が置かれていた。

 どうやらここで体を洗うようだ。


 そして浴場内は温泉特有の硫黄の香りがしている。


「まぁ、シャンプーとか石鹸なんかないよね……」


 当然のことながら元居た世界や後宮のお風呂(俺がどうしても使いたくて召喚して置いてある)のようにシャンプーやせっけんは置かれていない。


「ここは、郷に入っては郷に従えってことでお湯に浸した布で体を拭うだけにするか」


 変にここでシャンプーと石鹸を使って泡だらけにして驚かれるのは嫌なので、ここは大人しくお湯で浸した布で体を拭う。

 そうしている間俺は少し考え事をしていた。


(俺はこの世界に来て意味があったのだろうか?いったい俺は何のためにこの世界にいるのだろうか?)


(……いや意味はあった、メリアにこの世界に呼ばれたのはこの危機に陥ったコンダート王国を救うためだ、それにメリアやベル、レナ、エレザ、キューレ色んな女の子たちが俺に好意を寄せてくれているからその子たちと一緒に居たいという気持ちも最近出て来た……、でも本当にこのままでいいのだろうか?………………、この戦が終わったら俺はどうなるんだ?このまま寿命をここで向かえるのか?…………いや、未練がある訳ではないがやはり元の世界に戻りたい……)


「ワタ?こっち来ないの~~?」


 露天風呂の方角からメリアが俺を呼んでいた。


「ああ、もう少ししたら行く!」


 (待ってろ!俺の桃源郷!)


 混浴風呂に入れると思って気分が良くなった俺は鼻歌気味に洗い残した部分を丁寧に拭う。

 すると、急に背中に柔らかい物がぶつかって来た。


「「えいっ!」」


「うおっ!誰?」


 不意に後ろからベルとローザが抱きついてきた。

 背中にあたる柔らかい物が何ともたまらない。


「ワタ様~ベルですよ~」


「ワタに会いたくって私も来ちゃったわ」


「おおっ?ベル!ローザまで!来てたのか?……、まてまて!なんでここに!それと二人とも、いろんなところが当たってますけど!」


(それと俺のリトルボーイが不味いことに!沈まれ!)


「ええ、輸送船についでに乗せてもらってきちゃった!」


 どうやら彼女たちは派遣艦隊へと支援物資を運ぶための輸送船に乗せられて出雲までやってきていたようで。そのあと連合艦隊司令長官不在時の留守役を務めているオルデント大将に無理を言ってヘリを湯之沢へ飛ばしてもらったらしい。

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