287.ゆっくりゆったり温泉へ!2


「全くとんだ無理を……」


「いいでしょ?それに私に会えてうれしいでしょ?」

 ローザはその豊満なボディをさらに俺に押し付けながら俺の顔を覗き込む。

「そ、そうだけど」


「何よ?不満?」


「いいや、むしろ来てくれてありがとう」


「ホントに!嬉しい!」


 その言葉を聞いたローザは俺から一瞬離れたかと思いきや、嬉しさのあまりに生まれた姿のまま目の前から抱きつき、そのまま俺に口づけをした。


 しばらく情熱的な口づけをしていた二人だが、それに嫉妬したベルは俺を引きはがし、そのまま俺の口を強引に奪った。

 満足したベルは俺から静かに離れる。


「ワタ様?お背中流しましょうか?それとも?……」


 バンッ!


 突然露天風呂につながる扉が大きな音を立てて開くと、そこには仁王立ちのメリアがいた。


「なーにしてるのかな?ベル?ローザ?」


「「(チッ!いいところだったのに)」」


「何か言ったかしら?」


「「はい、すみま(申し訳ありま)せんでしたー」」


 二人は口では一応反省したような事を言うが、それに反して態度は少々悪い。

 一番逆らう事の出来ないメリアに、いいところを邪魔されたのが気に食わなかったのだろう。


「よろしい……、さぁ、ワタ?外でゆっくり私たちとお湯につかりましょ?」


 メリアはその二人の態度に気付いていたが、あえて触れなかった。


「そうだな!いこうか」


 ベルとローザの二人はものすごく残念そうな顔をしていたが、メリアの怒気を孕んだ声に怯み、素直に引き下がった。

 そんなメリアに促され俺とベル、ローザは他の皆の待つ露天風呂へと向かう。


 外に出るとすぐに大きめの岩に囲まれた温泉がそこには広がっていた。

 旅館に着いた時には雪は降っていなかったが、粉雪が舞うように降っている

 外も浴室と同じく灯籠の光によって照らされているが、その数は多くなくとても薄暗い。


 しかし、その薄暗さがかえっていい雰囲気を出している。


 雪も降り外気温が低いこともあって湯気が高く立ち上り、幻想的な雰囲気を醸し出している。

 温泉は濁った乳白色のお湯となっていて、この温泉の成分にはなんでも美肌効果があるとかないとか。


 湯加減は源泉掛け流しということもあって43℃と結構高い。

 のぼせやすい俺はあまり長くは入っていられないだろう。


 隣には、源泉が4mぐらいの高さから滝のように流れ落ちるようにつくられている打たせ湯もある。

 そこでまるで修行僧のような体勢で浴びるエレザの姿があった。


(靄で見えにくいけどタオルを巻かない状態で全部さらされた状態……、エ〇い!ただエレザ以外はみん

なタオルまいているのか……、残念……!)


 残念なことに、みんなのそれはそれは素晴らしい女体を拝めると思っていたが、皆バスタオルを巻いていた為それは叶わなかった。

 それでも隙間から時折除く体の一部が見えてとても魅惑的である。


 そんなエレザを横目に見ながら俺は早速湯船につかることにした。


「あっつ!」

「大丈夫ですか?」


 予想していたよりお湯が熱いと思った俺は大袈裟に声を上げてしまった。

 そんな俺を見てヴィアラは心配そうな顔でこちらを窺う。


「いや、思ったより熱くてさ、こうゆっくり入れば大丈夫……、はぁぁぁぁ~最高!」


 熱さに慣れさせるため足先からゆっくりと身を沈めていく。

 湯船につかるとこれまでの疲れが全身から抜けていくような感覚を覚えた。


 しばらくお湯に浸かっていると、冷えていた体も芯から温まりとても心地よい。


(やっぱりこの感覚温泉じゃないと味わえないな)


 ふと上を向くとそこには雲一つない冬の夜空に煌めく満点の星空が広がり、その中心には周りの多くの星に負けないように光る三日月もあった。


 元居た世界では田舎の温泉であっても少ないとはいえ明かりの強い温泉施設の光や街灯があるので暗い星などは見えないが(人里遠く離れた秘湯なら別だろうが)、こうして灯籠の淡い光だとそのくらい星も輝いて見える。

 こちらに来てからゆっくりと夜空を見上げて感傷に浸ることのなかった俺は今、ものすごく新鮮な気持ちでいる。


(温泉に入りながら見る夜空はまた違っていい……、これだけは戻ったとしても見れないのかな)


 しばらく俺は上を見上げたままほぼ意識がない状態でボーっとしていたが、俺の腕に当たる柔らかい感触によって意識が戻った。


 腕の方を見るとメリアが大きな胸を押し付けながら身を寄せていた。


「久しぶりの温泉はどう?」


「いや、気持ちいいよ、メリアは?」


「もちろん最高よ!(本当は二人っきりが良かったんだけどなぁ……)」


「ん?なんか言った?」


「うううん、なんでもない」


 それから俺がのぼせかけるまでゆっくりとつかり、これまでの疲れを癒すのだった。

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