272.大和の城下町
遠城帝との会談を終えた俺とメリアとレナは、早速大和の城下町へと出かけた。
もちろん、出かけるとはいえ王族の身なので、周辺にはレナの率いるメランオピス隊一個中隊が警戒していて、さらには上空には海軍航空隊や海兵隊航空隊がひっきりなしに飛び回っている。
さらにこれまでの経験から、自分たちも護身用にVP9を携行し、防弾防刃チョッキも来ている。
大和城の大手門から出ると、この大和城もそうだったが、街並みも歩く人々もここにある皆全てが俺の元いた世界でいうまるで江戸時代と酷似している。
近くにあった家などを見ると、どこからどう見ても元の世界の江戸時代の日本の光景と変わらない。
俺はここで故郷に帰って来たような錯覚に襲われていた。
(本当に元居た世界の日本のそれも資料館とかで見た江戸時代の風景と変わらないなんて……、なんだか懐かしい)
レナもこの風景を見て同じ気持ちになっていたようで、俺と同じく元居た世界の日本を思い浮かべているのか、ゆっくりと周りを見渡しながら感傷に浸っていた。
それを見たメリアは、頬を膨らませながら俺のことを横目で見ていた。
どうやらメリアは珍しく嫉妬しているようだ。
「……、もう!二人とも!行くわよ!!」
大手門から出てからしばらくその場から動かない二人に対して苛立ちを隠せなくなったメリアは、ついに我慢できずに半ギレ気味で二人に動くように催促していた。
「ご、ごめん、メリア行こうか」
「フンッ!」
(やばい、なんだか知らないけどメリアを怒らせちゃったらしい、何とか機嫌を直さなきゃ)
だいぶ不機嫌なご様子のメリアを見て、俺は何とか機嫌を直してもらおうと頭をフル回転させていた。
俺はそんなことを考えながら皆の後ろについて歩いていくと、料理店や呉服店等が建ち並ぶ商店街にいた。
(ここに何か……、おっ!着物を売っているところがある!メリアに買ってあげよう)
「メリア?あそこの呉服店に行ってみないか?」
「ん?いいわよ?」
相変わらずメリアは機嫌が悪く、俺に対して冷たい反応を返す
そんなメリアを俺はなだめるようと肩をとろうとしたが、その手も払われてしまった。
レナも何故メリアが不機嫌になってしまったのかわからないず困った表情を浮かべている。
呉服屋に入ると、そこには色とりどりの布や試着用の各種着物が並んでいた。
お店に入ってしばらく店内を見渡していると、女性の店員がこちらに話しかけて来た。
「いらっしゃいませ、異国から来た方々ですか?」
「そうです、やはりこの格好だとそう思いますよね」
「ええ、お客様のような方々はこの国ではかなり珍しいですから。何かお探しですか?」
「彼女にぴったりな色留袖を買いに来たんだけど、何か言いのないかな?」
この時、俺はメリアがどんな反応をしてくるかと気になってちらりと見てみたが、相変わらず不機嫌顔のままだ。
「お客様の奥方ですか?かなりの美人さんですね!……、それですとこちらの朱色のものはいかがでしょうか?美しい白いお肌をしてらっしゃるので、こちらがぴったりかと」
「これでしたら店員さんの言う通り女王陛下にお似合いだと思いますよ!」
「うん、確かにそうだな、レナもそういってるし、どう思うメリア?」
「う、うん、ワタが言うなら」
メリアは店員に褒められたのがうれしかったのか、先ほどまでより少し表情が柔らかくなり、普段の柔らかい声色に戻っていた。
「でしたら、ちょうど試着用のものがご用意ございますのでそちらをもって参りますね!」
そういうと店員は足早に店の奥へと消えていく。
それからしばらくして先ほどの店員が色鮮やかな朱色をした色留袖を持って現れた。
「こちらはいかがでしょうか?最高級の絹で織りあげたものなので着心地がものすごくよくて、色もしっかりと入っているのでお勧めの一品でございます!ご試着されますか?」
「ほら!メリア」
「え、ええ、じゃあ、せっかくだから」
メリアは褒められてもまだ少し不機嫌さが残っていたが、俺の勧めもあり試着室へと向かった。
しばらくして試着室から出て来たメリアだが、サイズが少し小さいところを除けば、店員の言っていたように肌や金髪とあっていて非常によく似合っていた。
「おお!よく似合ってるよメリア!綺麗だ」
「そ、そう?ウフフ!それならよかった!じゃあこれを下さいな!」
いつも美しいドレスに身を包んでいるメリアも綺麗だが、今の着物を着ているメリアも非常に綺麗だ。
俺に褒められたメリアは、さっきまでの不機嫌さは嘘のように吹き飛び、今では照れ半分嬉しさ半分といった様子。
「お気に召したようで、こちらとしてもうれしい限りです。では、採寸をさせていただきますね」
店員は素早く採寸を済ませると、仕立てて出来上がる日にちを教えてくれた。
そして俺は遠城帝からお詫びにともらっていたお金で支払いを済ませ、呉服店を後にする。
「ワタ!ありがと!」
「それは良かったよ、それこそメリアの綺麗な姿が見れて俺も嬉しかった」
「ウフフ!それなら毎日だって見せてあげるわよ!」
「それはそれで最高だよ!さて、二人ともおなか空いてない?」
「そうね、せっかくだから何か食べたいわね!何かあるかしら?」
「両陛下!あちらに団子の屋台がありますよ!」
「おお!いいね!あそこに行ってみよう」
それから三人は屋台にあった団子やそば等を食べ歩き、最後にはお茶屋で一息付き、その後帰路についた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます